ビルマでは今年春、1983年以来初めての国勢調査が行われました。そして8月30日にラングーン(ヤンゴン)で発表された仮集計結果により、実人口をめぐる悩ましい問題に1つの答えが出ました。過去10年の推計人口には4400万から5900万の開きがありました。新しい数字(治安上の問題で、カレン州北部とカチン州の低人口密度地域は含まれていません)は、5,140万人です。

しかしこの数字より重要なのは、国勢調査結果に含まれていないデータです。民族や宗教といったデリケートな部分は、2015年の国政選挙後まで公開されません。大きな理由として政府が挙げたのは、2012年以来ビルマを揺るがす宗派間対立を激化させかねないというものです。2012年には、無国籍状態に置かれるロヒンギャ民族ムスリム14万人が、ビルマ西部アラカン州でのかなり一方的な宗派間紛争により、住む場所を失いました。これ以降、宗派間暴力の危険はビルマ中部にも広がっています。超のつく民族主義的な仏教僧侶の扇動する連続暴力事件が数回発生し、一般のムスリム系住民が標的にされています。

たとえば今年3月、国勢調査開始1週間前のこと、アラカン州の州都シットウェーで複数の欧米人道機関事務所が暴徒に襲撃され、300人以上の援助要員が退避しました。事件の数週間前には、国境なき医師団(MSF)の医療活動を政府が中断させるという、前兆のような出来事が起きています。当時、多数のロヒンギャ民族が、アラカン州に点在する劣悪な状態の避難民キャンプに身を寄せていました。しかしこの命令により、避難民の緊急ニーズを満たす医療措置が実行できなくなったのです。まもなく国勢調査が始まると、政府の調査官は、自分を「ロヒンギャ」と名乗る人の集計を拒否しました。ロヒンギャ民族の排除と、自分のアイデンティティを名乗る権利が認められないことに対し、今までに公に懸念を表明したのは国連人口基金(UNFPA)だけです。

国勢調査から真に学ぶべきことは、国勢調査を支援したUNFPAとビルマ政府が、国勢調査が暴力事件の引き金となる可能性に無頓着だったことです。これについては、調査が始まるかなり前から多くの団体が指摘しており、たとえばインターナショナル・クライシス・グループ(IGC)やトランスナショナル・インスティテュート(TNI)、少数民族の政治指導者多数などが懸念を表明していました。135の「民族」という細かすぎる分類表には、1982年以降ロヒンギャ民族が含まれていません。政府がこの分類にこだわったことが大きな懸念の一つでした。また、過激派仏教徒によるムスリム人口の推測が、超のつく民族主義者の妄想と暴力をもっぱら駆り立てています。

数十年に及ぶ軍の専制支配は惨憺たるものであり、ビルマでは深刻な貧困が蔓延しています。経済社会発展の促進には、正確な基礎データがもちろん必要です。 国勢調査で明らかになった実人口は予想を下回りました。しかし人口が予想を下回ったことより、はるかに深刻な事態とは、ビルマ政府、国連機関、国際ドナーが、ビルマの不安定化と暴力、分裂に油を注ぐ民族的・宗教的対立に対し、今も手をこまねいていることなのです。