(ハーグ) - 国際刑事裁判所(ICC)は、その方針や実務に一部誤りもあったものの、重大な犯罪に対する法による裁きによって正義を実現するために特筆すべき前進を果たした。」ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ICC発足後最初の5年間の業績を評価した本日発表の報告書でこのように述べた。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、国際社会に対し、今後ICCが政治的・財政的諸課題を解決できるよう、ICCに対する更なる支援を呼びかけている.

244ページの報告書「歴史的重大事件を裁く国際刑事裁判所:発足から5年の軌跡(Courting History: The Landmark International Criminal Court痴 First Years)」は、2003年に動き出したICCがこれまでに達成した業績と失敗を検証している。ICCは世界中の重大な人権侵害の被害者に正義をもたらすために設立され、現在までに、4カ国の容疑者に逮捕状を発付したものの、まだ公判は一件も開始されていない。

「国際刑事裁判所は困難な問題を抱えながらも、深刻な人権侵害の被害者に正義をもたらすことにおいて、大きな前進を果たした。」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのインターナショナル・ジャスティス・プログラムのディレクター、リチャード・ディッカーは述べた。「しかし、ICCはまだ、深刻な国際犯罪の被害にさらされた地域の人びとに真に開かれた法廷になっていない。被害者たちのコミュニティが正義を実感できる開かれた組織になるという重大な課題に、 ICCはしっかりと取り組まなければならない。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ICCのこれまでの業績として、捜査の進展に加え、しっかりした証人保護プログラムを設置したこと、被告人への有意義な支援提供や訴訟手続きへの被害者参加制度の実施にむけて努力してきたことなどを挙げている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはまた、この前例なき司法機関を設置に際してのICC当局の失敗も指摘している。子ども兵士を徴集、採用そして使用した件で起訴されたコンゴの武装組織司令官トマ・ルバンガの裁判は、検察官が同人の無罪に結びつく可能性のある証拠を裁判所に提出できなかったために、裁判部によって停止されたばかりだ。また、アウトリーチ活動(広報活動)進展が遅いことや、検察官の捜査方針に問題がある場合が存在するといった欠陥もある。同報告書は、これらの問題を含む懸念事項を解決するための勧告/提言を行っている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、人権侵害の被害を受けたコンゴ民主共和国、ウガンダ北部、チャド東部の人びとに関する現地調査を行った。その結果、ICCの解決すべき課題や当該地域の人びとがICCをどう認識しているかが明らかになった。たとえば、コンゴなどでは、人びとは検察官の事件選択の方針に批判的だが、これには理由がある。

「今後、ICC当局者が、ICCが管轄する犯罪の被害を受けた地域の人びとへの関与がこれまで十分でなかった点を教訓とし、今後この点を改善してより開かれた法廷となることを期待する。」とディッカーは述べた。「ICCは、こうした地域や人びとのためにこそ、設立されたという原点を忘れてはならない。」

2008年7月17日は、国際刑事裁判所に関するローマ規程がハーグで採択されてから10年目にあたる。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、逮捕状の執行などのICCに必要な外交支援を国際社会が提供するよう訴える。また、ローマ規程の締約国が、ICCに必要な財政を継続的に支援するよう強調する。

「10年前、120ヵ国の政府が、極めて重大な残虐行為の被害を受けた人びとに向けて、この世界初の常設刑事法廷が、正義をもたらす場となると約束した。」とディッカーは述べた。「国際刑事裁判所が直面している課題を今後乗り越えていけるよう、今こそ、締約国と国連がその持てる力を発揮して支援をすることが必要だ。」

背景

ICC検察官はコンゴ民主共和国、ウガンダ北部、スーダン・ダルフール地域、中央アフリカ共和国についての捜査を開始し、12件の逮捕状を発付した。

中央アフリカ共和国で犯された罪に関し、現在、コンゴの前副大統領ジャン・ピエール・ベンバを含む容疑者4名が、ハーグのICC拘置所に収監されている。

ICC発足以来初となるトマ・ルバンガに対する公判は、2008年6月開始予定だった。しかし、検察官が無罪に結びつく可能性のある証拠を提出できなかったことについて、公正な裁判への懸念が生じると裁判部が判断したことから、無期限停止されている。