These twelve men share a one room labor camp, with no beds and no air conditioner.

© 2010 Samer Muscati/Human Rights Watch

(ベイルート)-バーレーン国内の数十万人もの移民労働者(多くが南アジア出身者)が、政府による移民労働者保護改革の後も、搾取と人権侵害に苦しんでいる、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日公表した報告書で述べた。

報告書「より良い生活を求めて:バーレーンにおける移民労働者への人権侵害と政府の改革指針」(全122ページ)は、バーレーンで移民労働者が苦しむ様々な搾取と人権侵害を調査して取りまとめると共に、救済措置と労働者保護の強化に向けた政府の取り組みについて詳述している。バーレーン政府当局は既存の労働者保護策と救済措置を実行に移し、人権侵害を行った雇用主を訴追する必要がある、とヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘する。政府は、2012年に導入された民間セクターに適用される労働法を、主たる保護から除外されている家事労働者をも対象に含めるよう拡大適用するべきだ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ中東・北アフリカ局長代理のジョー・ストークは「バーレーン政府当局は、移民労働者が国家建設の一助となっていることを認識しており、重要な改革も行ってきた。しかし更に積極的に労働法を執行しなければ、賃金不払いや労働者パスポートの没収など、人権侵害が極めて広範に行われている実態への対処としてはほとんど効果がない」と指摘する。

バーレーンには458,000人を越える移民労働者が在住し、民間部門と公共部門における全労働人口の約77%を占めている。そのほとんどは建設業、商業、製造業、家事労働などの分野で、低技術・低賃金の仕事に雇われている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは62人の移民労働者に聞き取り調査を行うと共に、バーレーン政府当局者、職業斡旋業者、移民労働者の出身国の外交官、労働弁護士、労働者の権利活動家などに面会して聞き取りを行った。

バーレーン政府が最近行った改革の中には、安全基準の制定、人身売買撲滅への取り組み、労働者権利についての啓蒙活動、移民労働者が雇用主を変える権利を拡大する規定の制定などがある。人体に危険なほど熱い真夏の昼の時間帯に建設作業を行うことを禁止する措置など一定の労働者保護対策をバーレーン政府当局が執行していることをヒューマン・ライツ・ウォッチは明らかにした。しかし当局は、賃金不払い・職業斡旋手数料の請求・パスポートの没収などを禁止する労働者保護策の執行を徹底していない。こうした濫用ゆえ、労働者が人権侵害の多い職場を辞めることが困難になっている。

バーレーンの移民労働者は、バーレーン社会から差別などの人権侵害を受け続けている。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、政情不安が高まった2011年3月に起きた、南アジア出身移民労働者への襲撃事件数件を調査して取りまとめた。移民労働者たちが、襲撃したのは政府抗議運動参加者だったと話した事件もあった。複数のパキスタン人労働者がヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、仲間の労働者が1人殺害され重傷者も出た複数の襲撃事件について、証拠を提供してくれた。

移民労働者の権利を侵害した雇用主に対し、バーレーンの法律で定められている罰則は通常は科されない。罰則を科される場合であっても、人身売買禁止法や刑法で定められている刑罰を科されることは極めてまれである。2008年に導入された人身売買禁止法の中の労働関連犯罪をもとに、バーレーン政府当局が訴追を行おうと努力していることをうかがわせる情報は一切ない。

多くの移民労働者の窮状は母国にいた時から始まっている。母国の職業斡旋業者にバーレーンでの賃金10~20ヶ月分相当の手数料を払うため、大概が家族の家や有価資産を抵当にして多大な借金を負っているからだ。雇用主が賃金不払いをした場合には借金は更にふくらみ、事実上多くの移民労働者が人権侵害の多い労働環境を受け入れざるを得ない原因のひとつとなっている。バーレーンでは雇用主が移民労働者のパスポートを取り上げることが多い。パスポート没収と、広く行われているスポンサーシップ制度とが相まって、移民労働者が雇用主の元を離れて自由に母国に帰国する機会が大きく制限されている。

移民労働者たちが一貫して訴えたのは、賃金不払い問題が一番の悩みの種だということだ。ヒューマン・ライツ・ウォッチの聞き取り調査に応じた半数の移民労働者が、3~10ヶ月間の賃金を支払ってもらっていない、と話した。ある移民の家事労働者は5年もの間、雇用主から賃金の支給を受けていなかった。

ラジャ・Hは19人の男性と共に建設現場で働いているが、賃金を4ヶ月間貰っていないと訴えて、以下のように話していた。

「親父は死んでて、俺は長男なんだ。下に弟や妹が何人もいて、弟の1人はパキスタンで働いている。家族に電話すると、金を送ってくれって言われるんだけど、金もらってないなんてどうやって言えばいいんだい?女房がいて、子どもらは学校に通ってるし、給料貰えないので本当に困ってるよ。」

