A member of the Afghan security forces stands at the site of a truck bomb attack in Kabul, May 31, 2017.

© 2017 Shah Marai/AFP/Getty Images
 

国際刑事裁判所(ICC)がアフガニスタンでの捜査開始を認める決定をしたことは残虐行為の被害者たちに裁判を受ける希望を与える、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。ICCの上訴裁判部の判事は2020年3月5日、タリバン、アフガン国家治安部隊、米軍、米中央情報局(CIA)に対する犯罪容疑の捜査を求めたICC検察官の申立を全員一致で認めた

ICC加盟国は、米国などこの決定に反対する国々からの政治的圧力に対しICC の独立を改めて支持するべきである。

「米国政府などからの圧力があったにもかかわらずICCがアフガニスタンでの残虐行為容疑についての捜査開始を認めたことは、裁判を受けられるあてがない被害者たちにとってICCが非常に重要な役割を果たすことを改めて示す」とヒューマン・ライツ・ウォッチの国際司法プログラムの副ディレクター、パラム=プリート・シンは述べた。「この決定は、今この瞬間に残虐行為を行っている者、あるいは将来する可能性のある者たちに、いかなる権力者であろうといつか法の裁きを受ける可能性があるというメッセージだ」。

ICCの予審裁判部は2019年4月に捜査開始を求める検察官の申立を認めない決定をしたが、これに対し検察官が異議を申し立て、今回の決定となった。予審裁は、「アフガニスタンの背景を取り巻く」政治情勢が「一触即発である」ことなどの要因により成功の見込みが少ないことや、関係諸国の十分な協力を得られない可能性などを理由に、捜査が「正義にかなう(interests of justice)」ものにならないと判断していた。米国政府は以前、アフガニスタンでの状況を捜査するかもしれないことについて、ICCとその加盟国に報復措置を取ると脅したことがあり、ICC検察官のファトゥ・ベンスーダへのビザ発給制限の措置をとった

ヒューマン・ライツ・ウォッチは11月に他の8つの非政府団体と共同で、「正義にかなう」かの問題などについての予審裁の分析に不備があったとする意見書をICCに提出した。上訴裁は、予審裁は正義にかなうか検討した点では誤っていたものの、捜査開始に必要な事実調査はすべて行っていたと判断した。

今回の決定で上訴裁は、2003年5月1日以降にアフガニスタンで行われた犯罪容疑と、2002年7月以降にそれ以外のICC加盟国で犯されたアフガニスタンでの武力紛争と関連がありアフガニスタンの状況と十分なつながりのある犯罪容疑についての捜査開始を認めた。アフガニスタンは2003年5月1日からICCの加盟国である。

ICC検察官は2017年11月に出した要請で、ポーランド、ルーマニア、リトアニアにあるCIAの収容所でも犯罪が犯されたと主張した。三カ国はすべてICC加盟国である。ヒューマン・ライツ・ウォッチは最近発表した報告書で、2017年末から2019年半ばにかけてCIAが支援するアフガン勢力が略式処刑などの重大な侵害行為をしながらも処罰を受けていないことを明らかにした。これらの行為にもICCの管轄権が及ぶ可能性がある。

米国はICC加盟国ではないが、ICC容疑者2人のハーグへの移送にきわめて重要な役割を果たしたことがある。ローマ規程のもと、ICCは加盟国の領土内で行われた犯罪すべてについて、加害者の国籍を問わず管轄権を持つ。ICCは国家の刑事裁判権を補完する裁判所であり、今回アフガニスタンについて検察官が明らかにしたように、各国政府当局が誠実に刑事責任を追及しない場合にのみ介入することができる。

マイケル・ポンペオ米国務長官は2019年3月、一部のICC関係者にビザを発給しない政策を発表した際に、ICCが捜査に踏み切れば経済制裁を含むさらなる措置を取る用意があると述べた。3月5日の決定後に行われた記者会見でポンペオ国務長官は、米国は数週間内に対応を発表すると述べた。ICC加盟国は、トランプ政権の脅し戦術に対してICCの独立を支持する声を強めるべきである、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

アフガニスタンでは、国内の勢力であるタリバン、アフガニスタン政府、その他のアフガン政治指導者らによる和平交渉が3月10日から始まる予定になっている。この交渉では恒久平和を推進するために人権と公正な裁きを優先事項とするべきである、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。アフガニスタンその他の紛争状況についてヒューマン・ライツ・ウォッチが行った調査によれば、重大な国際犯罪について責任追及が行われないと、平和を達成する努力に長期的な悪影響を及ぼす可能性がある。

「これまでの政権移行の際に指導者たちが戦争犯罪を訴追しなかったため、アフガニスタンの人びとは高い代償を払ってきた」とシンは述べた。「ICCの今回の決定は、アフガニスタンの残虐行為の被害者たちに今度こそ裁きが行われるかもしれないという希望を与える」。

四十年以上も戦火に苦しんできたアフガニスタンの人々であるが、なかでも被害者、そして被害者支援NGOが、ICCが訴追できる事件の数について過大な期待を抱く可能性がある。ICCの権限・使命を明確にしなければ、ICCの役割を故意に歪めて伝えたり政治化したりしようとする動きが助長される恐れがある。その結果、被害者や証人が情報を捜査官と共有することをためらう可能性がある。

そのようなリスクを軽減するため、ICCは捜査の限界も含めてその内容や範囲を説明する手段を講じるべきである、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

ICCによる捜査は前途多難である。アフガニスタンの治安の悪さ、そして法の裁きを困難にしている政治情勢ゆえに、ICCによる捜査の必要性は高いが、それゆえにICCによる証拠収集は困難だ。警察組織を持たないICCは捜査、逮捕、訴追について加盟国、特にアフガニスタン政府の協力に頼らなければならない。

「アフガニスタン政府や他のICC加盟国は検察官の捜査に協力することを表明するべきである」と前述のシン副ディレクターは述べた。「ICCの独立に対する幅広い支持は、捜査の成功のために、そして、被害者が切望している公正な裁きの実現のために、極めて重要だ」。