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中国:天安門事件の研究会出席で拘束された活動家たちを釈放すべき

批判者の立件・拘禁が物語る25年間の人権侵害

(ニューヨーク)-中国政府は著名な人権弁護士の浦志強氏に対する刑事立件を速やかに取り下げ、ジャーナリストの高瑜氏の所在を明らかにしたうえで、ほか同様に1989年6月4日に起きた天安門事件を記念する研究会に出席して拘束された活動家たちを釈放すべきである、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。政府は虐殺から25年の節目を迎えるにあたって、これ以上人権活動家を沈黙・失踪させたり、拘禁すべきではない。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ中国部長のソフィー・リチャードソンは「これらの刑事立件や拘禁は、中国政府の人権に対する態度が1989年からほとんど変わっていない現実を如実に物語る」と述べる。「安定した社会とは、歴史と真相究明をめぐる平和的な議論が認められるところに存在する。議論が叩き潰されたり、犯罪とされるところには実現しない。」

2014年5月3日に浦志強弁護士ら10数人の活動家が天安門事件に関する小さな研究会に出席。その後4日夜遅くに浦弁護士は自宅から北京警察によって連行された。警察は翌5日早朝に氏を一時帰宅させて身の回りの品を持ち出させたあと、午後に氏のアパートを家宅捜査してコンピュータや携帯電話、書籍を押収した。

浦氏は騒動挑発罪で拘留処分となり、北京市第一看守所に拘束されている。仲間の活動家によると、会合出席者のうち大学教授の徐友漁氏と郝建氏、民主活動家の胡石根氏と劉荻氏の4人がこの容疑で拘禁されている。

浦弁護士は中国有数の人権弁護士で、1989年の民主化運動ではハンガーストライキに参加した学生活動家だった。以後同氏は警察の頻繁な尋問の対象となってきた。2010年のノーベル平和賞受賞者が劉暁波氏に決定した際、マスコミの取材を受けたことで警察に連行されている。

著名なジャーナリストの高瑜氏は70歳代。2014年4月24日から行方不明となっており、当局の拘禁下にあることが懸念されている。1989年当時は国営通信社に所属していたが、積極的に民主化運動に参加。天安門事件後1年以上投獄されたが、1993年にも再び「国家機密漏えい」のかどで6年間投獄されている。報道によると同氏は、天安門事件25周年を前にマスコミに発言をしないようにと当局から警告を受けていた。

これまでも天安門事件記念日の前後には、中国政府は活動家や被害者遺族に対する締め付けを決まって強めていた。人民解放軍が非武装の一般市民に発砲し、多数が犠牲になった流血の弾圧事件である天安門事件から20年以上が経過したが、中国政府はいまだ非を認めていない。それどころか殺害の実態を隠ぺいし、加害者の法的責任を放置する一方で、被害者や犠牲者家族を迫害し、集会と表現の自由を厳しく制限してきた。

中国政府指導部は政治的にデリケートな記念日や出来事の際に政府を批判する者に対する言論弾圧を続けている。たとえば全国人民代表大会や注目度の高い外国高官の訪中などだ。2014年4月、著名な人権弁護士の莫少平氏ら少なくとも3人の活動家が、訪中していたドイツのジグマール・ガブリエル副首相との面会を阻止された。

前出のリチャードソン中国部長は「天安門事件をめぐる議論をもみ消そうとする中国政府の長年の試みは明らかに逆効果だった。1989年に何が起きたのか、真相を究明しようという情熱と決意がかえって人びとの間に綿々と受け継がれることになった」と指摘する。「政府は開かれた議論を人びとに認める自信をもう持っていてもよいはずだ。そして6月3~4日に起きた事件の真相を明らかにすべきである。」

 

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