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カンボジア:野党活動家への嫌がらせや逮捕、相次ぐ

当局は、活動を禁じたキャンドルライト党への弾圧を激化

Cambodia's Candlelight Party supporters wave before marching during an election campaign for the June 5 communal elections in Phnom Penh, Cambodia, May 21, 2022. © 2022 Heng Sinith/AP Photo

(バンコク)カンボジア政府は、2023年7月23日の総選挙を前に、野党・キャンドルライト党(CLP)の党員や活動家への嫌がらせや恣意的な逮捕を拡大していると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表した。当局は野党を標的にすることをやめ、根拠のない起訴を直ちに撤回し、不当に拘束されている人びとをすべて釈放すべきである。

今回の総選挙は、実際の民主的プロセスとは似ても似つかない。その理由は、国の選挙管理委員会は5月に、主要野党であるキャンドル党を、ねつ造された行政上の理由で選挙に参加できないと決定しているからだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。6月23日、与党議員しかいない国会は選挙法を満場一致で改正し、選挙をボイコットした者に以降の選挙での立候補を禁止するとの罰則を科すとした。立候補しようとする者は、少なくとも2回の選挙に投票しなければ、地方選挙と国政選挙で候補者としての資格を得ることができない。また、この改正により、選挙のボイコットを擁護したり、投票用紙を故意に汚損したりすることは犯罪となった。

「カンボジア政府は、キャンドルライト党の幹部や党員に対して、ねつ造された刑事告発を用いた弾圧を開始すると宣言した」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理フィル・ロバートソンは述べた。「キャンドルライト党はすでに7月の総選挙から、疑わしい理由で締め出されているが、当局から依然として脅威とみなされ、弾圧にさらされている」。

キャンドルライト党員で米国籍のTithia Sam氏は、7月5日にカンボジアから出国した。その前には逮捕状が出されたとの通達を受け取っていた。内務省の5月11日付通達は、同氏のカンボジア入国を「ブラックリスト」に載せて拒否するよう、入国管理局に協力を求めている。それによると、同氏は、2020年~2022年にFacebook上で「国王を侮辱し、(……)カンボジアの社会不安を扇動した」として、不敬罪に問われた。有罪になれば最長5年の刑と最大2,500米ドルの罰金が科せられる。

キャンドルライト党は、Ththia氏をバッタンバン州の総選挙立候補者として擁立したが、その後、国の選挙管理委員会から7月総選挙での候補者擁立を禁止された。同氏への容疑は、立候補を妨げようという政治的動機によるものと思われる。

7月7日早朝、タイ警察の私服警官隊は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)バンコク事務所に向かっていたキャンドルライト党青年部幹部Thol Samnang氏を拘束した。氏は7月4日にカンボジアを出国していた。カンボジア警察は、カンダールにある氏の自宅を2日間にわたり包囲し、逮捕令状なしで氏の身柄を拘束しようとしていた。逮捕までの数週間、氏はFacebookにフン・セン首相と与党・カンボジア人民党(CPP)を批判する投稿を行い、投票用紙を汚損して選挙に抗議しようと有権者に呼びかけていた。

Samnang氏の逮捕の根拠について質問されたカンボジア国家警察のChhay Kimkhoeun報道官はこう述べている。「火を見るより明らかです。彼の(Facebookの)投稿を見てください」。Samnang氏は現在、タイで政治的庇護を求めており、バンコクの入管施設に拘禁されている。

7月13日、パイリンのキャンドルライト党運営委員会の責任者Khem Monykosal氏が、身柄拘束を免れるためにカンボジアから出国した。氏はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、6月9日にパイリンの与党幹部から4回にわたり「カンボジア人民党に投降する」よう求められたと語った。政府の仕事に戻るか、係争中の裁判2件による法的措置を受けるかどちらかを選択しろと迫られたという。氏がこの話を拒否したところ、7月11日、内務省警察とぐるになった地元警察から、捜索令状なしでプノンペンにある自宅の家宅捜索を受けた。警察は、検察官の命令で携帯電話を押収したとの手書きのメモを残していったという。氏は現在、庇護を求めており、身の危険を感じている。

