(カブール、2017年10月17日) — 2001年以来、女子教育のためにアフガン政府と国際ドナーが取り組んできた試みが、近年なって大幅に後退していると、ヒューマン・ライツ・ウォッチが本日発表の報告書内で述べた。米軍主導のアフガニスタン軍事介入でタリバンを追放してから16年後の現在、少女のうち推定3分の2が学校に通っていない。
ヒューマン・ライツ・ウォッチ女性の権利局局長リーズル・ゲルントホルツは、「アフガン政府と国際ドナーは、すべての少女に教育機会を与えようと、2001年に果敢な約束をしたが、今や不安定さや貧困、国内避難で多くの少女が学校に通えないでいる」と指摘する。「政府は、すべての少女が通える学校を確保することに改めて集中すべきであり、さもなくば、これまでの前進が水泡に帰す恐れがある。」
「私がお医者さんになれないから、いつの日かあなたは病気になる:アフガニスタンにおける少女の教育機会」(132ページ) は、アフガニスタンの治安が悪化し、国際ドナーが次々と去っていくのに伴い、少女を学校に通わせるための試みが停滞してしまった原因と現状を詳述したもの。本報告書は、カブール、カンダハール、バルフ、ナンガルハール各州で行った249件の聞き取り調査に基づいている。応じたのは、主に教育を続けることができなかった11歳〜18歳の少女たちだ。
女子教育はしばしば、国際ドナーやアフガン政府の成功事例として強調されてきた。実際、タリバンが支配していた時代に比べ、学校に通う少女の数は数百万人多い。しかしすべての少女に教育を、と宣言された目標の実現には程遠いのが現状だ。生徒数もアフガニスタンの一部で落ちている。政府によると350万人が学校に通えておらず、その85%が少女だという。思春期の少女の識字率はわずか37%で、少年の66%と差がある。
アフガン政府が少女のために準備した学校は、小中学校とも少年のそれより少ない。同国の州の半分では女性教師の割合が20%以下で、これは娘が男性教師に教わることをゆるさない家庭にとって、とりわけ障壁となっている。多くの子どもが学校から遠く離れて暮らしており、特に少女たちがこの影響を受けている。また、学校の約41%が校舎を持たず、壁や水道施設、トイレなどが不足していることも少女たちにとっては大問題だ。
サマンガーン地方の農村で育ったKhatera(15歳)は、「一番近い女子校は別の村にあったの。 ロバや馬でお昼までかかるようなところよ」と話す。
女子教育の価値を認めなかったり、許さない差別的な考えから、少女はしばしば学校に通わせてもらえない。3分の1が18歳未満で結婚し、ひとたび結婚や婚約をしてしまえば、学校をやめさせられる少女が多い。
しかし一方で、多くの家庭が巨大な壁に直面しつつも、娘の教育のために必死で闘っており、こうした家庭は支援を受けてしかるべきだ。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、娘の学校を探すために町から町へと移住したり、時に国土を縦横断した家族とも話をした。このためにバラバラになった家族や、妹の教育費をまかなうためにイランで危険な違法就労をしている兄もいる。
アフガニスタン法では、通常子どもが14歳になる9年生までが義務教育と定められているが、現実には多くの子どもたちがこのレベルの教育機会を持てずにおり、時に全くない場合もある。行政上の壁と腐敗が、とりわけ国内避難民や貧困層にとって、さらなる障害としてふりかかっている。たとえ授業料は無償であっても通学費はかかる。何より多くの家庭では、1人として子どもを学校に通わせる余裕がなく、貧困ゆえに息子たちを教育することを選択することも少なくない。同国の子どもの約4分の1は、絶望的な貧困を生き延びるために働いている。多くの少女たちも勉強するより織物や刺繍、物乞い、ゴミ拾いで家族を助けている。
タリバンほかの武装勢力は現在、アフガニスタンにある地区40%超を支配している。 タリバンと政府間の戦いで多くの世帯が家を追われ、国内避難民の数は100万人を超える。タリバン支配下の地域では、タリバンが少女の教育をわずか数年に制限したり、時には全面的に禁じたりしている。争いが続く地域では、通学を模索する少女たちが危険に直面している。内戦で無法状態になっていることに伴い、民兵組織や犯罪組織が増え、少女たちは性的嫌がらせや誘拐、酸攻撃などに加えて、女子教育を狙った攻撃や脅威にもさらされている。このような環境で教育がますます悪影響を受け、少女たちが特に多大な危害を被っている。
国際ドナーはアフガン政府と協力して、紛争が激化する最中でも勉強を可能にする革新的なモデルを作り上げてきた。「コミュニティベースの教育」は、しばしば家庭を拠点とするクラスのネットワークであり、子ども、特に少女が公立学校から遠く離れた地域で教育機会を得ることができる。しかしこうした特別クラスは、資金面で完全に国際ドナー頼りで、運営するのはNGOであるため、アフガニスタンの学校制度と一貫したつながりがない。加えてNGOへの資金サイクルが不安定なため、運営も行き当たりばったりの状態だ。
前出のゲルントホルツ局長は、「これらコミュニティに根ざした学校を政府の教育制度に統合し、持続可能な資金調達とクオリティ管理を行うことは、数多くの少女にとって生命線となるに違いない」と述べる。ユネスコが設定した国際基準によれば、政府は国家予算の少なくとも15〜20%、国内総生産(GDP)の4〜6%を教育に費やすべきとされている。国連は、アフガニスタンのような最も発展の遅れている国々に対し、これらベンチマークの上限か、それを上回るべきだと強調する。2016年の時点では、アフガニスタンの公的支出の13%、GDPの4%が教育に費やされた。
アフガン政府は国際ドナーと協力し、学校や生徒をよりよく保護することによって、少女の教育機会を拡大しなければならない。 具体的には、少女の学習に役立つ教育モデルの制度化および強化、無償かつ義務の初等教育という政府の国際的な義務に見合う具体的な措置の展開、すべての子どものための無償中等教育の実現などだ。また、初等(基礎)教育を受けていなかったり、修了していないすべての人のための「基礎教育」も奨励、強化されてしかるべきである。
ゲルントホルツ局長は、「アフガニスタンが直面している多大な困難の中にあっても、政府は少女と少年のために平等な教育機会を確保し、少女のためのコミュニティベース教育を国の学校制度に統合することができるはずだし、しなければならない」と指摘する。「国際ドナーは、女子教育に対する長期的な支援を約束し、援助資金がどのように使われているのかをもっと厳しく問う必要があるだろう。」
報告書より証言抜粋
“By the time we walked to school, the school day would end.” – Najiba, 15, explaining why she and her eight siblings did not go to school in Daikundi, Mazar-i Sharif, July 2016
