(東京) -- 北朝鮮の人権侵害に関する国連の調査メカニズムの新設への支持を日本政府が本日正式に決定したことは、北朝鮮政府による国内外の人権侵害に関する詳細な調査機構設立に向け重要な第一歩だ、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

本日開催された全閣僚をメンバーとする政府拉致問題対策本部の会合で日本政府は、今年2月からの人権理事会会期で提出する北朝鮮決議案には新たな調査メカニズムの設置を加えた上で共同提案すべく、各国政府と調整を開始する方針を確認した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表の土井香苗は、「新しい調査メカニズムは、何十年にもわたり続いている北朝鮮政府の人権侵害に光を当てる一助となろう」と述べる。「拉致問題や悲惨な政治犯収容所の状況などの組織的な人権侵害の調査を、被害者たちは長年求めてきた。」

国連人権理事会は来る2013年3月の会期中に、北朝鮮における人権状況を審査し、同国に関する決議を採択するとみられる。日本政府が提案する新しい調査メカニズムの設置を同会期中の緊急課題として、人権理・理事国は支持するべきである。

今週初めにヒューマン・ライツ・ウォッチは、安倍晋三首相に宛てた書簡内で、北朝鮮の人権問題に関する国連の活動をより積極的なものにすべく、日本政府がリーダーシップを発揮するよう要請した。またヒューマン・ライツ・ウォッチは、「北朝鮮・国連調査委員会に関するQ&A」も発表。なぜ国連調査委員会の設置が求められるのか、いかに機能するか、国連人権高等弁務官事務所による北朝鮮の広範な人権侵害を明らかにする取組み強化にどうして資するのかなどについて、詳述したメモである。

2013年1月14日、ナビ・ピレイ国連人権高等弁務官は、「北朝鮮は、世界最悪の人権状況の国のひとつであるにもかかわらず、そのことがほとんど理解されず報道もされていない」と指摘し、同国内の「重大な犯罪に対する本格的な国際調査(full-fledged international inquiry into serious crimes)」を求めた

北朝鮮の人びとは、最悪の人権侵害の被害者といえる。人口の大半は深刻な食糧難に直面しており、市民的・政治的権利も全く有していない。教育や健康、仕事へのアクセスは、党への忠誠度に基づく厳格な階層制度(出身成分)により決定される。中でも、政治犯収容所では、言語道断な人権侵害が繰り返されていることが報告されている。政治犯収容所には約20万もの人びとが恣意的に拘禁されているとみられ、飢餓、拷問、超法規的処刑、強制労働、拷問、性的暴力、レイプなどの人権侵害が、日常的に行われている。

北朝鮮は拉致被害者を含む何百人もの外国人の人権も侵害してきた。日本政府が認定した日本人拉致被害者は17人だが、被害者団体によると、日本人拉致被害者の数は100人程度、あるいはそれ以上の可能性もあるという。北朝鮮政府が日本人13人の拉致を認めてから既に10年が経過したが、帰国したのはわずか5人だけだ。それ以来、北朝鮮政府は拉致問題は解決済みと表明しており、問題解決に向けた進展は見られない。今週初め、1977年に北朝鮮工作部員に13歳で拉致された横田めぐみさんの両親である横田滋・早紀江夫妻も、国際社会に一刻も早い北朝鮮調査委員会設置を訴えた。

北朝鮮政府はこれまで、国連の人権メカニズムへの協力を一貫して否定してきた。北朝鮮の人権問題に関する国連特別報告者への協力の拒否はもちろん、人権理事会のその他メカニズムへの協力も一貫して拒否している。

北朝鮮の調査委員会は、国連に任命された中立で優秀な専門家らにより徹底的な人権侵害の調査を行う。北朝鮮国内では人権侵害の申立をすれば厳しい報復処罰を招くのが現状であるから、調査委は被害者の声を真摯に聞かなければならない。

前出の土井代表は、「北朝鮮の悲惨な人権侵害に対する非難は、世界の最優先課題であるべきだ」と指摘。「被害者の受難に光を当てるとともに人権侵害を終わらせるための貴重な機会となる調査委員会設立に向けた日本政府のこのイニシアチブに、国連人権理事会メンバー国は結束すべきである。」