(ニューヨーク)- 米医療関係者団体は、インターセックス(半陰陽)の子どもが、同意できる年齢に達する前に医学上不要な外科手術がなされないよう、対応基準を定める必要がある、とヒューマン・ライツ・ウォッチとインターアクトが本日発表の報告書内で述べた。こうした処置について数十年にわたり医学界では論争が続けられてきたが、統一基準がない。そのため、子どもが意思決定に参加するには幼すぎるうちから、生殖腺や内性器、外性器の外科手術を行う医師が後を絶たない。こうした手術はリスクを伴い、かつ、延期しても身体には害がない。

報告書「変わりゆくパラダイム:インターセックス対応についての米医療関係者の懸念」(全41ページ)は、医学界内のこうした手術に関する論争、および手術の選択をせまられる親への圧力について調査・検証したもの。

"Justice for Intersex Kids" - interACT

© 2017 interACT

かつては「hermaphrodite(両性具有)」(現在は軽蔑的で古い言葉とされている)と呼ばれたインターセックスはけっして珍しいものではないが、必要な対応については広く誤解されている。1960年代に普及した医学理論に基づいて、医師は「正常」に成長するためだとして、インターセックスの子ども(しばしば乳児)に外科手術を行う。結果は極めて有害であることが多く、 利点とされる点の多くは証明されていない。かつインターセックスに関し、早急かつ不可逆的な医療介入を必要とする緊急の健康問題はほとんどない。

自身がインターセックス女性であり、インターアクト代表を務めるキンバリー・ジゼルマンは、「私たちインターセックスのコミュニティは、20年前から今日までずっと同じことを言い続けている----私たちは医師に治療をしてほしい。“矯正”はいらない」と述べる。「私たちは決して、アンチ医者でもアンチ手術でもない。ただ、同意(コンセント)と誠実を求めているだけだ。とりわけ、幼すぎて意見を言えない、あるいは何が起きているかを理解できない子どもたちのために。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチとインターアクトは、本報告書を第21回インターセックスアウェアネスデーに発表。この日は、1996年にボストンで開かれた米国小児科学会で、医学的に不要な外科手術に対し初めて抗議活動が行われたことを記念している。

新生児の1.7%は、典型的に男の子や女の子と呼ばれる状態と異なる。こうした子どもの染色体、生殖腺、内性器または外性器は、社会が一般に考えるものとは違う。また非定型外性器などインターセックスの特性の一部は、出生時に明らかだ。しかし、出生時に割り当てられた性と一致しない生殖腺や染色体などは、のちに、たとえば思春期になってわかることもある。こうした子どもは手術をすることなしに、いずれかの性別として育てることができる。一方で、自らの性自認を宣言するには幼すぎるインターセックスの子どもに、外性器または生殖腺の手術をすることは、誤った性を外科的に与えてしまうリスクを伴う。

生殖腺を除去する手術は断種/不妊という結果をもたらす可能性があるうえ、生涯にわたるホルモン補充療法が必要となる。子どもの外性器の大きさや外見を変える手術は、失禁、傷あと、感覚の麻痺、および心理的外傷のリスクがある。施術は不可逆的であり、切断された神経は再生できず、瘢痕組織が将来の手術の選択肢を狭める可能性もある。インターセックスの子どもにとって、特定の外科的介入が医学的に明らかに必要不可欠なケースもあるが、米国内の外科医の一部は、まだ話すことさえままならない子どもに対してさえ、リスクを伴う医学上不要な美容外科手術を行っているのである。

医療プロトコルは進化している。複数の専門分野からなるチームが、インターセックス患者に対して「性分化の違い(Differences of Sex Development—以下DSD)」ケースとして対応することもますます増えてきている。これは1人の外科医だけと家族が会議を行うという形態と比較して、大きな進歩だ。今やほとんどの医療関係者が、親は子どもの体にメスを入れたくない、と考えている可能性を認める。まだインターセックスの子どものための統一的な対応基準は存在しないが、ヒューマン・ライツ・ウォッチの聞き取り調査に応えた専門家たちは、変化の必要性を強調していた。

ある小児外科医は、「多くの子どもが普通とは違うものを持っています」と話す。「私たちはたとえば、あらゆる種類の血管形成異常や血管腫を持つ子どもたちを診ています。そしてそんな子どもたちに、違っていてもいいのだと言っているのです。さあ外に出て、学校に行って、とてもよくやっているねと勇気づけます。子どもたちが環境に安全に適応するために、ノーマライゼーションは必ずしも必要ではありません。」

ガイドラインもいくつか生まれている。米国医師会(AMA)理事会は2016年、「生殖器の“ノーマライゼーション(正常化)”を非難するDSDコミュニティおよび医療関係者がますます増えており、DSDが生命を脅かすという稀なケースを除き、患者が意味のある形で意思決定プロセスに参加できるようになるまで、生殖器正常化手術は延期されるべきと主張している」ことを認める報告書を発行。理事会は、「命の危険という緊急介入が求められる場合を除き、(医師は)子どもが意思決定に参加できるようになるまで医療あるいは外科的介入を延期すべきである」と採択するよう勧告した。

インターセックスの当事者及びインターセックスの子どもの親のための米国最大の支援グループ「AIS-DSD」が米国医師会へ宛てた2017年の書簡には、「私たちは今後、AIS-DSDの支援活動の中心が、成人や青少年、およびその家族を、医学が引き起こしたトラウマの回復から、私たちのメンバーの身体的および精神的健康を出生から老齢期まで幅広く支援することにシフトできるよう心から願っている」 と書かれている。

3人の米公衆衛生局元長官(surgeons-general)が2017年7月、「非定型の生殖器を持ち成長することが心理社会的苦痛をもたらすという証拠は不十分」であり、「心理的ダメージを減らすために、乳児に美容外科的生殖器形成手術が必要であるという証拠はほとんどない一方で、手術そのものが深刻で不可逆的な身体的害と精神的苦痛の原因となる可能性を示す」とする論文を発表した。

2017年のインターセックスアウェアネスデーにおける声明で、“Physicians for Human Rights”は「子どもが意味のある同意をできるほどの年齢に達する前に、不可逆的かつ医学上不要な手術を行うことは、インフォームドコンセントの義務に反しており、また『ノー・ハーム』原則にも反している」と述べた。そして、子どもが意味のある形で決定に参加できる年齢になるまで、医学的に不必要な手術をしないよう強く求めた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ調査員で、本報告書を執筆したカイル・ナイトは、「医療専門組織はリーダーシップを発揮しなければならない。医師たちはそれを期待している」と指摘する。「 米国医師会や米国小児科学会ほか専門組織は、医学的必要性のある場合を除いて、インターセックスの子どもの手術は、自ら決定プロセスに参加できるようになるまで延期すべきだ、と明確に強く示す必要がある。」