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スリランカ:東部で人権状況悪化

武装勢力分派が民間人を殺人・拉致 

(ニューヨーク)-「スリランカ政府は、ここ数週間、殺人・拉致が増えているスリランカ東部州での人権状況の悪化に対処する手段を直ちに講じるべきだ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。

東部で起きている人権蹂躙行為の多くは、タミル人民解放の虎(TMVP)軍事部門の仕業と考えられる。TMVPは、もともと、カルナ・グループと呼ばれていた分派武装勢力の政治部門で、現在、マヒンダ・ラージャパクサ政権の強力な支援を享受している。カルナ大佐は、2004年、反政府武装勢力タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)から分派した人物。

「スリランカ政府は、(LTTEから)『解放された』東部は、民主主義が機能している実例で、LTTE支配から取り返した地域にとってモデルとなる、と言う」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムズは述べた。「しかし、殺人と拉致が横行し、しかも、こうしたおぞましい残虐行為がまったく処罰されない状態にある。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査は、9月以降、東部州で少なくとも30件の超法規的処刑が行われたことを明らかにした。最近のあるケースでは、2008年10月3日、2名の若いタミル人男性がバティカロアでの一斉検挙の際に警察に逮捕され、その6日後、海岸で遺体で発見された。遺体は、コンクリートの柱に両手両足を縛り付けられ、激しい拷問の跡を残していた。

遺体となって発見さたカンダサミー・クガサス(Kandasamy Kugathas)18歳とA・グナシーラン(A. Gunaseelan)26歳について、警察は、10月4日朝に釈放したと主張。しかし、遺族の一人は、同日夕方、警察署にまだいた彼らを目撃している。犠牲者の2人が、真夜中、同人たちの引渡しを名指しで要求してきた私服の男たちによって留置場から連れて去られたことが、ヒューマン・ライツ・ウォッチのある調査で判明。この殺人事件以降、警察は、目撃者たちに対して事件に関する証言を変更せよと脅迫。また、重要な証拠を改ざんした。

11月2日、アンパラ地方のカルムナイ海岸で5名のタミル人若者が正体不明の者たちに射殺された。10月20日には、バティカロア地方のKokakaddichchoalaiで働くシンハラ人3名の請負業者たちが射殺された。10月16日には、4名の農民(2名がタミル人で2名がイスラム教徒だった)が自分たちの農場の近くで射殺された。この殺人事件は、警察が発行する許可証がないと行けないタミル・マッカル基地周辺の立入制限地帯で起きている。9月21には、トリンコマリーで、コネスワラン寺院の僧長シバクルラジャ・クルッカル(Sivakururaja Kurukkal)が、政府検問所が複数ある重点警戒地域をバイクで走行中、白昼堂々、射殺された。

こうした近時の殺人事件に加え、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、信頼に足る情報筋から、9月と10月にアンパラ地方のAkkairappatuとAdalachennai地域で少なくとも30件の拉致事件が起きているとの情報を得た。目撃者らによれば、拉致の実行犯は、私服を着てタミル語を話す武装した男たち、とのことである。これは、実行犯たちが、TMVPまたはその他の民兵組織織のメンバーであることを示す。

10月にヒューマン・ライツ・ウォッチがアンパラで調査したあるケースでは、TMVPにより以前逮捕・暴行され、その後釈放されたある若い男性が、釈放後直ちに行方不明になっている。他の多くの事件と同様、家族は、被害にあった男性に報復の被害が及ぶのを恐れ、当局に事件を通報していない。

東部の市民運動団体のメンバーやジャーナリストも、脅迫や襲撃にさらされている。10月29日、AkkaraipattuのNGO連合のメンバーで29歳のサンカラピッレイ・シャンタ・クマル(Sankarapillai Shantha Kumar)は、真夜中自宅から拉致された。被害届けが出されたのに、しっかりした捜査は行われず、彼はいまだに行方不明のままである。

9月8日、ディナカラン(Thinakaran)紙所属のジャーナリストで、当時TMVPの一派であるピッラヤングループに属していたラディカ・ズィバクマル(Radhika Thevakumar)は、バティカロアで銃撃され重傷を負った。9月10日には、アンパラのタミル語日刊紙ディナカランの地方通信員K・クナラサ(K. Kunarasa)は、殺害予告を受け、報道活動を自制せざるを得なくなった。ジャーナリストに対するこうした脅迫と襲撃ゆえに、東部の治安・安全情況に関するメディアの報道はあまりなされていないのが現状だ。

「多くの東部の人々は、こうした残虐行為の背後にスリランカ政府がいると考えている」と、アダムズは述べた。「スリランカ政府がそれを明確に否定したいなら、犯罪捜査と犯人処罰のために行動を起こすことが必要だ。」

殺人事件などの残虐事件が報告されだした時期は、TMVPの創設者カルナに忠誠を誓う諸派と、5月に東部州主席大臣に任命されたシバネーサトゥライ・チャンドラカンタン(通称ピッラヤン)との間で起きたTMVP内部の対立と内部暴力抗争が激化した時期と一致。

カルナは、英国で偽造パスポート容疑による6ヶ月の刑に服した後、6月にスリランカに帰国。TMVPのリーダーとしての地位に返り咲いた。10月7日、スリランカ政府は、カルナを国会議員に任命。カルナもチャンドラカンタンも、LTTEとしての活動時そして分派した後も、多数の子どもたちを拉致して強制的に兵士としたことを含む重大な人権侵害に関与しているとされる。

10月28日、バティカロアのChenkaladyで起きたTMVP内両派間の武力衝突により、当該グループにより強制徴兵された16歳の少年を含む4名のメンバーが死亡。更に、もう一人の少年を含む5名が依然行方不明のままとされている。11月14日、TMVP代表でピッラヤンの私設秘書クマラスワミー・ナンダゴパン(Kumaraswamy Nandagopan、通称ラグ)とその運転手は、首都コロンボで射殺された。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、近時、TMVPが子どもたちを強制徴兵した事件を調査して記録に取りまとめている。最近、バティカロアにあるTMVPのバラチェナイ基地から3人が脱走。それぞれ、10月31日の脱走は4月以来拘束されていた15歳の子ども、11月3日の脱走は2006年にキランから連れて来られていた15歳の子ども、11月10日に脱走したのは2006年10月以来拘束されていた17歳の子どもだった。多くの場合、脱走した後も、再び拉致されないように逃亡し続けなくてはならない。脱走した兵士の家族が、「代わり」の兵士を差し出すよう圧力を掛けられる場合もある。

「TMVPは、改革を行って政権入りする党にふさわしい責任をある政党になるどころか、現在も重大な人権侵害に積極的に加担している」とアダムズは語った。「ラージャパクサ政権は、TMVPの責任を追及するのではなく、逆になんと支援をしてきたのである。スリランカ政府は、全ての重大な人権侵害に対する独立した捜査を開始し、犯人たちの責任を追及し、法の裁きを実現せねばならない。」

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