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ブルキナファソ:サヘル地域の紛争で横行する殺人などの人権侵害

昼間は政府軍を恐れ、夜間はジハードを恐れる日々

People converge on market day in Djibo, in the Soum Province of Burkina Faso’s Sahel administrative region. The majority of attacks by armed Islamist groups active in Burkina Faso have been on villages in the Soum Province.  © 2010 Irene Abdou / Alamy Stock Photo

(ナイロビ)- ブルキナファソのイスラム至上主義武装勢力が、政府の協力者とみなした人びとを処刑したり教師を威嚇して、全土を恐怖におとしいれている、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表の報告書内で述べた。これに対抗して、治安部隊も2017年と2018年に反テロ作戦を展開。超法規的殺人など拘束中の容疑者への人権侵害、恣意的逮捕などが起きている。ブルキナファソ政府はこれら事件を捜査すると公約してきた。

報告書「『日中は政府軍を恐れ、夜間はジハード部隊を恐れる日々』:ブルキナファソのイスラム至上主義武装勢力と政府治安部隊による人権侵害」(全60ページ)は、サヘル地域の住民が直面する殺人と嫌がらせを調査・検証したもの。村人たちは政府協力者を処刑すると脅すイスラム系武装勢力と、武装勢力に関する提供を要求し、協力を拒めば連座で処罰を下す国家治安部隊の間で板挟み状態になっている。本報告書はまた、首都ワガドゥグで2016年と2017年に起きたイスラム系武装勢力による残虐な攻撃にも焦点を当てるとともに、政府部隊による拘束中の容疑者への人権侵害についてもまとめた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのサヘル地域代表コリーン・ダフカは、「ブルキナファソで治安が不安定化し、イスラム至上主義武装勢力と国家治安部隊の双方による重大な犯罪がおきている」と指摘する。「政府は治安部隊による人権侵害疑惑を捜査するという重要な約束を堅持すべきだ。イスラム系武装勢力は一般市民の攻撃や威嚇を止めるべきだ。」

2016年初めに、Ansaroul Islam、イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)とその関連組織、大サハラのイスラミックステート(ISGS)などのイスラム系武装勢力が、ブルキナファソ北部と首都ワガドゥグの軍基地、警察署、国家憲兵の駐屯所、そして一般市民および民用物を攻撃。これにより多数の犠牲者を出し、1万2000人が避難民となった。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは2018年2月と3月に被害者や目撃者、司法省・防衛省・教育省関係者、教師、保険医療従事者、地方政府関係者、外交官、人道支援スタッフ、治安アナリスト、宗教・地域指導者など67人に聞き取り調査を実施。本報告書で取り上げた人権侵害は、2016年〜18年にかけて、サヘル北部の行政地域とワガドゥグで起きたものだ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、イスラム系武装勢力が12村で男性19人を処刑方式で殺害したケースを調査・検証。武装勢力は、村長や地方政府関係者などを、治安部隊に情報を提供していたと非難して処刑方式の殺害を行った。

目撃者のひとりによると、武装したイスラム至上主義者らが今年2月に、ジーボ付近で2人の高齢男性を連れ去った。2人の遺体は喉をかき切られた状態で数日後に発見されている。もう1人の目撃者は、今年4月にクトゥグ・コミューン(Koutougou Commune)市長が殺害されたことについて詳述。この事件ではのちにISGSが犯行声明を出している。ある男性は怯えながら、イスラム至上主義者らに狙われていたと証言した。彼の親族数名がすでにこれらの人物の手で殺されたという。「夜間の使用が禁止されているバイクの音が聞こえたので、彼らだとわかりました」と語る。「銃声が聞こえ、殺害された人たちが見えました。」

イスラム系武装勢力は、2016年と2017年にワガドゥグの2回の攻撃でも47人の一般市民を殺害した。2016年の攻撃で生き残ったあるウェイターは、「出勤してくるたびに死者が見えます[中略]私はあの日を繰り返し生きているんです。」

教育関係者たちは、教師の拉致や学校長の殺害など、学校や教師に対する威嚇と攻撃について詳述した。ある教師は「メッセージははっきりしています。フランス語で教えるな、もし抵抗すればお前を殺す、です」と語る。脅迫の結果200校超が閉鎖されたため、2万人を超える生徒が通学できなくなった。

目撃者たちの証言は、少なくとも14件の略式処刑に治安部隊が関与している疑いを示唆する内容だ。ほか4人の男性が被拘禁下で深刻な虐待をうけ死亡したとも話す。事件に関係したとみられるのは、兵士および憲兵、関係性は低いが警察部隊などだ。

ブルキナファソ北部の道路や歩道沿いで、目隠しされ、手を縛られた複数の死体を目撃したと多くの人が詳述した。犠牲者の大部分が、政府の治安部隊に身柄を拘束されたのを最後、消息を絶った。

これらのケースには、2017年12月下旬の陸軍による作戦で拘束され、翌日射殺された2人の兄弟をはじめとする8人の男性の事件も含まれる。2017年9月には、ジーボに駐屯する憲兵が地元政府関係者1人に出頭を命じ、翌日彼は遺体となって発見された。2018年3月には、ナッスーンブー(Nassoumbou)市場で兵士が地元の貿易商を逮捕。「銃声が聞こえて、翌日彼の遺体を発見しました。うつ伏せで目隠しされた状態でした」と目撃者の1人が証言している。

治安部隊はイスラム系武装勢力の攻撃時に居合わせた男性たちを手当たり次第拘禁しているようにみえると地元の指導者たちは口をそろえる。その大半は初期捜査の段階で釈放されているが、ひどい暴力を受けることが多く、4人が拘禁下で死亡している。証言者たちによると、2月初旬、知的障がいを持つ男性1人を含む2人が警察官と兵士にバラブレ(Baraboulé)近くで拘禁されたうえ、暴行を受け死亡した。医療関係者は、男性たちが拘禁中に負った切り傷や血腫、裂傷などをこれまで治療してきたと語る。

イスラム系武装勢力と政府軍は、一般市民と被拘禁者に対する人権侵害および威嚇行為を停止しなければならない。政府は重大な人権侵害に関与したとされる治安部隊隊員を捜査・訴追すべきだ。また、ブルキナファソの関係国・組織は、プライベートな場でも公の場でも、迅速かつ信頼にたる捜査を強く求める必要がある。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは5月9日付で、ブルキナファソ政府に対し本報告書の主な結論と勧告を詳述した書簡を送付。5月15日、ジャン・クロード・ブダ国防相は同国の人権尊重を約束しヒューマン・ライツ・ウォッチの勧告を実行したいと書簡で回答した。

国防相の書簡には、「政府は、列挙されていたケースすべてについて、これまで認識はなかったものの、必ず捜査を実行すると約束する」と記されていた。また、政府はブルキナファソ北部で展開中の対テロ作戦中に一般市民に対して行われたとされる人権侵害疑惑の一部をすでに認識しており、本文調査結果を受けて「即時行動」すると述べた。

政府の約束は明るいニュースだが、政府は包括的かつ透明性のある方法で約束を実行すべきだ。

ダフカ代表は、「治安の名の下に容疑者を殺害・虐待するやり方は、国内不安を増進させ、深めるだけだ」と指摘する。「ブルキナファソ政府は人権侵害疑惑を捜査するという約束をしっかりと守り、今後繰り返さないための具体的な措置を講じなければならない。」

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