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南スーダン:両陣営が戦争犯罪を行っている

指揮官は人権侵害を止めさせ、アフリカ連合は調査を始めるべき

(ナイロビ)-南スーダンの2大油田地帯での最近の戦闘で、政府軍と反政府軍双方が戦争犯罪に該当しうる重大な人権侵害を行ったと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ調査員は、油田地帯を抱える上ナイルとユニティ両州の州都マラカルとベンティウを、2014年1月29日から2月14日にかけて訪れた。調査により、両軍の部隊が、必要性の極めて高い援助物資を含む、民間人の財産を広範に略奪・破壊し、民間人を攻撃対象とし、多くの場合民族に基づいて超法規的処刑を行ったことが明らかになった。

「この紛争での破壊と暴力の無慈悲さは衝撃的だ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアフリカ局長ダニエル・ベケレは語る。「両陣営は、部隊に人権侵害行為の停止を命じるとともに、指揮官の責任を追及すべきである。またアフリカ連合(AU)は、約束したまま行われていない調査を直ちに実施すべきだ。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチ調査員は2013年12月下旬以降、首都ジュバ、ジョングレイ州のボル、ベンティウ、マラカルで起きた疑いのある、重大な人権侵害と国際人道法違反を調査した。戦闘や攻撃の被害者と目撃者数百人に聞き取りを行い、身の安全が確保できた攻撃現場については、そのすべてを調査した。

マラカルとベンティウの市街は現在、広範囲に破壊され、ほとんどゴーストタウン状態だ。恐怖におののいた住民が国連敷地内や周辺の農村部に逃げ出したためだ。攻撃や、民族に基づいた民間人への襲撃が今後も発生する恐れがあるため、大半の住民が帰還していない。2つの街はともに重要な政治的・経済的拠点であり、様々な民族が長い間、共に生活してきた。

2014年1月23日には、政府軍と反政府軍(スーダン人民解放軍-反政府派)が敵対行為の停止で合意したにもかかわらず、両陣営は新たな攻撃を行っている。信頼できる報告によると、政府軍が2月初旬、一部ウガンダ軍の支援を受けながら、ユニティ州のリーア、ガツディアンなどを攻撃した。

2月18日、ヌエル民族の「白軍」など反政府軍部隊はマラカルを攻撃した。ヒューマン・ライツ・ウォッチが入手した信頼できる情報によれば、2月19日に反政府軍部隊はマラカル病院で民間人を殺害。マラカルの国連駐屯地の付近と内部で戦闘が発生し、更に犠牲者が出ている。

ディンカ民族のサルバ・キール大統領と、ヌエル民族のリエク・マシャール前副大統領の政争が紛争の背景だ。南スーダン大統領護衛隊がスーダン人民解放軍の一部と、2013年12月15日に首都ジュバで衝突し、戦闘が始まった。キール大統領は、戦闘はマシャール一派によるクーデター未遂事件だとしたが、マシャール氏側はこれを否定。12月15日以降、武力紛争はユニティ州、上ナイル州、ジョングレイ州内の各地に拡大した。

いかなる武力紛争においても、殺人、民間人や民間人の財産(人道援助物資を含む)を狙った攻撃、略奪は禁止されており、戦争犯罪に該当する。今回の紛争では、民族に基づく報復殺人、大規模な破壊行為、広範な略奪がはっきりとしたかたちで見られると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは調査をもとに指摘した。

ジュバを訪れたヒューマン・ライツ・ウォッチ調査員は、南スーダン治安部隊に属するディンカ民族の兵士によって、ヌエル民族の兵士や民間人に対する広範な殺害と大量逮捕が、衝突が起きた週に行われたことを確認した。ヒューマン・ライツ・ウォッチはまた、ボル市街でディンカ民族の民間人が殺害された証拠を収集した。ボルでは、ヌエル民族の「白軍」を含む戦闘員が、市場や民家を略奪・破壊し、自宅や建物に隠れていた民間人を殺害。南スーダン各地と同じく、攻撃を行ったヌエル民族の青年たちは、ジュバでのヌエル民族殺害事件への報復を口にしていた。

