(ヤンゴン、2017年1月25日)暴力によらず政府を批判する人びとの訴追は言論の自由の権利の侵害であり、ビルマ政府はこれを止めるべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。国民民主連盟(NLD)率いる現政権は非暴力発言を犯罪とする法律の改廃を目指すべきである。

ビルマのドナー国・機関は政府に対し、暴力によらない表現を理由とした訴追を止め、基本的人権を侵害されて拘束されているすべての人びとを釈放するよう強く働きかけるべきだ。

Burma’s government should act to end the prosecution of peaceful critics in violation of their right to free speech.

「ビルマ新政権には100人を超える元政治囚が参加しているが、暴力によらない意見表明の訴追に用いられる法律を廃止する動きは皆無に近い」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムズは指摘する。「むしろ政権誕生後の1年間で、非暴力の政治的発言を理由に訴追された人の数は増加している。」

イレブン・メディア誌のワイピョー編集長とタントゥットアウン社長は、2017年1月27日に名誉毀損に問われ刑事裁判の公判に出廷する。ラングーン管区首相を務めるNLD党員の汚職疑惑を報じた記事が問題とされたが、同誌はすでにこの記事を撤回し、謝罪も行っている。2人は公判開始まで3カ月近く身柄を拘束され、1月6日に4回目の申請でようやく保釈が認められた

NLD職員のミョーヤンナウンテイン氏は名誉毀損罪で最大3年の刑を宣告される可能性がある。ラカイン州北部で起きた10月9日の国境警備警察署襲撃事件その後の暴力について、国軍の対応を批判するFacebookへの投稿を国軍将校が告訴したためだ。11月3日の逮捕以来投獄されている氏は1月18日、3度目の保釈が認められなかったため保釈をあきらめたと述べた。

The Burmese people expected the NLD government to bring an end to this kind of repression, not add to the ranks of political prisoners.

Brad Adams

Asia Director

名誉毀損罪で起訴された最近の事案には、アラカン民族党(ANP)党首を侮辱したとして同党の党員が告発したもの、NLD所属国会議員2人が、メイドとの紛争に介入したとしてある女性に非難されたとして女性を告訴したもの、国軍が支援する連邦団結開発党(USDP)所属の元国会議員が「善行を積むように」と助言した人物を告訴したものなどがある。またアウンサンスーチー国家顧問を侮辱したとされる女性や、地元当局者が洪水の被災者支援を着服していると発言したNLD党員など多くの人びとも訴追に直面している。

この1年間、ビルマ政府当局は情報通信法66条(2)の運用をとくに強引に行っている。この法律はインターネットでの名誉毀損に最長で3年の刑を定めている。同法違反で起訴された人びとには保釈の権利がなく、裁判まで何ヶ月間も拘束され続ける。

テインセイン元大統領を詩の中で侮辱したとして6カ月服役したマウンサウンカ氏が代表を務める市民団体によれば、新政権発足後8カ月間で情報通信法66条(2)違反の事件が少なくとも40件ある。なお同法の制定から2016年4月初めに新政権が発足するまでの2年以上で起訴は7件だった。

この数ヶ月に同法違反が認定された人びとには比較的長い刑期が宣告されている。ティンチョー大統領を「愚か」で「気が触れている」と形容したとしてNLD職員に告発された男性は9カ月の刑を、電子改変した国軍最高司令官の写真をソーシャルメディアに投稿したとして国軍将校に告訴された男性は2年の刑を宣告された。

「民主的な政府は、政府や軍の幹部を批判、あるいは何らかの形で「侮辱」した人物を投獄することなどしないものだ。ビルマ国民はNLD政権がこの類の抑圧に終止符を打つと期待していた。政治囚という存在については言うまでもない」と、前出のアダムズ局長は述べた。

植民地期に制定されたビルマ刑法は、今なお非暴力の意見表明を訴追するために用いられていると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。当局は活動家のカインミョートゥン氏を国軍がラカイン州で戦争犯罪を行っていると批判したことについて、「扇動」および人びとを「動揺させる」発言をしたとして起訴した。7月に逮捕された同氏は保釈が認められず、2つの容疑についてそれぞれ最大2年の刑が宣告される可能性がある。ベテラン活動家のティンチョー氏は、国軍批判の発言が「タッマドー(国軍)の成員の職務遂行を妨害しかねない」発言であるとして訴追されている。

刑法の名誉毀損罪を用いることは、名誉毀損に刑事罰を科すことが言論の自由の正当な規制ではないとする国際社会の認識の広がっていることと逆行する。名誉毀損罪はすべて廃止されるべきであり、もし必要であれば民法の名誉毀損に置き換えられるべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

「NLDは上下両院の多数派を形成している機会を活かし、抑圧的な法律を改廃すべきだ。意見を表明した人びとを刑事訴追すべきではない。法律の見直しが行われるまでの間、ティンチョー大統領は、非暴力発言に関わるすべての刑事事件に恩赦を行うと発表することで今後の訴追を防ぐとともに、NLDが正しく批判してきた歴代軍事政権の道をたどることを避けるべきである」と、アダムズ局長は述べた。