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グルジア:民間人がロシア軍のクラスター爆弾の不発弾で死亡

さらなるクラスター爆弾使用を確認、多くの一般市民に不発弾の脅威

(トビリシ)-「グルジア当局及びロシア当局は、ロシア軍の攻撃の結果残された不発弾から民間人を守るために緊急措置を取るべきである」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査員らは、グルジア紛争でロシア軍がクラスター爆弾を使用した攻撃をさらに明らかにし、これを取りまとめた。クラスター爆弾は使用していないという先日のロシアの主張に反する事実である。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査員らは、グルジア内ゴリ地方シンディシ村内及びその周辺で、クラスター爆弾の不発子爆弾を現認の上で写真におさめた。シンディシ村及びその近隣のプクベニシ村の住民たちは、数百もの不発子爆弾が付近に落ちているとヒューマン・ライツ・ウォッチに対して証言。不発子爆弾は非常に危険で、拾い上げたり、ちょっとした振動を与えることで爆発することがある。

「ロシア政府はこの野蛮な兵器を使用していないと主張している。しかし、現実には、ロシア軍がクラスター爆弾を使用した結果、グルジアの人びとがたくさん死んでいる」とマーク・ガルラスコ ヒューマン・ライツ・ウォッチ上級軍事アナリストは指摘。さらに「散乱している子爆弾を除去するため、爆弾処理専門団体の派遣をロシアが直ちに認可しなければ、より多くの死者やけが人が出ることになる」と警告した。

目撃者らは、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、2008年8月8日、ロシア軍はシンディシとプクベニシ近くに駐留していたグルジア軍装甲車部隊に空爆を行い、その後、今度は猛烈なクラスター爆弾による空襲を仕掛けたと語った。この攻撃で、シンディシで少なくとも1名の民間人が死亡、さらにもう1名が負傷した。その後、当初の空襲から10日後に起きた事件も含め、不発子爆弾に触った2名の民間人が死亡、5名が負傷した。8月20日現在、シンディシとプクベニシ地域はまだロシア支配下にある。

クラスター爆弾は、一般市民を犠牲にする危険性が極めて高いことから100ヵ国以上がその使用を禁止することに合意している。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ロシアに対し、このような危険なクラスター爆弾の使用を直ちに止めることを求めるとともに、子爆弾が散乱している地域の不発弾処理に必要なクラスター爆弾の空爆データを提供するよう求めた。さらに、グルジア政府に対し、住民たちに、ラジオやテレビなども使って、クラスター子爆弾の危険について知らせる教育プログラムを直ちに行うよう求めた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ調査員らは、シンディシで、一般的には多目的改良型通常弾薬(DPICM)子爆弾と呼ばれる多目的(対戦車及び対人)子爆弾の不発弾を確認した。

「極めて危険な不発小型爆弾が、シンディシとプクベニシの農地、道路、小道に散乱している」とガルラスコは述べ、さらに「この地域に留まっている人びとは、こうした不発子爆弾の引き起こす危険性を認識していない。触ったり、時には近づいただけでも、負傷または死亡する非常に重大な危険に曝されている」と警告した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、8月15日、ロシア軍がグルジアでクラスター爆弾を使用したという最初の報告を発表した。民間人少なくとも11名が死亡し、数十名が負傷した8月12日のゴリとルイシでの爆撃を確認した後のことである。ロシアはこれに対し、クラスター爆弾の使用を否定。アナトリー・ノゴビツィン ロシア軍参謀次長は、8月15日、「我が軍はクラスター爆弾を使用していない。そもそも、使用する必要性が全くない」と語った。

ズーラ・タツリシビリ(62歳)はヒューマン・ライツ・ウォッチ調査員らに、不発子爆弾を見せた。彼はちょっと触っただけで爆発することがあると知らずに拾ってしまったのである。「俺たちはそれで遊んでいたよ。グルジア軍兵士も同じさ」とタツリシビリは証言し、さらに、「ある兵士が不発子爆弾を投げていたらその一つが爆発した。その時に初めて、俺たちはそれが危ないってことに気がついたのさ」と語った。現在でもタツリシビリが家畜を飼育している囲いの中には子爆弾が落ちたままである。これは、教育と除去作業の必要性を明確に示している。

8月8日のシンディシでの空爆の最中に、バノ・ゴギドゥゼ(45歳)は死亡し、親類のダト・ゴギドゥゼ(39歳)は負傷。また、シンディシで、8月10日に、ラマズ・アラバシビリ(40歳)が死亡、4名が負傷した。彼らが農地から集めてきた子爆弾が爆発したためである。8月18日、プクベニシでは、手に持っていた子爆弾が爆発したためにベリコ・ベディナシビリ(70歳)が死亡した。彼の息子・ヅルミスハン・ベディナシビリは「そこら中にたくさんある。畑は子爆弾で一杯だ」と証言した。

ズィアド・ゲァドゥゼ(38歳)はヒューマン・ライツ・ウォッチ調査委員らに不発子爆弾が散乱する農地を見せた。彼の見たところ、不発子爆弾は彼の農地だけでなく、その周辺少なくとも1km四方に散乱しているという。畑は収穫を目の前にした農作物で一杯である。人道援助団体は相変わらずゴリ地域の大部分に入ることができないため、地域住民たちは食物を手にするために、ゲァドゥゼら住民の畑に頼るほかなさそうな状態である。

クラスター爆弾は、数十あるいは数百の子爆弾を内蔵し、二つの意味で許し難い人道的危害を引き起こす。まず、クラスター爆弾は広範囲にばらまかれるため、一般市民を無差別に殺傷してしまう。そして、多くの子爆弾は爆発せずに事実上の地雷となり、投下後、数ヵ月あるいは数年間も、一般市民が犠牲になり続ける。

国際人道法上、軍事目標のみを標的にすることができない兵器を用いて居住地域を攻撃するなどの無差別攻撃は禁止されている。ロシア軍は、こうした攻撃を止める義務があるのはもちろん、ロシアが実効支配している地域の民間住民たちの安全を確保するために必要な全ての措置をとる義務がある。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、グルジアに対しても(クラスター爆弾を所有していると言われる)、クラスター爆弾の使用を禁止する国際的な動きに加わるよう求めるとともに、クラスター爆弾を今回の紛争で使用しない事を公に約束するよう求めた。ロシアもグルジアも、クラスター爆弾を禁止する新しい国際条約を実現するために2007年2月に始まったオスロ・プロセスに参加していない。2008年5月、107ヵ国が、クラスター爆弾の使用、製造、取引、貯蔵を全面的に禁止するクラスター爆弾国際条約を採択した。2008年12月3日、同条約はオスロで署名のために開放される。

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