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カンボジア:NGO法案 修正か撤回を

援助国・国際機関は 市民社会の保護を求めるべき

(バンコク)-カンボジアの援助国・援助機関は、カンボジア政府に対し、「結社およびNGOに関する法律」の第4次法案の修正か撤回を断固として求めるべきだ、と一連の国際人権団体が本日述べた。カンボジア政府の国家予算の約半分は、援助国と国際機関が支えている。そして、「結社およびNGOに関する法律」(Law on Associations and NGOs、以下LANGO)のいかなる修正も、NGOと意義ある協議を行なった上で市民社会の活動支援を目的として行なわれるべきであり、逆にNGOの恣意的閉鎖や登録拒否を認める法的枠組み作りを目的とするようなことがあってはならない。

今回懸念を発表したNGO団体は、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、グローバル・ウィットネス、フリーダム・ハウス、人権と開発に関するアジアフォーラム(FORUM-ASIA)、アーティクル19、東南アジアプレス同盟(SEAPA)、シビルライツ・ディフェンダー、ロイヤーズ・ライツ・ウォッチ・カナダ、センタ−・フォー・ロー&デモクラシー、プロテクション・インターナショナル、人権活動家保護監視機構(国際人権連盟【FIDH】と世界拷問防止機構【OMCT】の共同プログラム)。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムスは「カンボジア政府は、NGOの活動の可否を恣意的に決められる広範な権限を政府に与える法案を推し進めている」と指摘。「市民社会は、政府や民間の活動に対する建設的な監視役として、なくてはならない役割を果たしている。本法案はカンボジア市民に利益をもたらす『改革』とはほど遠く、援助国・国際機関はこの茶番に反対すべきだ。」

第4次LANGO法案には、政府に批判的な団体の解散命令や登録申請却下などを可能にする、あいまいで不明確な条項が複数盛り込まれている。条件を明確化するとともに、国際NGOの登録と活動に対して新たに加えられた不必要な障害も撤廃すべきだ。加えて、ある団体が登録しないと決めた場合に、その法的地位が否定され、従って活動不能ということのないよう、保護規定を設けるべきだ。地域ベースの団体にめんどうな届け出の義務を課す条項も削除すべきである。

法人格を得た市民社会団体に対する便益の供与と犯罪防止のため、政府が法規制導入に関心を抱くのは正当である。しかしこうした規制によって、憲法やカンボジアが締約国となっている国際条約の保障する結社・表現・集会の自由を侵害することは許されない。

現LANGO法案が通過した場合に、市民社会団体が直面するであろう危険を理解するには、カンボジア独特の事情の理解が不可欠である。カンボジアには、民主主義が機能している国で機能する監視と抑制(チェック・アンド・バランス)の制度が未だに欠け、行政機関による恣意的行為を制限できていない。NGOの批判に最も厳しく対応した政府高官たちが、実はその件に関して直接の金銭的利害関係を持っていた、などということはざらにある。「他国にあるから」という単純な理由で、カンボジアがNGOに関する法律を持つべきであると論ずることは、多元的な議論と平和的な意見表明のための公共のスペースに対する締めつけを強化している同国政府の行動を無視したものだ。 

同法案には、団体やNGOの登録拒否を正当化する明確な条項がなく、カンボジアも締約国となっている「市民的及び政治的権利に関する国際規約」第22条などの国際法上の義務に反する。また、資格停止/抹消に関する同法案第28条と第29条には、明確で客観的な基準が盛り込まれていない。国内団体は「裁判所の決定によって解散」できると第28条は規定するものの、それ以上の詳細は規定されていない。したがって、政治干渉が日常茶飯事である司法制度の裁量に団体の解散権限をゆだねた形となっている。

