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中国・北朝鮮: 北朝鮮人女性の子どもに、就学機会を与えよ

子どもを下層に追いやり、家族を引き裂く中国の政策

(ニューヨーク) ヒューマン・ライツ・ウォッチは、本日発表した新しい報告書で、中国で暮らす北朝鮮人女性の子どもたちの多くが、法的身分を否定され、就学機会を剥奪されている、と述べた。国際基準及び中国国内法に従えば、中国政府はすべての子どもたちの就学を確保する義務があるものであり、戸口登録書類の提出などを条件にすべきではない。さらに、中国人男性との間に子どもを持つ北朝鮮人女性を、逮捕して即決送還することを停止すべきである。

「教育を受けていない子どもが増えることは、中国にとって何の利益にもならない。こうした子どもたちの権利を守るために、中国は新法を施行したり、現行法を改正したりする必要はない。国内法及び締約した国際条約を守ればよいだけだ。」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理、エレーン・ピアソンは述べる。

 21頁にわたる報告書『身分も就学も拒絶されて:中国に住む北朝鮮人女性の子どもたち』は、そうした子どもたちが、法的身分もなく、初等教育の機会も与えられないまま、余儀なくされている生活の様子を記録している。こうした子どもたちは、北朝鮮との国境に近い中国東北部、吉林省東部・延辺朝鮮族自治区で暮らしている。子どもたちは、北朝鮮から来たか、あるいは、中国で、中国人の父親と北朝鮮人の母親の間に生まれた。

 北朝鮮から中国へ移住してきた子どもたちは、学校へ行くために必要な戸籍書類(“戸口”)を、取得する法的権利がない。中国の義務教育法は、性別、国籍、人種を問わず、すべての子どもたちは、9年間、無償で義務教育を受けると定めているにも拘わらず、学校は“戸口”を要求する。法律上は、北朝鮮籍の子どもも、片親が北朝鮮籍の子どもも、入学許可に身分証明書を提出する義務はない。しかし、北朝鮮人の子どもの親や後見人は、子どもたちを学校へ行かせるために、賄賂に頼ったり、詐術を用いねばならない。

 ある13才の北朝鮮人少女が、ヒューマン・ライツ・ウォッチに語ったところによると、少女は2007年、ある中国人少女の身分証明書を借りて、学校に通い始めた。「私が北朝鮮人だってばれて、学校を追い出されるんじゃないかと思うと怖い。“戸口”(戸籍)を持ってないし、今年から学校へ行き始めたばかりで、同級生はみな中国人だし、私より4才も年下なの。」と少女は言う。

 「学校へ行くという自動的に享受できるはずの権利のために、子どもたちや両親が、こうした捨て身の行為や違法手段に訴えなければならないという事態は、受け入れられない。中国は、このような慣行を即刻停止し、すべての子どもたちに無条件で教育を与えなければならない。」とピアソンは述べている。

 中国に住む北朝鮮人は、すべてではないにしても多くが、帰国すれば迫害の危険があるため、難民に該当する。国家の許可無く北朝鮮を離れることは、反逆行為と見なされ、拘留、強制労働、ときには死刑などの重い刑に処せられるのだ。しかしながら、中国の方針では、北朝鮮人は難民ではなく、“不法”経済移民として扱われる。

 中国政府が、北朝鮮人女性を逮捕し即決送還し続けるため、中国人と北朝鮮人の夫婦は酷な選択を迫られる。つまり、子どもを学校に行かせるため戸口簿に登録し、母親が逮捕されたり国外追放されるかもしれない危険を冒すか、子どもを登録しないで合法的に就学することをあきらめるか、である。延辺のある地域では、父親が子どもを登録するのに、北朝鮮人の母親が即決送還されたという文書を証拠として提出することを、地方当局が条件としている。中国の国籍法によれば、一方の親が中国籍であれば、中国で生まれた子どもは中国籍を獲得できる。

 「難民条約の締約国として、中国は北朝鮮人の逮捕・即決送還を停止しなければならない。この政策が、家族を引き裂き、子どもから就学機会を奪っている。」とピアソンは述べる。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは中国政府に対し、以下の要請をしている。

  • すべての子どもを、無条件に、就学させること。
  • 両親のうち一人が中国籍の子どもに“戸口”(中国人民の戸籍)を与え、その際、もう一人の親の身分証明を要求しないこと。
  • 北朝鮮人、特に子ども及び中国人男性との間に子どもを持つ女性を、逮捕・即決送還するのを停止すること。
  • 国連難民高等弁務官事務所に対し、北朝鮮人とのコンタクト及び難民の地位の認定を行うことを許可すること。

    背景 
     1990年代半ばから、数十万人もの北朝鮮人が、飢饉から逃れるため、食糧と仕事を求めて、国境を越え中国へ渡った。一時的に滞在するつもりだっただけの者が大半だったが、一部は結局中国に定住した。北朝鮮人女性の中には、中国人男性と関係を持ち、子どもを授かる者もあった。望んでそうした者もあったが、人身売買の被害にあって、そのような状況を強いられた者もある。

    『身分も就学も拒絶されて』から実例
     「夫とは10年連れ添っていて、7才の子どもがいます。犯罪を犯したこともないのに、私も息子も居住する資格がありません。息子は、学校へ行かれないと思うと本当に心配です。」 ―― 中国人男性と事実婚で同居する42才の女性、北朝鮮、巫山(ムサン)出身

    「私の暮らしているところでは、中国人と北朝鮮人の間の子どもが、“戸口”(戸籍登録許可証)を取得するのに、北朝鮮籍の母親の逮捕を証明する警察の書類を提出するか、その母親が逃亡したと書類に書いて説明しなければならない。母親が送還された、或いは逃亡したという証言には、3人の署名が必要で、それを警察に出さなければならないんだ。さらに、それだけじゃ済まない。役人に袖の下を渡さないとだめだ。」 ―― MH (8才)の父親。北朝鮮籍の母親は、2005年逮捕・送還

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