(ワシントンDC)-世界銀行の新たな社会・環境政策をめぐる草案がリークされ、地域共同体および環境の保護について大きく後退する案であることが明らかになった、とNGO・社会運動・地域団体の世界連合である「バンク・オン・ヒューマン・ライツ」が、世銀理事会に対する声明内で本日述べた。

世銀理事会は当該草案を拒み、草案の根本的な欠陥を見直すよう世銀執行部に指示すべきだ。世銀理事からなる委員会が7月30日に開催され、そこで今回の保護措置政策草案を、各国政府およびNGOと世銀理事会間の協議のために承認するか否かが決定される予定。

「バンク・オン・ヒューマン・ライツ」コーディネーターのグレッチェン・ゴードンは、「世界銀行とその加盟国は、ダムや道路建設ほか諸事業が、強制立退きや労働侵害といった権利侵害に帰結しないことを保障する義務を負っている」と述べる。「にもかかわらず、『白紙委任の融資』体制に移行しようとしているように見受けられる。そうなれば、事業対象地域内の共同体は確固たる保護措置を失い、権利侵害が発生した場合の補償請求もきわめて困難になるだろう。」

世界銀行は1980年~90年代に社会・環境保護措置の構築において先駆者となった。当時注目を浴びていたいくつかの開発事業が、人権侵害と環境破壊を引き起こしたことを受けての措置だ。今回の保護措置の枠組み改正では、措置内容と効率を改善することが予定されていた。

各NGOも、保護措置強化に舵を切った世界銀行を前向きに評価。が、驚いたことに草案のリークで明らかになったのは、保護措置を後退させる計画であった。

本連合「バンク・オン・ヒューマン・ライツ」は、「世界銀行はこれまで再三にわたり、新たな保護措置の枠組み策定が現行措置の縮小には繋がらないこと、広く行われている国際基準に見合うものになることを確約してきた」と指摘する。「それが一転して草案は、現行の保護措置が大幅に後退させられ、国際人権基準とベストプラクティス(最善慣行)をむしばむ内容となっている。」

たとえば案のひとつでは、世銀事業において融資先の政府が先住民族保護を適用しない選択が可能となりうる。

「先住民族基準の『適用免除』条項は、多くの国々で貧困と疎外に苦しむ先住民族の存在および権利を否定するのに等しい」と指摘するのは、国連の先住民問題に関する常設フォーラムおよび本連合運営委員会のメンバーで、アジア先住民族連合事務局長(AIPP)のジョアン・カーリング氏。「このような政策は、すでに評判の悪い世界銀行の先住民族に対する歴史を継続させるものにほかならない。」

NGOおよび世銀融資事業の影響を受けた地域共同体および各国政府は、保護措置再検討をめぐるこれまでの協議で、人権を主要課題として取り上げてきた。

草案内の政策には、「差別」や「労働権」といった、様々な人権問題に関連する言葉が新たに加えられている。が、同時に保護措置を狙って、大きく縮小せんとするものともいえる。たとえば「差別」という言葉は、国際法とは対照的に「人種・肌の色・言語・政治等の信条に基づく差別」を省いている。労働権に関する諸条項は結社・団体交渉の自由を含まず、一部の雇用者にのみ適用される内容だ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの国際金融機関担当上級調査員で、本連合運営委員会メンバーのジェシカ・エバンスは、「世銀政策再検討は、人権に関して、世界銀行が責任ある組織になるための好機だ」と述べる。「世銀理事会が今回の草案をそのまま了承するようなことがあれば、世界銀行にとって人権は未だに気まぐれが許される問題だというメッセージを送ることになってしまう。」