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南アフリカ:セックスワークの非犯罪化を

犯罪化は、女性を傷つけ、HIV流行を助長する

(ヨハネスブルグ)― 南アフリカ政府当局は、セックスワークを犯罪として扱うことにより、女性の安全と福祉を危険にさらし、HIVの流行を食い止める努力を妨害していると、ヒューマン・ライツ・ウォッチとSWEAT(セックスワーカーの教育とアドボカシー・タスクフォース)は、本日発表された報告書で述べた。南アフリカは、成人間の同意に基づく金銭と性行為の交換を非犯罪化すべきである。

「南アフリカのセックスワーカーは、逮捕や拘禁、嫌がらせ、虐待などを警察から受けており、レイプやその他の残酷な被害を届け出ることもままならない」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの副ディレクター(プログラム担当)を務めるリーズル・ゲルントホルツは述べた。「世界各地で、私たちヒューマン・ライツ・ウォッチなどの人権団体は、セックスワークが犯罪化されている場所では、同様の人権侵害が起きていることを明らかにしてきた。」

Sex workers wearing masks lead a march to mark International Sex Workers Rights Day in Johannesburg March 3, 2011

How criminalization affects those who sell sex to survive.

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今回の報告書『南アフリカでセックスワークを非犯罪化すべき理由』(全70頁)は、南アフリカのセックスワーカーが経験する暴力とともに、犯罪被害を申告し、安全な職場を作ることの難しさを詳しく記している。セックスワーカーからは、警察には性的に搾取され、役人からは賄賂を強要されるとの訴えもあった。

「南アフリカ政府は、法律改正の機会をこれまで逸してきた」と、SWEATの人権問題担当ノシポ・ヴィディマ(Nosipho Vidima)は述べた。「セックスワーカーは司法省に対し、セックスワークの非犯罪化のため、直ちに行動することを求めている。」

報告書を執筆した調査員は、セックスワーカーの女性46人にインタビューした。うち43人がシングルマザーで、多くが3人以上の生活を支えていた。女性以外のジェンダー・アイデンティティをもつセックスワーカーも暴力を経験しているが、南アフリカのセックスワーカーの大半は女性だ。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、保健や法律、セックスワーカーの権利にかかわる政府職員と政府外の専門家35人超からも話を聞いた。

セックスワーカーは、恣意的拘束と警察のプロファイリングに頻繁に直面していることを詳しく述べた。警察の嫌がらせを避けるため、暗い公園、奥まった茂み、安全とは思えない町の裏道などの危険な場所で働かざるをえなかったとのことだ。さらに、拘束や嫌がらせを恐れ、犯罪被害を届け出ないことが多いことも話題に上った。警察からあざ笑われ、責められ、あるいは放置されるかもしれないとの恐怖心から、被害届けを出さなかった人もいた。

「今年になって3回逮捕されました(…)。1回は留置場で一夜を明かしましたが、あと2回は罰金や賄賂を払って出てきました」と、リンポポ州マハドのセックスワーカーのロフィワ・ムリロさん(仮名)は話してくれた。「警察に被害を届け出ることはありえません。たとえ武装強盗に遭ったとしても、問題は変わりません。警察がまともにとりあってくれないのです。そいつに売ろうとしているのだろう、と言われるだけです。」

インタビューを受けた人の多くは、客を装った男にレイプされたことがあり、ほぼ全員が強盗や暴行、鞭打ち、刃物で刺されるなどの深刻な暴力を経験している。マハドで生活するセックスワーカーで、2人の幼い子どもの母親であるザンディレ・マクヤアさんは、2017年にレイプされ、暴行犯から電気コードでぶたれた傷跡が、腕と胸に残っている。「もし私がセックスワーカーではなかったら、[警察に犯罪を]届け出たでしょう」と、マクヤアさんは言う。

セックスワーカーたちは、自分が住む街の人びとからさまざまなかたちで非難されており、嫌がらせを受けることもあったと述べた。

© 2019 Rebecca Hendin for Human Rights Watch

報告書は、さまざまな行政機関によるセックスワークへのアプローチとセックスワーカー向けサービスが整合性をひどく欠いていることも明らかにした。最も顕著な隔たりは、セックスワーカーのヘルスケア・アクセス支援に取り組む保健省と、懲罰的なアプローチをとる刑事司法制度とのあいだにある。

南アフリカは世界で最もHIVが流行しており、世界のHIV患者・感染者のうち19%が住む。世界最大の治療プログラムも実施されており、政府の資金拠出割合は80%だ。HIVの流行がセックスワーカーとその客、パートナー、子どもにより深刻な影響を与えていることを受け、保健省は、官民双方のパートナー組織とともに、HIVに関するセックスワーカーのための国家戦略計画を策定した。世界保健機関(WHO)と国連合同エイズ計画(UNAIDS)のガイダンスに従い、南アフリカの保健当局は、少なくとも2007年からセックスワークの非犯罪化を求めている。

インタビューを受けた医療従事者とヘルスケアの権利に関する活動家は、犯罪化のせいでセックスワーカーに関するHIV感染の予防・治療の取り組みが進んでいないと指摘した。セックスワーカー向けサービスを行う診療所のアウトリーチ担当スタッフが逮捕される一方、警察がコンドームの所持を売春の証拠にするため、セックスワーカーはコンドームを持つことをためらってしまう。逮捕や拘禁に遭ったため、必要不可欠なHIV治療の中断を余儀なくされたと話すセックスワーカーもいた。

「セックスワークに関する南アフリカの法律は、女性に対する暴力の高い発生率を下げ、セックスワーカーのHIV感染率を減らそうとする、政府自身の取り組みを阻害するものだ」とゲルントホルツは指摘した。

司法憲法開発省には、自発的で合意に基づく成人のセックスワークに対する刑事・行政処分を廃止し、労働法の保護の下で働く権利を含む、セックスワーカーの憲法上の権利を保障する新たな法律を、議会に提案することが求められる。

南アフリカ当局はまた、セックスワーカーを犯罪者とし、嫌がらせをするために用いられてきた、故意徘徊罪などの犯罪を定めた、過度に曖昧な法律や細則を改正あるいは廃止すべきだ。南アフリカ警察には、警官によるセックスワーカーへの性的搾取、強要、嫌がらせなどの人権侵害行為を調査するとともに、新たな法律が成立するまでセックスワーカーの逮捕についてモラトリアムを実施することが求められる。

セックスワークに従事する人びとには、他のすべての人と同じ権利と自由を享受する権利がある。犯罪化により、セックスワーカーは基本的権利が日常的に侵害され、法による平等な保護を受けることができないでいる。

同意した成人間での性行為の売買を犯罪化することは、暴力などの人権侵害が容認される状況を作り出すと、ヒューマン・ライツ・ウォッチと前出のSWEATは指摘する。セックスワークの非犯罪化は、セックスワーカーにとってより安全な労働条件を作り出し、セックスワーカーの保護と尊厳を最大化するものである。

「南アフリカのセックスワーカーには、尊厳を持って暮らし、恐れも恥も感じずに家族を養う権利がある」と前出のヴィディマは述べた。「セックスワークの非犯罪化は、それを実現するための明確な道筋である。」

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