“The Taliban is near our house. If we go to school, they will kill us. If the government can provide security, we will be very interested to go to school.” – Paimanah, 12, who studied at a community-based education center hidden in a family home near her house, Kandahar, July 2016
“The road to the government school has many thieves and bad boys.” – Hakim, 13, class 3 student at Community Based Education, Kandahar, July 2016
“The most important thing is to convince fathers to let their daughters go to school.” – Manija, 17, class-three student at a community-based education program, Kandahar, July 2016
“Men would disturb and threaten small girls. The men would touch us and do other actions with us, so we left. They were local men living nearby. No one tried to stop them – it happened to a lot of us. Lots of girls left school because of this – more than a hundred left. Kandahar people won’t allow their girls to go to school.” – Chehrah, 16, lived only 100 meters from a school in Kandahar. The harassment led to her asking her father if she could go to another nearby school in an area she believes is safer, but instead he removed her from school permanently, at age 12.
“It happened on the road right in front of the school.... Some students lost their eyes – their faces were burned…All the family decided no girls in our family will go to school…But for years I fought them and continued.” – Maliha, 17, was in class five at a government school when her classmates were the target of an acid attack. Fifteen students were injured, four seriously.
“We have 395 schools without buildings. This is a big challenge for female students because these schools don’t have a perimeter wall – they are open. In these areas, in most districts, people won’t send girls without a building and a perimeter wall.” – Provincial education official, Jalalabad, July 2016
“In many areas there are no female teachers.” – Provincial director of education, July 2016
“We sell fruit for 20 to 30 Afghanis [US 29-43 cents]. The kids here run around the market and eat peels from the ground. We are destitute. All the kids are illiterate…Should they take care of food, or education? … If your stomach is empty, you can’t go to school.” – A community leader from an informal settlement in Kabul of Kuchi people, who were formerly nomadic, explained why in his community few children go to school. He has five or six grandchildren living in the settlement, none of whom go to school.
“I don’t have money for a pencil for my son, let alone my daughter.” – A community-based education program staff member recounting a common response of fathers for why their daughters do not go to school
“We need peace and we need equal schools for boys and girls and equal education for boys and girls. I think boys [now] have more rights to get education.” – Qasima, 13, community-based education program student, Mazar-i Sharif, July 2016