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最高裁判所 御中

拝啓 

私ども国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ(本部ニューヨーク)は、世界約100カ国で活動する世界最大級の人権NGOであり、各国政府の人権状況を調査・モニタリングすることを活動の柱としております。1997年にはノーベル平和賞を共同受賞し、現在、世界で500名を超えるスタッフの相当数が法律家です。毎年約80冊の調査報告書を発表しており、2023年には日本に関する報告書「日本の『人質司法』: 保釈の否定、自白の強要、不十分な弁護士アクセス」(英語日本語)を刊行いたしました。

併せて、一般財団法人イノセンス・プロジェクト・ジャパンは、えん罪被害者の支援と救済、そして再検証を通じた公正な司法の実現を目指し、2016年に司法実務家、法学者、心理学者、情報科学者らによって設立された団体です。米国で始まった「イノセンス・プロジェクト」(米国では254件の無罪を獲得、うち204件がDNA鑑定による)の活動に学びつつ、日本におけるえん罪救済に取り組んでおります。

さて、最高裁判所が2026年1月から司法研修所において、全国の刑事裁判担当裁判官が保釈について意見交換を行う研究会(以下「研修会」)を開催すると報じられたことを私どもは歓迎いたします。研修会が、憲法や国際人権法に則った適正な運用を促す契機となることを強く期待いたします。

そのためには、裁判官が保釈不許可による身体拘束が当事者や家族に及ぼす影響を直接理解することが不可欠です。研究者や法曹関係者のみならず、実際に拘束を経験した当事者やそのご家族の声を聞く機会を設けることを強く提案いたします。特に、本研修会の契機ともなった大川原化工機事件の当事者からのヒアリングは欠かせません。加えて、他の事例の当事者からも幅広く意見を聴取することができれば、個別事件を超えた普遍的な課題をさらに明らかにすることができると考えます。

いうまでもなく、こうしたヒアリングの目的は、個別事案における判断の妥当性を争うことではなく、保釈不許可による人権への影響を理解することにあります。そのため、事件を事例として取り上げることは、当該判断を行った裁判官の独立を侵すものではありません。

つきましては、研修会の企画にあたり、少なくとも大川原化工機事件の当事者である大川原正明様、島田順司様、そして故・相嶋静夫様のご遺族からのヒアリングの実施をご検討いただきたく申し入れます。なお、この申入れは大川原様らの事前の了承を得ております。

何卒よろしくご検討賜りますようお願い申し上げます。

敬具

国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ 日本代表 土井香苗

イノセンス・プロジェクト・ジャパン代表・弁護士(元裁判官)石塚章夫

同事務局長(甲南大学教授)  笹倉香奈

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