移民労働者は他にも、低賃金、長時間労働、肉体的・精神的虐待を、そして家事労働者の場合は性的虐待を訴えていた。建設現場で働く移民労働者たちは、過密で危険な労働者キャンプでの問題が続いている、と言う。移民労働者の自殺率が憂慮すべき高さとなっていることも、ヒューマン・ライツ・ウォッチは明らかにした。労働条件が強制労働に相当するケースも数件あった。

家事移民労働者はほとんど女性だが、1日最大19時間働かされ、最低限の休憩しか許されず、休暇はないと訴えていた。多くが雇用主の家からの外出を禁じられていると話し、十分な食事も与えられていないと話す者もいた。

「午前5時半から午後11時まで働いたのよ。休憩時間なし。お休みなし。ご飯食べる時間もなかったわ」とアイエシャ・Kは話した。9月18日のガルフ・デイリー・ニュースによると、アーカナ・サトヤワティ(63歳)の雇用主は過去2年間彼女に賃金を払っておらず、インドにいる家族を訪れるための休暇も21年近く認めてこなかったそうだ。

「個人宅に隔離された家事移民労働者は、微々たる賃金のために呆れるほど長時間働かされ、時に肉体的あるいは性的な虐待の犠牲になっている。これらの労働者は人権侵害を受ける最大の危険にさらされているのに、法律による保護は最小のものしか受けていない」と前出の局長代理ストークは語る。

今年7月に施行された新たな労働法は、年次休暇を含め家事労働者への保護を少々拡大すると共に、労働争議の調停を利用する方法などの規定を盛り込んでいる。しかし同法は、日や週単位での最長労働時間や週ごとの休暇を定めるといった、必要な改革を義務付けていない。

一方、バーレーン政府が幾つかの分野では注目すべき改善を成し遂げていることも、ヒューマン・ライツ・ウォッチは明らかにした。2006年に創設された「労働市場規制局」はビザの審査業務を効率化すると共に、労働者の権利と救済策に関する情報提供も一部で行うような労働者教育活動を管轄している。2009年に成立した法律は、多くの死傷者を出す事故の原因となっていた、「覆いのない」トラックによる労働者の搬送を激減させた。政府が運営する保護施設は、2006年以降人権侵害を行う雇用主から逃げてきた女性移民労働者を収容している。

しかし、多くの重要な分野で改革は不十分であり、法の執行も不適切であることを、ヒューマン・ライツ・ウォッチは明らかにした。ヒューマン・ライツ・ウォッチが訪問した2ヶ所の労働者キャンプの移民労働者たちは、労働省の査察官が数年前に、深刻かつ危険な居住規則違反について雇用主に指摘したにもかかわらず、雇用主は必要措置を取らないまま、労働者キャンプを続けていると話した。

労働省は、移民労働者が苦情(その多くは賃金に関係したものである)を申し立てられるようにすると共に労働争議を調停している。しかし人権侵害を行っている雇い主の多くは調停を拒み、同省の会談要請すらも度々無視する。同省提供のデータによれば、2009年、2010年、2011年に調停員は、バーレーン人労働者が申し立てた苦情に対しては60%を解決しているが、移民労働者の申し立ては30%しか解決していない。

移民労働者が苦情を申し立てた場合、雇い主は労働者が窃盗あるいは同様の犯罪を行った、もしくは許可なく「姿をくらました」と主張することで報復し、移民労働者を拘禁、強制送還、再入国禁止などの危険にさらすことも多い。

バーレーンの市民社会団体である移民労働者保護協会に所属するマリエッタ・ディアスは、「大臣の所に行って話をし、法律を読めば、全てはパーフェクトで、処理できない事なんてないんです。でも『省内の』下っ端役人の所に行ってみてください。その役人が全ての手続きをするんですが、彼らには何をする権限もないし、法律のこともよくわかっていないんです」と語った。

弁護士らによると、裁判所は大概が移民労働者に好意的な判決を下すが、判決まで6ヶ月から1年間かかる上に上訴も可能だ。移民労働者はその期間は法律上働いたり収入を得たりすることは出来ないので、通常は法廷外での不利な和解条件をのむ他に選択肢がなくなると見られる。

多くの移民労働者は、未払い賃金の多く(時には全て)を放棄して、母国行き飛行機のチケット代と自分たちのパスポート返還で和解してしまう。母国に帰る為に前の雇用主にお金を払い、自分のパスポート返還とビザの失効手続きをしてもらった移民労働者もいた。

新たな労働法に盛り込まれている管理システムは効果を発揮する可能性がある、とヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘。同制度は、労働訴訟を効率よく進め、民間裁判所で救済を求める移民労働者の力を高めることもできる。

「バーレーン政府が、移民労働者施策において先進的な国という地位の確立を目指していることは明白だ。その目的を達成するためには、まずは、自国の法律に沿った訴追や処罰が行われていないという『移民労働者に対する人権侵害の不処罰』に取り組むことから始めなければならない」と前出のストークは指摘する。