(ニューヨーク)勇敢不屈の人権活動家4人が、2015年のアリソン・デ・フォージュ人権活動家賞の受賞者に選ばれたと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表した。
受賞者たちは、それぞれの母国で先頭に立ち法による正義を求め続けている。マレーシアでトランスジェンダーの人権保護を求めるニシャ・アユブ(Nisha Ayub)氏、戦火のシリアで報道関係者の拘禁と拷問を明らかにしている、ジャーナリストで人権活動家のヤラ・バデル(Yara Bader)氏、旧ソ連のアゼルバイジャンで人権に人生を捧げてきた、著名な調査ジャーナリストのカディジャ・イスマユロヴァ(Khadija Ismayilova)氏、ウガンダで人権団体「チャプター・フォー・ウガンダ (Chapter Four Uganda)」を創設し、市民権をまもるため戦い続けてきた著名な人権弁護士のニコラス・オピヨ(Nicholas Opiyo)氏の4氏だ。イスマユロヴァ氏は現在、脱税その他の容疑で投獄され裁判にかけられている。容疑はでっちあげで、氏が報道した内容への報復だ。
「アリソン・デ・フォージュ人権活動家賞は、勇敢さと無私無欲の精神を発揮し、しばしば危険な状況に身をさらし、多大な個人的犠牲を払いながらも人権保護活動を行う人びとを讃える賞だ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのケネス・ロス代表は述べた。「受賞者たちは、世界で最も抑圧され、弱い立場に置かれた人たちを守るため命をかけている。」
本賞はアリソン・デ・フォージュ博士にちなんで命名された。博士は約20年にわたってヒューマン・ライツ・ウォッチのアフリカ局の上級顧問を務めていたが、2009年2月12日にニューヨークでの飛行機事故により非業の死を遂げる。デ・フォージュ博士はルワンダの人権状況、そして同国で起きた1994年の大虐殺およびその後の情勢に関する世界的な権威だった。ヒューマン・ライツ・ウォッチが毎年授与する本賞は、デ・フォージュ博士の人権活動に対する傑出した尽力に敬意を表し、人権侵害や差別、弾圧のない世界を目指し、その実現に命をかける個人の勇気を称えるもの。
2015年の受賞者4人のほか、2014年の受賞者のうち中央アフリカ共和国のベルナール・キンヴィ神父とインドのM.R.ラージャゴパル博士の2人に対し、2015年11月と2016年3月~4月に世界20都市以上で開催される「Voices for Justice ヒューマン・ライツ・ウォッチ チャリティ・ディナー」の会場でその栄誉が讃えられる。
アユブ氏はアムステルダムで、バデル氏はロンドンとパリで、イスマユロヴァ氏はミュンヘンとジュネーブで、オピヨ弁護士はサンタバーバラとロサンゼルスでチャリティ・ディナーに出席の予定だ。キンヴィ神父は北米各地を周りニューヨーク、サンフランシスコ、シリコンバレー、トロントで、ラージャコパル博士はハノーバーのディナーに出席する。
受賞者のプロフィール
ニシャ・アユブ(Nisha Ayub)、マレーシア
ニシャ・アユブ氏は10年以上にわたり、マレーシアでトランスジェンダーの人びとの権利保護のため、支援サービス、法律・政策分析、市民へのアウトリーチ活動に取り組んできた。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、同国のトランスジェンダーの人びとが、暴力と恐怖、抑圧のない生活を送ることを妨げている差別的な法律に立ち向かうニシャ・アユブ氏を讃える。
ヤラ・バデル(Yara Bader)、シリア
ヤラ・バデル氏は、戦火のシリアでの活動家への拘禁と拷問(バデル氏の夫も被害者の1人)の実態を明らかにする活動に取り組むジャーナリストで人権活動家。バデル氏は、シリア政府が治安機関と諜報部を用いて独立系活動家らを暴力的に弾圧する状況を肌で経験してきた。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、重大な危険をものともせず、シリア人被拘禁者のため公に声をあげてきたヤラ・バデル氏のたぐいまれな勇気を讃える。
ハディジャ・イスマユロヴァ(Khadija Ismayilova)、アゼルバイジャン
ハディジャ・イスマユロヴァ氏は著名な調査系ジャーナリストとして、権威主義支配がますます強まるアゼルバイジャンで汚職反対、人権擁護、政治囚解放のために長年活動している。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、表現の自由への抑圧が強まるアゼルバイジャンでジャーナリスト・人権活動家として活動するハディジャ・イスマユロヴァ氏とその傑出した勇気を讃える。
ニコラス・オピヨ弁護士(Nicholas Opiyo)、ウガンダ
ニコラス・オピヨ氏は、著名な人権弁護士で人権団体「チャプター・フォー・ウガンダ(Chapter Four Uganda)」の創設者。オピヨ氏は、憲法に関するハイレベルな申し立てを複数成功させている。その1つが悪名高い2013年の反同性愛法で、同法は2014年8月に無効が宣言された。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、あらゆる人が法による正義を求めることができるよう取り組み、全ウガンダ国民の人権を擁護する活動にゆるぎない献身を続けるニコラス・オピヨ弁護士を讃える。
ベルナール・キンヴィ神父(Father Bernard Kinvi)、中央アフリカ共和国
中央アフリカ共和国のBossempteleにあるカトリック学校で病院を運営する神父。2014年初めに宗教間対立が高まり、イスラム系一般市民に対する集団暴力が激化した際、みずから包囲された何百人ものイスラム教徒を集め、カトリック教会に避難させることで、多くの命を救った。何度も死の脅迫を受けながらも、安全な避難経路が確保できるまではと、イスラム教徒を保護し続けた。一般市民を保護せんとする師のゆるぎない勇気と献身に対し、ヒューマン・ライツ・ウォッチは敬意を表しその功績を称える。
M.R.ラージャゴパル博士(Dr. M. R. Rajagopal)、インド
インドにおける苦痛緩和ケア(疼痛治療)の第一人者。20年以上にわたり、患者たちが苦しむ必要のない激しい痛みに耐えねばならない実態と闘ってきた。臨床医、学者、そして活動家である博士は、人権としての苦痛緩和ケアの促進・実施をめざす活動を率いる世界的権威。コミュニティに根ざした苦痛緩和プログラムを創設し、世界で最も大きな成功をおさめた。また、博士の団体である「パリウム・インド」(Pallium India)と博士本人が主導して、モルヒネを利用可能にするようインド政府を説得、これに成功した。大変な苦痛に苦しむ患者の尊厳ある生と死への権利をまもる活動を続けるラージャゴパル博士に対し、ヒューマン・ライツ・ウォッチは敬意を表しその功績を称える。