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2020年9月1日、ベルリンの海外事務所の外でデモに参加する香港の活動家、羅冠聡(ネイサン・ロー)氏。 © 2020 Tobias Schwarz / AFP via Getty Images

(ニューヨーク)- 亡命した民主化活動家や元議員ら8人について香港当局が根拠のない逮捕令状を出し100万香港ドル(12万8,000米ドル)の懸賞金をかけたことは、中国による政治的脅迫作戦の国外への拡大であると本日、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

2023年7月3日、香港警察はこの8人−元議員の許智峯(テッド・フイ)、郭栄鏗(デニス・クウォック)、羅冠聡(ネイサン・ロー)、活動家の郭鳳儀(アナ・クウォック)、袁弓夷(エルマー・ユエン)、劉祖廸(フィン・ラウ)、労働組合運動家の蒙兆達(クリストファー・ムン)、法廷弁護士の任建峰(ケヴィン・ヤム)が「国家安全保障を脅かす深刻な犯罪を犯し、制裁発動を提唱し、香港の評判を損ない、香港政府高官を脅した」、また「諸外国と企んで香港の国際金融都市としての地位を損なおうとした」と主張した。当局は8人の指名手配と懸賞金を直ちに取り下げるべきである。

「香港政府は香港内外で平和的抗議者を迫害するために過剰な対応をすることが増えている」とヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア副局長王松蓮は述べた。「国境を越えて懸賞金を出すことは、ますます強まる中国政府による弾圧に対して人びとの権利のために声を上げる海外在住の活動家や選挙で選ばれた代表を脅そうという弱腰の試みである。」

8人のうち蒙兆達を除く全員が「外国勢力との共謀」の容疑をかけられており、蒙兆達の容疑は「分離の扇動」だけである。羅冠聡も「分離の扇動」の容疑、袁弓夷は「転覆活動」、許智峯は「分離の扇動」と「転覆活動」の容疑をかけられている。警察は8人のうち数人が政府高官に対する制裁を呼びかけたと告発した。また許智峯は海外での活動続行を推奨する2021年香港憲章を提案したこと、袁弓夷は香港の亡命議会を組織したことで告発された。

警察は、そのような平和的活動はすべて「香港の独立を提唱する」ための企てだと主張している。扇動は10年の刑、「共謀」と「転覆活動」は最大で終身刑に処せられる。

違法とされるこれらの活動は、香港の事実上の憲法である香港基本法と、「市民的及び政治的権利に関する国際規約」を取り入れた香港権利章典条例に含まれる人権保障規定のもとで保護されるべきである。しかし中国政府は2020年6月30日、きわめて厳格な国家安全維持法(国安法)を香港へ導入し、中国・香港両政府はこれらの保護規定を廃止した。

さらに香港警察は、国安法が香港と中国の外でも適用されると定める同法第38条を引用し、8人の海外での訴追を試みようと意図していることを示した。香港警察はまた、オーストラリア、英国、米国で暮らしている、またはそこで庇護を申請した8人を逮捕するために中国政府が国際刑事警察機構(インターポール)に支援を求めることができるとも述べた。中国政府は近年、インターポールなどの機関を操ることで情報を統制し世界各地にいる活動家を脅す努力を強めている。

逮捕令状は8人の活動家とその所属団体を孤立させる意図で出されたようでもある。香港警察は一般市民に対し、8人とその所属団体に資金を提供しないよう警告し、そうすることが国安法に違反すると示唆した。

この3年間で、中国と香港の当局は活気のあった香港の権利や自由を取り消してきた。当局は香港の民主化リーダーたちを恣意的に逮捕、訴追してきた。香港政府関係者は市民社会団体や独立した労働組合を解体し、もっとも人気のあった民主派新聞を廃刊させ、報道の自由を抑圧し、映画を検閲し、「愛国的教育」を強要している。

香港政府はまた、図書館や学校から本を除去し、「国安ホットライン」を設置して密告を奨励し、その他の方法を使って市民を脅そうとしてきた。もっとも最近閉鎖されたメディアは民主派のラジオ局「民間電台」で、18年間放送した同局は6月30日に閉鎖を発表した。

当局は2020年以来、香港の主権が英国から中国に移譲された日を記念する7月1日など、香港の民主化運動にとって重要な記念日に集会を開く許可を出していない。

中国政府が国安法を施行して以降、警察のデータによれば同法に違反したとして15歳から90歳までの260人が逮捕された。ソーシャルメディア上に平和的なコメントを投稿したり政府に批判的な本を出版したりしたために数十人が「扇動」容疑で逮捕、訴追され、有罪判決を宣告された。

中国政府による取り締まり以降、10万人以上の香港人が外国に移住した。多くは英国に行った。海外在住の香港人は世界各地で、市民団体や活動家による運動、そして多くの抗議行動を組織してきた。彼らはまた、香港での人権侵害について中国・香港両政府の高官の責任追及をするよう、諸外国政府にいっそう圧力をかけている。

諸外国政府は、香港内外での香港人に対する中国政府による国際的な脅迫作戦について反対の声を上げるべきである。諸外国政府は、上述の8人の訴追を含む深刻な人権侵害に関わる政府関係者に標的制裁を科すべきである。また、中国政府による国境を越えた弾圧からこの8人やその他の人たちを守るために効果的な措置を取るべきである。

「香港政府が亡命した8人の香港人を指名手配し懸賞金をかけたことは、海外在住者による政治活動の重要性が増していることを反映している」と王松蓮は述べた。「諸外国政府は国安法に基づく訴追への協力を公然と拒むだけでなく、中国・香港両政府の高官の責任を追及するために具体的な行動を取るべきである。」

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