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中国:ウイグル系研究者 根拠無く訴追される

イルハム・トフティ氏の起訴に ウイグル反発必至

(ニューヨーク)-中国政府は7月30日、ウイグル系の経済学者イルハム・トフティ氏を国家分裂罪の疑いで起訴したと発表。これを受けてヒューマン・ライツ・ウォッチは本日、深い懸念を表明した。

国営新華社通信は、新疆ウイグル自治区ウルムチ市人民検察院が同氏を正式に国家分裂罪で起訴したと、オンライン上で報道。氏は中国ウイグル少数民族の人権尊重拡大を求める穏健派活動家。しかし、死刑も含む重罪である国家分裂罪で訴追された。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ中国部長のソフィー・リチャードソンは、「イルハム・トフティ氏は、中国政府とウイグル民族間にある溝を埋めようと活動していることで知られる。そのような人物がこれほど重大な容疑で起訴されたことは、中国の人権状況がここ数カ月間でいかに悪化したかの表れである」と述べる。「新疆ウイグル自治区の緊張がかつてないほど高まるなか、政府は完全に誤った合図をかの地に送っている。」

トフティ氏の弁護士によると、起訴の根拠は、氏が開設したウイグル問題を扱うウェブサイト「ウイグル・オンライン」で自身が発表した論考だという。論考にはトフティ氏が寄稿したもののほかに、学生やボランティアによるものも含まれるが、関係当局はこれらが「国家転覆を意図」していると主張。また、氏の海外メディアとのインタビュー内容も根拠としている。これら論文およびインタビューが暴力やテロ行為をあおっているというのは、全くの事実無限だと氏の弁護士は言う。関係当局はまた、氏が北京の中央民族大学で講師をしていた際の講義内容も証拠に挙げている。が、当局は弁護士に講義のビデオテープ複製を渡すのを拒否。弁護士は起訴状の写しもいまだ受け取っていないという。

客観的な基準に従い、トフティ氏が暴力や違法行為を扇動したと言える言動は、一般に入手可能な証拠の中には全く見当たらない。

新疆ウイグル自治区出身の同氏は、今年1月15日に北京で警察に身柄を拘束された。新疆警察は氏を速やかに自治区首都のウルムチ市に移送。同月24日に「国家分裂罪」の疑いでウルムチ市内に氏が刑事拘禁されているとの正式な知らせを、彼の妻が受け取っている。翌25日には、ウルムチ公安局がオンライン上で声明を発表。トフティ氏が「国家分裂活動」に従事し、「民族憎悪扇動」をはかったと非難した。氏は2月25日に正式逮捕されている。

その後6月26日まで5カ月にわたり、弁護士との接見を認められなかった。警察は接見却下を「国家の安全を危険にさらす」事案ゆえ、としている。トフティ氏は、10日間は食事も与えられず、20日間にわたり手足を鎖につながれていたと弁護士に話した。

氏はこれまで、新疆のウイグル民族に対する中国政府の政策をおおやけに批判してきた。同時に論文や頻繁な海外メディアとのインタビューで、繰り返し分離独立に反対の立場を表明している。6月26日の弁護士との接見でも起訴内容を否認した。

ここ数カ月の間に新疆ウイグル自治区では、重大な暴力事件が複数回起きている。7月28日にも、カシュガル地区ヤルカンド県で事件が起きた。国営メディアの報道によると、刀などをもった集団が地元政府の建物や派出所を襲い、何十人もの漢系およびウイグル系住民が死傷したという。なお、この報道についての真否は独立して確認されてはいない。

中国政府はこれを含む一連の襲撃を「前もって計画した」テロ活動としている。しかし、当該地域からの情報や、そこへのアクセスが著しく制限されているため、詳細の多くは不明だ。

中国政府は新疆ウイグル自治区で暴力事件が頻発していることをうけ、この1年間厳重な警戒態勢をとっている。テロリスト疑惑をかけられた人びとが何十人も拘束され、有罪判決を下された。

中国政府が当該地域の治安を懸念するのは当然である。しかし、平和的な反対意見まで、反政府的暴力の行使あるいは提唱と意図的に同一視して、ウイグル民族間に募る不満に対応しないでいる。政府はこうした当該地域でくすぶる不満を、分離主義・宗教的な過激主義・テロの促進に用いる戦略と一方的に決めつけてきた。一方でウイグル系住民は、地域で起きている様々な人権抑圧を訴えてきた。民族差別や厳しい宗教弾圧および文化的抑圧の広まり、そして公正な裁判の不在、強制失踪など超法規的侵害の横行などだ。

前出のリチャードソン中国部長は、「トフティ氏はウイグル民族が抱いてしかるべき不満を何年にもわたり代弁し、その平和的な解決策を提唱してきた。中国政府はこうした彼のような人物を沈黙させんと決めたようだ」と述べる。「ひとつ言えるのは、氏のような穏健派を悪に仕立て上げても、かの地に平和が訪れることは、決してないということだ。」

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