本日、著名な政治評論家であり人権活動家でもあったケム・レイ氏が不法殺害されてから5年目を迎えるにあたって本声明に共同署名した45団体は、独立し、公正かつ実効的な当該事件の捜査任務を負う調査委員会の設置を、カンボジア当局に対し再度要請した。
今日まで、カンボジア政府はケム・レイ氏および遺族のために法の裁きを一貫して実現しないでいる。
市民社会や野党への攻撃が激化していた最中の2016年7月10日、ケム・レイ氏はプノンペン中心部にあるガソリンスタンドのカフェで射殺された。
警察は、殺害現場から逃亡したエース・アン(Oeuth Ang)を逮捕。彼は不可解にも「Choub Samlab」または「Meet to Kill」と名乗っていた。警察によると、この被疑者が殺害を「自白」し、動機はケム・レイ氏が3000米ドルの借金を彼に返済していないからとされていた。が、ケム・レイ氏の妻も被疑者の妻もそうした金銭の貸し借りはなかったと主張している。
2017年3月23日、半日の審理の後、プノンペン都裁判所はオース・アンをケム・レイ氏殺害で有罪とし、終身刑を宣告した。今日まで、はたして共犯者はいなかったのかを立証するための、独立して公正かつ実質的な捜査は行われていない。2019年5月24日、カンボジア最高裁判所は、刑罰の軽減を求めたオース・アンの上訴を棄却し、終身刑判決を支持した。
国際法律家委員会(ICJ)、アムネスティ・インターナショナルおよびヒューマン・ライツ・ウォッチは、これまで十分に捜査されず、公判でも相当に取り扱われていない当該事件の重要側面について強調してきた。こうした不備に対応しないでいるということは、事件に関与した共犯者の可能性をめぐる情報収集といった包括的な事件の捜査ではなく、早急な有罪判決の確保が検察の優先するところだったのではないか、という懸念が深まる。
これらの不備を考察すると、カンボジアも締約国である「市民的および政治的権利に関する国際規約(ICCPR)」および改訂版「潜在的に違法な死の調査に関するミネソタ議定書」(2016年)が義務付ける徹底的かつ独立して公平な、または実効的な捜査が実施されたと確信をもって述べることはできない。
ICCPRに従い、カンボジアは違法だと疑われるすべての死を迅速かつ独立して公平かつ実効的に捜査する義務がある。捜査では直接の加害者だけでなく、ケム・レイ氏の死亡に関連した犯罪行為の責任を負う可能性のあるすべての個人の特定を模索すべきだ。
背景
裁判で相当な取り扱いがされなかった不備には次のものが含まれる:オース・アンによる銃撃につながったとされているケム・レイ氏の3,000米ドルの未返済の借金に関する信じがたい説明;被告人が自らの話を裏づけるために指名した証人の聞き取りがなされなかったこと;事件を映像にとらえた可能性が高いガソリンスタンドに複数あるCCTVカメラのうち、わずか1つのみからの映像が法廷で使われたこと;銃撃の前にケム・レイ氏と一緒に座っているところを目撃された男の身元を捜査官らが特定しようとしなかったこと;被告人が犯罪現場から逃げようとした際に、発砲してきたと主張する個人を捜査官ら特定しようとしなかったこと;捜査官らが凶器を販売したとされる個人の所在を特定して、聞き取り捜査をしようとしなかったこと;捜査官らが被告人のバックグランドや軍との関係の可能性を捜査しなかったこと;明らかに武装している個人を含む複数名が、被告人が犯罪現場から逃げようとした際に彼を追跡した映像にのこっていたが、そのことが説明されずにいること
現代カンボジアの人権記録は不処罰に蝕まれてきた。2017年にICJが発表した報告書は、カンボジアにおける説明責任の欠如が司法制度を政府が事実上掌握していることと密接に関係していると強調している。
ケム・レイ氏が殺害されて5年目の本日、私たちは彼のために法の裁きが実現されることを強く求める。
Signed:
- Amnesty International
- Article 19
- ASEAN Parliamentarians for Human Rights (APHR)
- Asian Democracy Network (ADN)
- Asian Forum for Human Rights and Development (FORUM-ASIA)
- Asian Network for Free Elections (ANFREL)
- Building and Wood Workers Trade Union Federation of Cambodia (BWTUC)
- Cambodian Alliance of Trade Unions (CATU)
- Cambodian Center for Human Rights (CCHR)
- Cambodian Food and Service Workers Federation (CFSWF)
- Cambodian Human Rights Action Coalition (CHRAC)
- Cambodian Human Rights and Development Association (ADHOC)
- Cambodian Informal Economic Workers Association (CIWA)
- Cambodia Informal Economy Reinforce Association (CIERA)
- Cambodian Institute for Democracy (CID)
- Cambodian League for the Promotion and Defense of Human Rights (LICADHO)
- Cambodian Tourism Workers Union Federation (CTWUF)
- Cambodian Youth Network Association (CYN)
- Cambodia's Independent Civil Servants Association (CICA)
- Center for Alliance of Labor and Human Rights (CENTRAL)
- Centre for Civil and Political Rights (CCPR Centre)
- CIVICUS: World Alliance for Citizen Participation
- Civil Rights Defenders
- Coalition for Integrity and Social Accountability (CISA)
- Coalition of Cambodian Apparel Workers’ Democratic Union (C.CAWDU)
- Coalition of Cambodian Farmers Community (CCFC)
- Committee for Free and Fair Elections in Cambodia (COMFREL)
- Equitable Cambodia
- Free Independent Trade Union Federation (FUFI)
- Human Rights Watch
- Independent Democracy of Informal Economy Association (IDEA)
- Independent Trade Union Federation (INTUFE)
- Initiativ Kambodja
- International Commission of Jurists
- International Federation for Human Rights (FIDH), within the framework of the Observatory for the Protection of Human Rights Defenders
- Labour Right Supported Union Khmer Employee of Nagaworld (L.R.S.U)
- Lawyers’ Rights Watch Canada (LRWC)
- Mother Nature Cambodia
- Not1More (N1M)
- People Center for Development and Peace (PDP-CENTER)
- The Affiliated Network for Social Accountability (ANSA) Cambodia
- Transparency International Cambodia (TI-C)
- Union Coalition of Labor (UCL)
- World Organization Against Torture (OMCT), within the framework of the Observatory for the Protection of Human Rights Defenders
- Youth Resource Development Program (YRDP)