「世界えん罪の日」である10月2日、ヒューマン・ライツ・ウォッチと一般財団法人イノセンス・プロジェクト・ジャパンの共同プロジェクトである「ひとごとじゃないよ!人質司法」は、人権を侵害し、日本各地で数多くのえん罪を生み出し続けている「人質司法」について社会の関心を高めるため、新聞広告を掲載した。
本広告では、いつ終わるとも知れない獄中生活の中、勾留中の被疑者が当局により「自白しろ」と迫られ応じざるをえず、数多くのえん罪が生み出されてきたことや、「人質司法」を止めるため、司法制度見直しへの世論を高める必要性などを訴えている。
「人質司法」は、刑事事件の被疑者・被告人の適正手続と公正な裁判を受ける権利を侵害している。当局は被疑者・被告人を長期間、時には数カ月から数年にわたり拘束する。自白しない場合は特に長く拘束されうる。起訴前の勾留期間中、当局は過酷な取調べを行い自白を強制する。取調べに弁護人が立ち会うことはできず、憲法で保障されている黙秘権を行使しても取調べは止まらない。
袴田事件はこの実務の危険性を浮き彫りにしている。元プロボクサーの袴田巌さんは、一家4人殺害の罪に問われ1966年8月18日に逮捕された。警察と検察による過酷な取調べにより、逮捕の20日後に自白した。強制された自白に基づき袴田さんは起訴され、その後死刑を宣告された。袴田さんは無罪を主張し続け、逮捕後58年となる2024年9月26日、再審無罪となった。
今回の新聞広告には3,477個の「正」の字が掲載されており、袴田さんが拘束されていた17,388日と、拘束が長引くにつれ正義が歪んでいくことを表している。
日本政府は「人質司法」を解消するため、これ以上待ってはならない。