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マレーシア:移住者・難民の人権を侵害する収容措置

収容されている人々に対する嫌がらせや拷問の停止を

Undocumented migrants walk in line while being detained during an immigration raid in Kuala Lumpur, Malaysia, July 1, 2022. © 2022 Hasnoor Hussain/Reuters
  • マレーシア政府は、約12,000人の移住者・難民(うち1,400人は子ども)を、身体的虐待や精神的危害の深刻なリスクにさらして収容している。
  • マレーシアの劣悪で人権侵害をもたらす移住者の収容体制は、自由、健康、法の適正手続きに対する移住者・難民の権利を否定するものである。
  • マレーシアは入管制度を費用対効果が高く、効率的で人道的なものにするコミュニティベースの収容代替策を追求すべきである。

(クアラルンプール)マレーシア政府は、約12,000人の移住者・難民(うち1,400人は子ども)を、身体的虐待や精神的危害の深刻なリスクにさらして収容していると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表した報告書で明らかにした。

報告書『「太陽が見えない」:マレーシアの移住者・難民の恣意的収容』(全60ページ)は、マレーシア当局が全国20ヵ所の移住者の収容施設で移住者・難民に対して、懲罰的かつ人権侵害的な処遇を行っていることを明らかにした。収容された移住者は数ヵ月から何年にもわたり、国内外からのモニタリングもないまま、看守からの嫌がらせや暴力にさらされながら、過密かつ不衛生な環境で過ごすことになりかねない。

「マレーシア当局は移住者を犯罪者扱いし、外界との接触がほとんどない入管施設で長期にわたり恣意的に収容している」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのシェイナ・バウクナー・アジア局リサーチャーは述べた。「マレーシアの劣悪で人権侵害をもたらす移住者の収容体制は、自由、健康、法の適正手続きに対する移住者・難民の権利を否定するものだ」。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、収容経験者、その家族や弁護士、人道支援スタッフ、元入管職員など40人以上から話を聞いた。マレーシアの法律では、非正規な入国および滞在はすべて犯罪化されている。難民、庇護申請者、人身売買被害者、非正規移住者の区別はない。また、収容期間に法的制限がないため無期限収容の恐れがある。当局は2020年5月以降、45,000人を超える非正規移住者を収容している。

元収容者たちは、デポと呼ばれる移住者収容施設での生活が、いかに限界すれすれでむごたらしかったかを詳しく語った。食料と衛生用品が限られ、水不足が頻繁に起こるほか、厳格で予測不可能な規則が定められており、いつ何時処罰されるかわからない恐怖にも直面していたという。「食事のおかわりをしたいとか、水浴びのために容器にもう一杯水をもらいたいとか、寒いから毛布が欲しいなどと言うと殴られた」と、ベランティク移住者デポに収容されていたロヒンギャ難民は語った。

被収容者は日に数回、「点呼」のために集合させられる。何時間も続くことがあり、被収容者はトイレに行くときでさえ、沈黙し、頭を下げて身動きしないように命じられる。「少しでも音を立てれば懲罰があった。壁から吊り下げられたり、腕立て伏せやスクワット、アヒル歩きを命じられたり、炎天下に何時間も立たされたりした」と、タワウ移住者デポにいたインドネシア人女性は述べた。

移住者たちは、収容への異議を申し立てる法的な審査やメカニズムに訴えることができないまま収容されている。マレーシア政府が行う長期にわたる、司法の監督を受けない移住者収容措置は、恣意的な収容を禁止する国際人権法の規定に違反する。

政府統計や目撃証言によれば、虐待と不十分な医療ケアが相まって、移住者収容施設ではここ何年かで数百人が死亡している。ある移住労働者は、総勢14人で脱走を試みたところ、看守たちから何日もわたる拷問を受けたと話す。レンガや警棒で殴られたり、自分たちの胸の上に看守が立ったりしたという。ついには2人が亡くなっている。

マレーシアでは近年、移住者に敵対的な政策や実践とともに、排外主義的な論理が増えている。

マレーシア政府は2019年8月以降、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の移住収容施設へのアクセスを認めておらず、UNHCRは庇護申請の審査や難民登録された被収容者の保護ができないでいる。マレーシアは難民条約を批准していないため、難民の地位を決定し、庇護申請者に法律上の認定と保護を提供するための法的枠組みや手続きが存在しない。

収容経験のある難民や庇護申請者によると、入管職員は脅迫や品位を傷つける取り扱いのほか、暴力も用いて、UNHCRとの面談申請を妨害したり、出身国に無理矢理帰還させようとした。アジル・デポでは、UNHCRの登録難民であるチン人1人と難民数十人が、UNHCRにアクセスできないことや強制送還の脅しを受けていると抗議したところ、看守によって殴られた。「私たちは外に連れ出され、テープでくっつけられたゴムパイプ2本で看守に手足を5回殴られた」と、このチン人は述べた。「パイプには金属ワイヤーがたくさん入っていた。3回殴られたところで気を失った」。

収容された子どもたちは、医療ケアの拒否、不十分な食事、虐待など、大人の収容者と同じ人権侵害行為を受けている。また、栄養失調が蔓延している。

マレーシア政府による子どもの移住者の収容は国際法違反である。政府は長年にわたり、国連人権理事会での公約を含め、子どもについて収容代替措置を議論してきたが、ほとんど何の進展もない。

国連の恣意的拘禁作業部会は、移住者収容の段階的廃止を求め、「移住者を犯罪者に分類したり、犯罪者のように扱ってはならない」とした上で、移住者収容は「最後の例外的措置として、最短期間で、入国審査や申し出内容の記録、疑義がある場合に行われる最初の身元確認など、なんらかの正当な目的によって正当化される場合だけに限って」のみ用いられるべきだと述べている

マレーシア政府は移住者収容への依存を減らし、完全廃止に向かうべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。当局は、難民、子ども、人身売買被害者、その他の脆弱な移住者を、入国管理に関わる理由で収容することを直ちにやめるべきだ。

そして政府は、人権侵害をもたらす不必要な移住者収容をなくすだけでなく、入管制度を費用対効果が高く、効率的で人道的なものにするコミュニティベースの収容代替策を追求すべきだ。

「マレーシアは、他国も採用し、入国管理の目的をよりよく果たしている方策の採用を真剣に検討すべきだ」と、前出のバウクナー・リサーチャーは述べた。「政府は、人権侵害をもたらす収容施設を存続させるのではなく、子どもや難民、その他の脆弱な移住者を人権侵害から守る代替措置を開発すべきである」。

 

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