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アフガニスタン:戦争犯罪人に対する裁きが平和に不可欠

カルザイ大統領は、過去の戦争の中で犯罪を犯した政権内部者を責任追及せよ

(ニューヨーク)- ヒューマン・ライツ・ウォッチは、本日、「カルザイ大統領は、過去30年間にわたりアフガニスタンで起きた戦争犯罪及び重大な人権侵害についての真実、和解そして裁きを実現するプログラムを直ちに実施すべきだ。」「アフガン政府は、できる限り早く、責任者(うちの何人かは高位の公職に就いている)を裁く特別裁判所を設置すべきだ。」と述べた。

アフガン政府は、2005年12月12日、平和、和解、正義についてのアクション・プランを承認したが、その実施は延期していた。その理由の一つは、カルザイ政権と同政権を支援する諸外国政府等が、正義の実現(裁き)を要求すると、アフガンの不安定な治安状況がさらに悪化するのでは、と危惧したからだ。

「アフガン政府とその同盟国は、これ程の長期間の荒廃を引き起こした者達に、ようやく立ち向かい始めた。」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア・リサーチ・ディレクター サム・ザリフィは述べた。「正義の実現(裁き)は、長期にわたる安定の実現に不可欠だ。タリバンは、アフガン政府が軍閥に立ち向かっていないと喧伝している。アフガン政府は、アフガンの人々に対し、タリバンが喧伝は間違えで、政府が、軍閥と立ち向かい、基本的な治安を実現できると知らせる必要がある。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、「過去5年間、アフガン政府、国連、そして米国に率いられた国際社会は、戦争犯罪者、人権侵害者、麻薬密売者たちを訴追するどころか、これらの者と協力体制を組むという、非生産的かつ逆効果な政策をとった。」「カルザイ大統領は、あらゆる政治的勢力を自分の傘下に収めようと試みた。これは誤った政策だった。そして、米国も、テロとの戦いで、こうした多くの戦争犯罪者などと協力してきた。」と述べた。

アクション・プランは、2009年に完了予定。同プランは、トランジショナル・ジャスティス(移行期の正義・司法)プロセスの実施のための5つのアクションを概説する。

  • l 30年の戦争で犠牲となったアフガンの人々を公に追悼・記念すること
  • l 重大な人権侵害者を公職から解くための行政機関の綿密な調査,li. 責任の所在を明白にするための過去の出来事の詳細な記録
  • l 和解と国民間の協調の推進
  • l 正義と裁き・処罰のメカニズムの創設

アクション・プランは、1979年のソビエトのアフガニスタン侵攻から、1990年代前半の残虐な内戦、そして、タリバンの勃興から2001年の崩壊までの時期を包含する。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの2005年のレポート "Blood-Stained Hands"(血まみれの手:カブールで起きた残虐行為及びアフガニスタンにおける不処罰の遺産、https://www.hrw.org/reports/2005/afghanistan0605/)のとおり、近年アフガニスタンが生んだ最悪の人権蹂躙・犯罪者たちのうちの何人かは、今も活発に活動し、広範な人権蹂躙を行い続けている。現在のアフガンの政府と議会の高官の中には、数万人ものアフガンの人々を殺害又は避難民化した1990年代前半の残虐な内戦(その結果、タリバン興隆を招いた)における戦争犯罪の関係者が含まれている。中でも最も有名な者として、下院議員のアブドゥル・ラスール・サヤフ、上院議員のムハンマド・カーシム・ファヒム、ブルハヌッディン・ラバニ、エネルギー相のイスマイル・ハーン、軍参謀総長のアブドゥルラシード・ドストム、そして現副大統領のカリム・ハリリが挙げられる。そして、その全員が、権力の座についたことを利用して、今もこれを濫用を続けている。

こうした人びとと同時期に戦争犯罪を犯した別の者たち--例えば、アフガニスタン南東部の主要な軍閥グルブッディーン・ヘクマティヤールは、今はタリバンと同盟している。ムッラー・オマル、ムッラー・ダウドゥッラー(Mullah Daudullah)、ジャラルッディン・ハッカーニー(Jalaluddin Haqqani)のような現在のタリバンの指導者たちは、1990年代後半から、残虐行為を行っている。

「この5年間、アフガンの人々は、共産主義者、軍閥、そしてタリバンが犯した犯罪に対する裁きを要求してきた。こうした正義の実現に失敗したことで、アフガン政府とこれを支援する諸外国政府は、その正統性を大いに失った。アクション・プランは、人民の支持を取戻す好いチャンスだ。」とザリフィ氏は述べた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、州知事や警察署長のような行政組織の高官の任命について大統領に助言する委員会を設置する等、調査・免職とアカウンタビリティーの実現のアクション・プランを直ちに実施するよう、カルザイ大統領を促した。この委員会は、遅くとも2006年8月には設立されるはずだったが、まだ活動を始めていない。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、裁きをどのように行うべきかを勧告する、アフガニスタン人と国際的専門家から成るハイレベルタスクフォースの任命も、カルザイ大統領に促した。

また、アフガニスタンの脆弱な司法の現状に鑑み、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、改めて、過去から近年にいたるまでの主な人権侵害者を裁には、特別裁判所の設置が必要であると求めた。裁判所の独立を維持し、国際的な公正な裁判基準の保証を促進するため、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、そうした裁判所が、アフガン人裁判官及び国際裁判官で構成されること、国際裁判官が過半数を占めること、国際検察官も配置することを勧告している。

そして、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、政府に対し、司法制度を改革し、独立した司法を創設する努力を強化・促進するよう促した。

普遍的裁判管轄権原則に基づき、海外で暮らすアフガン人の人権侵害者に対し、国外で司法手続きが取られたケースがいくつかある。2005年、イギリスの裁判所は、悪名高い軍閥ファリャディ・ザダド(Faryadi Zardad)に対し、1991年から1996年までの間にアフガン市民を拷問したとして、懲役20年の有罪判決を言い渡した。同様に、オランダの裁判所は、KHAD(アフガニスタンの共産主義時代の悪名高い諜報機関)の幹部ヘサムッディン・ヘサム(Hesamuddin Hesam)とハビブラー・ジャラゾイ(Habibullah Jalalzoy)に対し、拷問を行ったとして、各懲役12年と懲役9年の有罪判決を言い渡した。

アクション・プランが公表されたため、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、30年近いアフガニスタンの戦争中に犯された戦争犯罪や人権侵害を記録した報告書(長い間公表が延期され続けていた)を公開した。

「カルザイ大統領と国際社会は、正義(裁き)なしに平和を築こうと試み、失敗した。」とザリフィ氏は述べた。「今こそ、殺人者に責任を問う時なのだ。」

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