ベンティウと隣接するラブコナはヌエル民族が多数を占める地域だが、12月20日と21日には、スーダン人民解放軍(SPLA)内の政府派と反政府派が交戦した。反政府派は2つの街を、2014年1月10日まで支配した。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、SPLA親政府派とスーダンの反政府組織・正義と平等運動(JEM)からなる政府軍部隊が、店舗や民家、市場、援助機関事務所などを広く略奪したとの報告を受けている。ベンティウではかなりの地域が、ラブコナでは大半の地域が、政府軍による再奪還の際に焼失した。

政府軍の到着前に民間人はほとんど避難していたものの、残っていた民間人は政府軍部隊により射殺されたと、住民は話している。ヒューマン・ライツ・ウォッチはこのほかにも、政府軍が奪還後に反政府軍を追撃した際、ユニティ州ギート郡で複数の村を焼き払ったとの報告も受けている。

反政府軍による支配期間には、反政府軍兵士が警察や民間人と共に、ベンティウとラブコナで略奪を行った。1月10日の敗走当日や直前にも略奪があった。反政府軍兵士と民間人は農村部に逃走する際、兵士は無関係の民間人から貴重な食糧を盗んでいる。

調査員はまた、2013年12月に衝突が起きる前に、政府の治安部隊を含むヌエル民族が、ベンティウとラブコナに住むディンカ民族を襲撃し、一部は民族を根拠に殺害していたことを明らかにした。

マラカルは、シルック、ヌエル、ディンカ民族の住民を中心とする多民族の街だが、12月24日に親政府派と反政府派の部隊が、SPLA兵舎、空港など市内要所で衝突し、紛争が始まった。政府は12月27日にマラカルを奪還したが、2014年1月14日、1月20日、反政府軍による3度目の攻撃を受けた直近2月18日にも、支配権を奪われている。

マラカルでは焼き討ちと略奪が広がり、民間人はほぼ全員が、街の北部に位置する村々や教会、病院、国連敷地内に逃げ込んだ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、両陣営ともマラカルを実効支配する際に、民間人への攻撃、食料や人道援助物資を含む民間人の財産の破壊と略奪、民族に基づく攻撃を行っていることを明らかにした。例えば、反政府軍がマラカルを実効支配していた、1月のある1週間で、「白軍」のヌエル民族兵士は、民家を1軒ずつ略奪し、住民に銃を突き付けて物を奪い、住民の一部を非情にも殺害している。

政府軍がマラカルを支配した1月20日から2月中旬にかけて、兵士は民間人の財産を略奪、放火し、マラカル研修病院内などで、ヌエル民族男性を特定して殺害したと、目撃者や被害者の家族はヒューマン・ライツ・ウォッチに述べた。

国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)は、民間人数万人に避難場所を提供した。紛争が最も激しかった際にはマラカルで27,000人、ベンティウで7,000人を超える人びとが避難した。住民を安全な場所に移動させた場合もあり、多数の命を救ったことはおそらく間違いない。

「南スーダンの武力紛争は終結にはほど遠い。民間人は依然として、国連敷地内ですら人権侵害に遭う危険がある」と、ベケレ局長は指摘。「両軍司令官は、各部隊に対し、民間人と民間人の財産への攻撃を止めるよう、直ちにかつ明確なかたちで命令する義務がある。また人権侵害を行った兵士の責任を追及しなければならない。」

今回の紛争で発生した人権侵害についての徹底的かつ公平な調査が、被害者に法の正義を確保するとともに、とくに民族を理由とする民間人の殺害によって、大きく広がる怒りに対処する上で求められる第一歩だ。調査が行われなければ、これまでの人権侵害は更なる暴力をもたらす危険がある、とヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。

2月21日、国連ミッションは今回の紛争で生じている人権侵害について暫定報告書を公表し、両陣営による人権侵害を詳述した。報告書は前向きな動きだが、両陣営による更なる人権侵害を防ぐために、もっと頻繁に報告を行うべきだ。

AU平和・安全保障理事会は昨年12月30日、2014年3月30日までにAU調査委員会に対し、今回の紛争で生じた人権侵害などを報告するよう求めた。作業には緊急性があるにもかかわらず、委員会の人選はまだだ。

「AUが約束したはずの調査はいまだ行われていない」と、ベケレ局長は指摘した。「更なる人権侵害を防止し、恒久的な平和に向かう重要な第一歩として、AUによる調査がただちに行われるべきだ。」

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