(ニューヨーク) --- 対ビルマ援助の拠出を「公約(プレッジ)」する25日の国際支援国会合に参加を予定している潘基文(バンギムン)国連事務総長と各国政府は、同会合での議論を緊急支援へのアクセスに絞るべきであり、長期復興については今回は議論すべきでない。ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日このように述べた。

5月2日~3日にかけてのサイクロン・ナルギスの襲来から三週間が経過した。だがビルマ政府は現在も支援活動を妨害しており、200万を超す被災者の大多数がいまだに援助を受けられない状態だ。

潘事務総長は5月22日と23日にビルマを訪問し、被災と支援の状況を視察する。そして25日には、国連と東南アジア諸国連合(ASEAN)が共催するビルマの長期復興に向けた国際支援国会合に出席する。ASEANは先日、人道支援を目的とした調整機構の設立を発表した。その目的は、ビルマ政府の抵抗により支援が停滞している状況を打破し、サイクロン被災者に「迅速に十分な援助を確実に提供する」ことだった。しかし、この調整機関が本来行うべきであったことが、援助を「プレッジする」という25日の会合にとってかわられてしまったようだ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ビルマ軍事政権が会合に乗じて、人道援助の受け入れを求める国際社会からの圧力をかわそうとするのではないかとの懸念を表明した。なお今回の会合では、軍事政権側から、意思決定の権限を有する当局者が出席するどうかさえわかっていない。

「潘基文事務総長をはじめとする外交団は、愛想笑いと称賛をたずさえてラングーンを訪問すべきではない。ビルマ軍政指導部に対し、ただちに、被災者が支援に全面的にアクセスすることを許可するよう、率直な要求を強くつきつけるべきだ。被災者の困窮を尻目に、空手形で終わる高官の訪問や高級会合を重ねる時期はとうに過ぎている。」ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムズはこのように述べた。

国連の報告によれば、国連機関とその協力組織の援助を受けることができたのは、サイクロン被災者全体の25%にすぎない。ビルマ政府は、外国からの人道支援要員(保健・ロジスティック・水・公衆衛生の専門家など)に対して、未だに、イラワディ・デルタ地域でも最も被害の大きかった一部の地域への訪問を許可していない。このため援助団体は、効果的な対策をとり、被災地の実情をモニタリングする上で相当の制約を受けている。ビルマ政府が自前で行ったデルタ地域での救援活動は、限られたものにとどまっている。

ビルマの沖合には米国の艦船が、非常に必要とされている援助物資を積んで停泊しているが、ビルマ政府は本日、その着岸を拒絶した。フランスと英国の艦船も援助物資の搬入ができないまま、この地域に停泊中だ。

「ビルマ政府は譲歩を小出しにして時間稼ぎをする術に長けている。潘事務総長は長年続けられてきたこのトリックに騙されてはいけない。国際社会はビルマ国内での人道支援へのアクセスを今すぐ許可するよう求めているが、軍政は今回の会議で、そうしたアクセスを少し認めることで、国連やその他援助国政府が、『大成功の』プレッジング会合を開催してくれることを期待しているのは間違いない。」アダムズ局長はこのように述べた。

ビルマ政府は長期の復興資金ファンドの設立を要請しているが、その理屈付けとして、緊急支援の段階はすでに終わったと言い張っている。この理屈を補うため、ビルマ政府はASEANのアセスメント・チームなどの外国からの視察団を、小規模で統制の行き届いた、ラングーン郊外の避難民キャンプへの宣伝旅行に引率している。国営テレビは援助キットを配布する軍関係者の映像を垂れ流しているが、実際に政府が対応するのは写真を撮影するときくらいしかない。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、25日に開かれる支援国会合に参加する国や機関に対し、将来のための長期復興支援を申し出るのであれば、デルタ地域のすべての被災者に対し、即時かつ完全なアクセスを認めることを、ビルマ政府に条件として提示するよう強く求めた。また、今回の会合には、現軍事政権の最高意思決定機関=国家平和発展評議会(SPDC)を代表した意思決定を行う権限のあるビルマ政府の幹部たちの出席が不可欠である。

将来、緊急人道援助のニーズが満たされ、長期復興を議論する段階が訪れた時には、支援国政府と関係国際機関は、復興事業に対し、原則に則った筋の通ったアプローチを採用すべきである。そのためには、ドナー側はビルマ政府に対し、最低でも以下の事項を求めるべきである。

  • 支援を検討している国際機関と各国政府のアセスメント・チームは、復興ニーズを算定するために、被災地に完全かつ自由にアクセスできなければならない。
  • 国際的資金による復興関連事業はすべて、ビルマ政府への直接の資金提供ではなく、国際的に認知され、かつ、相応の能力を有する機関によって行わなければならない。そして、復興事業は、実施機関やドナー国の政府からのモニタリングを受けなければならない。
  • すべての復興支援は、ビルマ当局による横流しが絶対に発生しないようにモニタリングが必要である。またビルマ政府が、たびたび系統的に実行している強制労働や強制移住、土地接収など人権侵害行為(多数の調査がされており、証拠が存在する)が起こらないようにモニタリングされなければならない。
  • 資金を提供する側は、事業内容を検討するとき、被災地のコミュニティ、宗教者、少数民族、そのほか多様な市民社会の当事者と協議しなければならない。
  • 国際社会が制裁対象にしているビルマ企業または個人、ビルマ軍が所有または支配する企業とは、復興支援事業の契約をしてはならない。
  • ビルマ政府は約40億米ドル(4000億円)の外貨準備を有し、天然ガス輸出により毎月約1億5000万ドル(150億円)の収入があると見られる。各援助国政府は、復興事業に資金を拠出する前に、ビルマ政府に、復興計画に自ら多額の拠出を行うことを正式に約束するよう求めなければならない。

「今もなお緊急援助への人びとのアクセスが問題となっている状況なのに、外交官たちが復興の話し合い始めるなどまだ早い。救えたはずの人びとを無駄に見殺しにした当局者の責任追及という意味でも、復興を協議すべき段階ではない。」アダムズ局長はこのように述べた。