(ラングーン)― ビルマ政府はカレン州での不法な土地強奪を終わらせるため速やかに動くべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表の報告書で述べた。当局者は、立ち退きを拒んだ農民をたびたび不法侵入として起訴しており、ある事件では警察が村に火を放った。民兵組織司令官も脅迫、実力行使、恣意的拘束を用いて、農民を脅して土地を奪っている。事件はとくにカレン民族武装組織が勢力争いをする地域で起こっている。

「ビルマのカレン州では農民が土地を追い出されており、自らの権利を主張すれば逮捕・投獄されてしまう」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理フィル・ロバートソンは述べた。「コネをもつ経営者、民兵組織指導者、政府当局者が土地法を悪用し、規則上の欠陥を利用して、長年土地を利用し続けてきた農民の権利をほぼ無視して土地を取得している。」

今回発表の報告書『「犯罪者となる農民」:ビルマ・カレン州での土地強奪』(全65頁)は、カレン州でのカレン民族の農民からの土地強奪をめぐる、民兵組織や警察、政府当局者の人権侵害を明らかにするものだ。被害農民の多くは、祖先から何世代にもわたって土地を耕してきた。

農民の生業を脅かす要因には、過去の政権が成立させた人権侵害的な法律、検討の不十分な土地政策の実施、そして小規模農民や村人の強制移住を促す腐敗した地元当局者を取り締まろうとしない当局の対応がある。

Officials regularly charge villagers with criminal trespass if they refuse to leave land, and in one case, police torched a village. Militia commanders have also used threats, force, and arbitrary arrests to intimidate farmers and take land, particularly in areas still contested by ethnic Karen armed groups.

カレン民族の農民の代理人を務める弁護士はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し「農民から土地を奪っているのはビジネスマンだ。しかし農民が抗議すると、農民が犯罪者にされてしまう」と訴えた。潅漑用ダムの建設など、政府が公共の目的で土地を収用した事例では、地元への十分なコンサルテーションやデュープロセス、移住対象となる人びとへの補償が行われてないことが多い。

タイと国境を接するカレン州では、住民の約7割が農業で生計を立てており、土地利用は食糧の権利と十分な生活水準の確保に重大な影響を与える。この地域は何十年にもわたり、ビルマ国軍とカレン民族武装組織との武力紛争に巻き込まれており、重大な人権侵害が、とくに国軍によって広範にもたらされている。

ビルマでは表現の自由に関する法律が抑圧的なものであり、他に頼る手段のない農民の不満を抑えつけている。農民が抗議活動を通して表現の自由の権利を行使しようとすると、当局は組織的にデモ申請を却下する。農民や活動家がそれでも抗議活動を行うと、多くの場合、無許可の街頭抗議行動を犯罪とする「平和的集会および平和的行進法」違反で逮捕・投獄されてしまうのだ。

2012年にビルマでは、土地に関する一連の法制度改革が始まった。2つの土地関連法が成立し、土地の所有権を強めるために農民の土地利用証明書取得を認めるようになった。また2016年には、土地分類や共同体の土地利用制度、苦情処理への対応を進める全国土地利用政策が採択されている。

だが一連の改革にもかかわらず、農民からは、地元土地当局を利用できないとか、当局者が時に土地登記を拒んだり、あるいは金銭的な利害に対抗して自分たちの権利を守ってくれないといった訴えがある。さらに農民側からは、地元政府当局者が土地取引のブローカー役を務めたり、鉱山開発など事業関連の許可証取得を後押ししたりすることもあり、長年の住民や農民の手元には何も残らず、効果的な補償手段もないといった声も上がっている。

2015年11月の選挙で誕生した国民民主連盟(NLD)政権の下、ビルマでは民主化が始まった。だがカレン州の農民や人権活動家にとっての状況は、ほとんど変わっていない。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは政府に対し、警察による土地問題活動家の恣意的拘束を止めさせ、土地収用に抗議する非暴力活動を行ったとして逮捕され、裁判を待つ活動家を釈放するよう求めた。ビルマ政府はまた、不法な土地収用の訴えを公平に調査し、調査結果を公表し、人権侵害を行った者を訴追するとともに、自分の土地の利用が不当にもできなくなった村人にただちに十分な補償を行うべきである。

「ドナー国政府は、ビルマの土地改革の見た目にだまされてはいけない」と前出のロバートソン局長代理は指摘する。「現場の状況を見ると、以前と大差ない。現実には、地元当局者、人権侵害にまみれた民兵組織、有力なビジネスマンが、有効な農民保護策がないのをよいことに土地の接収を続けている。」

証言から抜粋 
“Some things are getting better. There is electricity in the next village, and we may get electricity here, too. But none of that matters if our land is gone.”
–Nu Yee, San Klo village, Karen State, February 2015

“When they first arrived, they told us that we owned the land. But later, they took 500 acres for their own plantation. They never offered us any money for the land.”
–Villager, Ta Nyin Kone village, Karen State, August 2015

“We went to the land office in September 2014 and the land office said, ‘It is too hot to measure your land,’ and they never came back to measure. We tried to phone them but there was no answer.”
–Villager, San Klo village, Karen State, February 2015

“We just want our land back. We have large families but no land for our children. Our brothers and sisters are in Thailand now. They want to come back but there is no land to support them.”
–Villager, Kuklo village, Karen State, February 2015

“[Karen State] Chief Minister U Zaw Min now said that he has given back 700 acres of land, but in reality they’ve given it to businessmen, cronies. We received a document that lists land return for 58 individuals. But some of the people on the list are not from this village. About 30 [people] from the village are missing from the list. Villagers from here got back only 186 acres.”
–Villager, Kuklo village, Karen State, February 2015