2020年2月13日

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内閣総理大臣     安倍晋三殿

北朝鮮人権問題に関する日本政府の近時の関与低下に関する公開書簡

 

内閣総理大臣 安倍晋三殿

国連人権理事会の3月の会期に先立ち、54の非政府組織、連合体、および関係する個人を代表し、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)における人権問題について日本政府が最近関与を弱めていることについて、書簡を差し上げる次第です。

まず私どもは、日本政府が、安倍総理のリーダーシップのもと、2013年の北朝鮮人権状況国連調査委員会の設置決議や、その調査結果受入れに関する決議など、国連人権理事会における北朝鮮決議の主提案国として果たしてきた重要な役割を認識しております。調査委員会は、北朝鮮政府が同国民への人道に対する罪(超法規的処刑、拷問、組織的なレイプなどの残虐行為)を多数犯したことに加えて、日本人を含む外国人に対しても過去において拉致などの犯罪を行ったと結論づけました。

日本政府のリーダーシップの後押しを受けて、2014年から2017年にかけて国連安全保障理事会で北朝鮮の人権状況について討論がおこなわれるなど、北朝鮮政府に対する前例のない国際的圧力が維持されました。国連で北朝鮮への注目が集まったことで、北朝鮮での人権侵害と、地域および世界の平和と安全保障との間の密接なつながりも、ある程度焦点化され、北朝鮮政府に対して、国連メカニズムと協力し、拉致問題を含めた人権問題を解決するようにとの圧力が改めてかかりました。こうした事態の前向きな進展は、安倍総理のリーダーシップと日本政府の尽力なしには実現できないものでした。

こうした経緯を踏まえますと、私どもは昨年2019年、日本政府が人権理事会における北朝鮮人権決議案の共同提出を見送るとの決定に大いに当惑しました。菅官房長官は2019年3月、「(2月末の)米朝首脳会談の結果や、拉致問題などを取り巻く諸情勢を総合的に検討した結果」、政府として方針を変更したと述べるとともに、北朝鮮の人権状況の改善を追求していくことは変わらないとも付け加えました。同日付の朝日新聞は、日本政府関係者の発言を引用するかたちで「『人権について国際社会から批判されることを北朝鮮は嫌がっている』と説明。非難決議案の見送りは『北朝鮮の態度を変えるため、試す価値がある』と話した」と報じています。また総理は2019年5月に、北朝鮮の最高指導者の金正恩・朝鮮労働党委員長に前提条件を設けずに直接向き合うと表明し、拉致問題に進展がなければ首脳会談は行わないという従来の方針を転換されました。

北朝鮮政府は、国内人権状況の批判に対し、敵対的な反応をすることが多いことは、私どもも承知しています。しかし、金正恩政権への圧力を和らげても、人権状況の改善や拉致問題の解決が実現する見込みはありません。むしろ白旗は、北朝鮮の虚勢に助け船を出すことになります。代償を払うことなく人権侵害を継続できるというメッセージを送ってしまうのです。

対話と公的な人権批判は排他的な関係にはありません。私どもは、北朝鮮の人権問題を提起し続けることは、日本人拉致問題の解決を進展させるため実際上不可欠だと考えます。国連調査委員会がしたように、拉致を残虐行為と示すことで、日本政府は北朝鮮政府に対し、自国の行為に向き合うよう説得できます。調査委員会報告書に対する北朝鮮政府の反応は、金正恩委員長が自国政府の人権状況の報告にきわめて敏感であること、また同氏に批判を受け止めさせるには、そうした圧力の継続がきわめて重要であることの証左です。対照的に、国際的な圧力が和らいでいることで、北朝鮮政府は、あの劣悪な自国の人権状況を改善しないことで負う政治的コストが緩和されています。

また、国際社会の関心事である朝鮮半島の非核化実現には、人権面での進展が当然必要です。外交政策専門家や宗教指導者、人権活動家がたびたび指摘しているように、人権と武器不拡散への取り組みは密接不可分であるからです。

