Russian President Vladimir Putin (left) and Brazilian President Dilma Rousseff attend a ceremony in Brasilia on July 14, 2014.

© 2014 Reuters

(サンパウロ)— ブラジル政府は今回の新興5カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ―以下BRICS)首脳会議で、ロシア国内の人権擁護を求めるとともに、ロシア内の活動家たちを支援する発言をすべきである。ブラジル政府はまた、国連などの国際組織の人権関係の権限を弱めようとするロシア政府のあらゆる説得も拒絶すべきである。

BRICSは今月14日〜16日まで、同国北東部のフォルタレザで開催される第6回年次首脳会議に集う。これら5カ国は、今後各地域のリーダー的存在になることが予想される経済発展国のグループである。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのブラジル代表マリア・ローラ・カニヌーは、「ブラジル政府は首脳会議の場で、ロシア政府に自国の反対意見取締りをやめるよう強く求めるべきだ」と述べる。「市民社会を認めて、その発展を促す国・ブラジルとして、他のメンバー国にも同様に主張すべきだ。」

歴史的にもブラジルは、国際人権の普遍性を外交政策の中核にすえてきた。今年3月には国連人権理事会でマリア・ド・ロザリオ人権相(当時)が、「わが国の憲法に謳われる人権の普及は、多国間主義、紛争の非介入および平和的解決に基づく国防と並び、ブラジル外交政策の基本理念である」と演説した。

プーチン氏が大統領として再就任して2年が経過した今、かの国はソ連崩壊後最悪の人権状況にある。それにとどまらず、ロシアは国際人権機関の弱体化も狙っている。普遍的価値の概念を拒否し、人権をめぐる国際的な提言活動を主権の侵害と非難して、国際機関の監視メカニズムの一部弱体化を模索しているのだ。

7月に行われたある重要演説で、プーチン大統領は「不干渉」を「国際議論における主要トピック」にするようロシア外務省に指示した。

ブラジルはこうしたロシアの狭窄な視点に影響されることなく、議論中の「BRICS開発銀行」協議に、普遍的な権利に対する自らの視点と市民社会の尊重を反映すべく努めねばならない。新たな国際金融機関の設立は、本首脳会議における主要課題のひとつだ。ブラジルは BRICS開発銀行が社会的・経済的権利を促進し、その恩恵を受けるべき人びとの人権を尊重するものになるよう、BRICSメンバー国と恊働すべきだ。

ロシアでは、一連の抑圧的かつ差別的法律の導入、そして政府批判者の迫害が続いており、市民活動や独立した報道を可能にする公共空間が劇的に縮小しつつある。旧ソ連邦からの出稼ぎ労働者ならびにレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー(以下LGBT)の人びともまた、(政府関係者によるものを含む)悪意に満ちた言葉の矛先が完全に自分たちに向けられていると感じている。

こうした動きはプーチン大統領の再就任直後から始まった。2014年2月のソチ冬季五輪を前にわずかに緩和された弾圧も、五輪が終了しウクライナ危機が悪化するとかなり激化した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのロシア代表タニヤ・ロクシナは、「ロシア政府はNGOに対し、自国史上最悪の取締りを行っている」と指摘する。「おおやけに政府の政策を批判する個人や団体に対し、反逆者のレッテルをはり、独立した立場からの批判を過激主義と同視しようとしている。」

2012年のプーチン大統領再就任以後に採択された国内法の数々は、「反逆罪」の定義を拡大するもので、国際的な人権提言活動が犯罪とみなされる可能性をはらむ。そして海外から資金援助を受けていたり、「政治活動」に携わる独立系の団体に「外国の代理人(foreign agents)」として登録する義務を課した。ロシアにおいて「外国の代理人」が意味するのは、「反逆者」あるいは「スパイ」である。2014年6月までに政府は少なくとも76団体に登録の圧力をかけており、それが不成功に終わると今度は、同意なしにこれら団体を「外国の代理人」として登録する権限を司法省に付与した。

ロシアのテレビ局は国営か、民営でも政府の息がかかっている。近ごろ、人権活動家および野党の大物たちを、「国家の反逆者」として描いたドキュメンタリー形式の番組をいくつか放映している。

政府はまた、LGBTの人びとおよび活動家を異質の危険人物として、社会から排除するすべを模索している。2013年にロシア議会は反LGBT的な「プロパガンダ法」を採択。LGBTの関係を肯定的に伝えるいかなる情報も未成年間に流布してはならないと定めている。同法採択と時期を同じくして、LGBTの人びとに対する社会的烙印や差別、暴力は増大の一途をたどった。露骨な同性愛嫌悪の自警団もほとんど野放し状態となっている。

前出のロクシナ・ ロシア代表は、「ロシア政府の戦略は、公衆の面前で政策提言団体に悪しきもののレッテルを貼り、同性愛嫌悪を助長して、NGOやLGBTの人びとを、ロシアを弱体化せんとする『西洋の手先』に 仕立て上げることだ」と指摘する。

プーチン大統領は最近、インターネットを「CIAプロジェクト」呼ばわりした。ここ6カ月の間にロシア議会はインターネットの自由を厳しく制限する3つの新法を通過させた。これらの法律は、裁判所命令なしに特定のウエブサイトを遮断する権限を検察に認めるもの。日に3,000を超えるヒットがあるブロガーは政府への登録が義務づけられ、マスメディアに対するものと同じ一連の規制が課される。また、ウエブサイト所有者もロシア国内のみでのユーザーデータ保管が義務づけられるため、これが今後フェイスブックのようなプラットフォームの遮断に繋がる可能性も出てきた。近年ロシア関係当局は、多数の独立系ニュースポータル編集権を実質的に掌握しつつある。

ロシアがクリミアを併合してウクライナ危機が武力紛争と化すと、政府は表現の自由を制限するためにより厳しい措置をとった。3月以降に採択された諸法律は、ロシア領土の保全侵害を求めているとみられるすべての演説に対し刑事罰を厳格化するもので、クリミア併合への批判が、原則としてこれに該当する可能性もはらんでいる。

またこれら新法律は、「過激主義」の刑期を延長しており、これは「再投稿」や「リツイート」にも適用されうる。また「『軍事的栄光』シンボルの冒涜」や記念日に対する重大な非礼も犯罪と定めている。

プーチン大統領の2012年5月の就任式前夜にあったデモ抗議に関連して、少なくとも21人が「大規模暴動」という不相応な罪状で拘束されている。同年同月に議会は、大規模暴動ほか大きなデモ抗議に関連した犯罪の最長刑期を延長する改正案を可決した。

近時のブラジルは、国連における人権促進分野において建設的な役割を果たしている。国連人権理事会では、イランやスリランカ、シリアなど世界中で起きている深刻な人権状況に対する決議案を支持してきた。2011年には、性的指向および性自認を起因とする差別を非難する国連の画期的な決議案の通過も積極的に支援した。

またブラジルは、国連総会でも人権促進において主要な役割を果たしている。2013年には、米国が行っていた大規模かつ無差別なインターネット監視に対抗すべく、プライバシー権への国際的な支援を呼びかけるために奮闘した。

前出のカニヌー ブラジル代表は、「ルセフ大統領がロシア政府による弾圧を傍観するようなことがあれば、それは大きな過ちとなるだろう。ロシア政府は、ブラジルが国内で守り、また国際条約上の義務でもある基本的人権の理念を侵害しているのだから」と指摘する。「もしブラジルが今後もグローバルイシューにおいてリーダー的存在でありたいなら、これらの理念を軽視する政府と関与する際には、きっぱりとした反対姿勢を示すべきだ。」