7月14日、警察は、キャンドル党全国運営委員会委員のLy Ry氏と、プノンペン支部副代表のBun Kat氏を拘束した。ある政府高官は、この逮捕が投票用紙汚損計画を呼びかける音声メッセージの投稿にかかわるものだと認めた。当局は、この2人を投票用紙の汚損を呼びかけたとして扇動罪で起訴した。Bun氏はその後、親政府ニュースサイトFresh Newsに公開謝罪動画を投稿した。

7月17日、キャンドルライト党のFacebookアカウントは、同日午後、警察が同党のトボンクムン州代表Eng Sroy氏と党女性運動局長Vong Runy氏の2人を逮捕したとの報告を投稿した。7月17日に発行された逮捕状によると、2人は、刑法494条と495条の「(総選挙に対する)社会的混乱を引き起こし、犯行を扇動した罪」に問われている。キャンドルライト党の報道官は、2人の逮捕を確認し、釈放を求める声明を発表した。

カンボジャ・ニュースの報道によれば、当局は17人の野党議員に対し、有権者に総選挙の投票用紙を汚損するよう扇動したとして、欠席裁判により罰金を科し、被選挙権を最低20年間剥奪した。被告は、解散した野党・カンボジア救国党の元議員6人も含まれていた。サム・レンシー氏、ムー・ソチュア氏、Long Ry氏、Nuth Romdul氏、Hou Vann氏、Kong Saphea氏、Eng Chhai Eang氏のほか、Seng Mengbunrong氏とChham Chhany氏など活動家11人だ。

カンボジャ・ニュースはまた、コンポンチャム州では、州選挙管理委員会が、キャンドルライト党の幹部Ly Menghorng氏に対し、1,000万リエル(約36万円)の罰金を科し、今後10年間の選挙への立候補を禁じたと報じた。国の選挙管理委員会のHang Pethea報道官によると、Menghorng氏は7月1日、Facebookのアカウント名Vanrith Lyで、「自分たち、また仲間たちのために正義を提供する」ために、投票用紙の汚損を呼びかける投稿を行ったたという。

国の選挙管理委員会は7月11日、最近成立した選挙法改正では、投票用紙の不正使用を呼びかけた者には、2,000万リエル(5,000米ドル)の罰金を科すと解釈できる声明を発表した。この改正は、委員会がキャンドルライト党の選挙出馬禁止を決めたことを受け、一党独裁の選挙に抗議する方法として、投票用紙の汚損SNSで呼びかけられたことへの反応だと思われる。

フン・セン首相は、高い投票率を示す総得票数を、政治的正当性があることを示す重要な指標として宣伝していると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。2018年、カンボジア人民党は、有権者に総選挙のボイコットを呼びかけた野党議員に対して法的措置を取ると脅した

カンボジアも締約国である、市民的及び政治的権利に関する国際規約の第25条は次のように定める。「すべての市民は(……)次のことを行う権利及び機会を有する。/(a) 直接に、又は自由に選んだ代表者を通じて、政治に参与すること。/(b) 普通かつ平等の選挙権に基づき秘密投票により行われ、選挙人の意思の自由な表明を保障する真正な定期的選挙において、投票し及び選挙されること。/(c) 一般的な平等条件の下で自国の公務に携わること」。

6月16日、フォルカー・テュルク国連人権高等弁務官は、総選挙前に市民活動の場が狭められていることを深く憂慮していると述べた。そして、「総選挙に先立ち、表現と意見表明の自由、集会と結社の自由を保証する開かれた多元的な環境が不可欠である」と述べ、カンボジア政府に対し、総選挙を自由で公正に実施するための環境を速やかに実現し、保護するよう求めた。

「カンボジア政府は、多くのカンボジア国民から、自らの選んだ政党に投票する権利を奪っている。国民はそのことについて意見を表明する権利がある」と、前出のロバートソン局長代理は述べた。「国会が最近行った選挙法の改正は、あからさまな権利侵害だ。投票をボイコットしたり、投票用紙を汚損したりするよう有権者に呼びかけた人びとへの起訴は撤回されるべきである」。

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