北朝鮮の人権状況に関する国連特別報告者であるトマス・オヘア・キンタナ氏は2019年10月24日、国連総会で発言し、各国政府に対し、交渉では人権問題を棚上げすることなく、北朝鮮との建設的な対話の道を探ることを求めました。氏は「基本的人権を現在の交渉に統合することは、朝鮮半島とそれを超えた地域に非核化と平和をもたらす、あらゆる合意を持続させるうえできわめて重要である」ことに留意しました。

私どももまったく同意見です。

私どもは安倍総理に対し、近時の方針を修正し、北朝鮮に関する今年の国連人権理事会決議には主提案国として戻るとともに、同国政府との交渉で人権問題にプライオリティを置いて、日本がこれまでとってきた北朝鮮に関する人権重視外交を再び高く掲げるよう、強く要請する次第です。

本件についてご検討いただきますようお願いいたします。また総理スタッフと詳しく協議する場をいただければ幸いです。

 

敬具

 

署名団体と個人 (2020213日時点)

(個人海外:7) alphabetical order

David Alton (Independent Crossbench Member of the House of Lords)

Sonja Biserko      (Former Commission of Inquiry (COI) member on the situation of human rights in the DPRK & current chair at the Helsinki Human Rights Committee in Serbia)

Marzuki Darusman (Former UN Special Rapporteur/Commission on Inquiry (COI) member on the situation of human rights in the DPRK)

Yanghee Lee (UN Special Rapporteur on the situation of human rights in Myanmar / Former Chairperson of UN Committee on the Rights of the Child)

Vitit Muntarbhorn (Professor Emeritus; former UN Special Rapporteur on the situation of  human rights in the DPRK)

Sir Geoffrey Nice QC

Tomas Ojea Quintana       (UN Special Rapporteur on the situation of human rights in North Korea)

 

(国内団体&個人:14) 五十音順

アジア調査機構

天目石要一郎 (武蔵村山市議会議員)

川崎栄子 (一般社団法人アクション・フォー・コリア・ユナイテッド 代表理事)

北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会

北朝鮮人権人道ネットワーク

北朝鮮難民救援基金

北朝鮮に拉致された日本人を救出する埼玉の会 

北朝鮮に拉致された日本人を救出する宮崎の会 

北朝鮮に拉致された日本人を救う神奈川の会 

北朝鮮の強制収容所をなくすアクションの会

黒坂 真 (大阪経済大学教授)

庄内ブルーリボンの会 

特定失踪者問題調査会 (COMJAN)

増元照明 (前拉致被害者家族連絡会事務局長)

 

(海外団体:33) alphabetical order

ALTSEAN-BURMA

Asia Justice and Rights

Association for the Rescue of North Korea Abductees (ARNKA)

Centro para la Apertura y el Desarrollo de América Latina

Citizens' Alliance for North Korean Human Rights

CIVICUS

Christian Solidarity Worldwide

Committee for Human Rights in North Korea

FIDH - International Federation for Human Rights

Health and Human Rights Info

Human Rights Concern-Eritrea

Human Rights Without Frontiers International

Improving North Korean Human Rights Center

International Child Rights Center

International Coalition to Stop Crimes against Humanity in North Korea

International Solidarity for Freedom of Information in North Korea

Jacob Blaustein Institute for the Advancement of Human Rights

Lawyers for Human Rights and Unification of Korea

Liberty in North Korea

North Korea Freedom Coalition

Now Action & Unity for Human Rights

Network for North Korean Democracy and Human Rights

No Chain

North Korea Strategy Center

1969 KAL Abductees' Families Association

Open North Korea

People for successful COrean REunification

Robert F. Kennedy Human Rights

Southern African Centre for the Constructive Resolution of Disputes

Transitional Justice Working Group

Unification Academy

Unification Media Group

Unification Strategy Institution

 

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外務省  外務大臣 茂木敏充殿

 

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東京都千代田区永田町1-6-1

内閣官房 拉致問題担当大臣 菅義偉殿