(ケープタウン)-ウガンダにおける初の訴追となった戦争犯罪裁判に法的・組織的な問題がもちあがっている。最も重大な犯罪の被害者のために法の正義を実現する、というウガンダ政府の取り組みが難題に直面している、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表のブリーフィングペーパーで述べた。ウガンダのこうした経験は、ジェノサイド罪や戦争犯罪、人道に対する罪などの国際法違反の重大犯罪を国内で裁こうとしている他国にとって、参考にすべき経験である。
近年、こうした重大犯罪に関する当事国内での裁判をどうやって行なうかに注目が集まっている。特に国際刑事裁判所(以下ICC)の加盟国は、ジェノサイド罪、戦争犯罪、人道に対する罪を訴追する一次的責任は各国内の法廷であり、ICCは国家の刑事裁判権を補完する二次的機関であるという原則に注目をしている。
ブリーフィングペーパー「国内法廷で重大犯罪を裁く:ウガンダ国際刑事犯罪局の場合」(全29ページ)は、「補完性の原則」に関する取り組みといえるウガンダの国際刑事犯罪局(以下ICD)の進捗状況について調査分析している。ICDは高等裁判所の一局で、テロ関連の犯罪に加え、ジェノサイド罪や戦争犯罪、人道に対する罪訴追の権限を持つ。2011年9月にウガンダでヒューマン・ライツ・ウォッチが行った調査を基にした本ペーパーは、今日までのICDの活動や直面する障害、そしてICDの今後の活動や、より広義な国家単位のアカウンタビリティ実現に向けた課題について分析している。
ヒューマン・ライツ・ウォッチの上級国際司法顧問エリーゼ・ケップラーは「国内の戦争犯罪裁判で、ウガンダで起きた犯罪のアカウンタビリティを実現すべきだ」と述べる。「しかし、ICDが有意義な裁きを実現する機関としてその可能性を開花させるには、まだ未解決の問題が残ったままだ。」
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ボスニア、コンゴ民主共和国、ギニア、ケニアについても「補完性の原則」に関する調査を行っており、本ペーパーはこうした調査活動の一部をまとめたものである。
ICDが現在審議している戦争犯罪に関する事案のひとつは、ウガンダの反政府勢力「神の抵抗軍(以下LRA)」構成員のトーマス・クォイェロ(Thomas Kwoyelo)の事件である。この事案が、ICDに関する法の枠組みそのものに立ちはだかる難題となっている。同事件の行方はおそらく、同国北部における政府との20年に及ぶ紛争中にLRAが犯した重大犯罪に関する裁きを遂行できるか否かについての、決定的な目安となるだろう。
難題のうちには、たとえば、ウガンダの恩赦法がLRA構成員に関する事案の最終的な障害となるのか、そしてICCのローマ規程に沿うウガンダ法が紛争関係の犯罪訴追に適用されるのか、などがある。
本ペーパーは、LRAとウガンダ国軍双方が行った犯罪に対するアカウンタビリティを含む、信頼に足る法による裁きの重要性や、被告人が適切な弁護を準備するための十分な支援と時間を提供することの必要性などを中心的にあつかっている。
また、ICD局内外で頻繁に行われている職員の異動や、証人保護・支援体制の不十分さといった構造的問題点についても分析評価している。
前出のケップラーは、「ICDのこうした経験は、国家による戦争犯罪の訴追という課題に直面する他国にも参考になるだろう」と指摘する。
ウガンダ政府は、LRAと国軍双方が行った犯罪にしっかり対応し、法的障害を克服すべきだ。
国際援助国・機関はこれまで、証人保護の推進や通訳の提供といった重要事項を含め、ICDを援助している。しかしその他の重要な分野、とりわけ被告の弁護については不十分なままだ。
援助国・機関は、援助が十分なものとなるよう見直しをすべきだろう。同時に、ICDがLRAと国軍双方が行った犯罪に取り組むことの重要性を強調すべきだ。
前出のケップラーは、「ウガンダ政府は、妥協をせずに、公正で効果的な裁判の実現に向けてしっかりICDを支援するべきだ」と述べる。「援助国・機関もまた、重要な役割を担っている。必要性の高い分野への資金援助のみならず、紛争の双方による犯罪を裁くことの重要性を説くという役割だ。」