資格停止や抹消処分に対する異議申立条項もなく、事前の告知や、抹消や停止処分前の問題解決の機会の提供、あるいは、抹消処分を最終手段に限るなどの手続き上のセーフガードも欠落している。汚職の蔓延、罰則法規の恣意的適用、司法の独立の欠落など、カンボジアの政治的/行政的事情を考慮すれば、こうした条項は著しく懸念される。カンボジア内務省が8月、NGO砂糖椰子の葉組合(サーマクム・ティアン・トナウト:以下STT)を資格停止処分にしたが、LANGO法は、こうした唐突で一方的、かつ不透明な措置を法制化するものだ。カンボジア政府は今も、STTの資格停止処分に対する法的根拠を十分に明らかにしていない。

フリーダム・ハウスの東南アジア・プログラム局長であるスー・ガナワディーナ=ボーンは「多くのカンボジア政府関係者は、これまでに一度も、市民社会が独立して活動し政府を批判できるなど認めたことはない」と指摘。「20年前の国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)の平和維持活動による主要な成果のひとつが、市民社会の活躍のためのスペースを作り出したことだった。今それを守り、NGOがカンボジア国民にとって必要不可欠な役割を独立して果たし続けられるか否かは、援助国・援助機関にかかっている。」

カンボジア政府は義務的登録の削除を約束していたにもかかわらず、現LANGO法案は、法的地位は登録に依ると規定しており、結果として登録義務を実質的に維持する内容となっている。つまり、第4次法案は、登録義務条項は削除しつつも、法的地位の獲得に登録を必要とする内容とされており、「だましうち」的といえる。契約締結や銀行口座開設、スタッフ雇用や器具輸入そして「現行法に沿って援助事業実施のため」にパートナー団体と恊働するのに、法的地位が必要とされており、法的地位がない場合に団体やNGOが実際に活動できるのか、同法案上は不明確である。

このシステムが事実上結社の自由を損ない、現地の団体やNGOは、登録するか、あるいは活動の際に政府による障害に耐え続けるかという皮肉な選択を迫られている。地域ベースの団体はもはや登録の必要がなくなったものの、本法案第5条の下、地元関係政府当局に対する事前の書面届出が義務づけられている。こうした政府関係当局が団体活動を制限するのは容易いのが現状だ。

この第4次LANGO法案は、国際NGO(INGO)を標的にしており、よい統治(グッドガバナンス)や人権を尊重した開発を促進するプロジェクトやアドボカシー活動を、著しく阻害する恐れがあり、非常に懸念される。法案第17条は、外務国際協力省(MoFAIC)に国際NGOの取り扱いに関して広範な自由裁量を認める、広く曖昧な基準を含んでいる。例えば、国際NGOが「平和、安定、公共の秩序を脅かし、あるいは国家安全保障、国家統一、カンボジア社会の文化・慣習・伝統に危害を及ぼす」と同省が判断した場合、当該国際NGOの登録を抹消できる。更に、国際NGOが同省と交渉の上締結することとなる「覚書」の有効期間はわずか3年間であり、結果として事実上の再登録制を意味する。国際NGOも、登録抹消に対する異議申立権はない。

「人権と開発に関するアジアフォーラム」(FORUM-ASIA)のヤップ・スウィーセンは、「今回の最新版の法案が恣意的に濫用され、人権を基本とした(ライツ・ベースド)開発方法により政府に辛口とはいえ建設的な意見を提案する国際NGOを根絶やしにするために利用される危険性がある」と指摘。

最後に、既存の国内法に基づき政府の正当な懸念事項はすでに規制はされており、本法案は不要である。NGOは、新たに施行された民法で、法的地位を獲得できる。民法第46条〜118条は、非営利法人の登録と解散、政府決定に対する異議申立の権利、はるかに負担が少ない登録条件について詳細に規定している。また刑法と汚職対策法が詐欺を規制しているし、国際NGOはすでに政府との覚書によって法的地位を獲得している。

国際人権連盟(FIDH)代表スーヘイル・ベルハセンと世界拷問防止機構(OMCT)事務局長ジェラルド・スタベロックは、「カンボジアの援助国・援助機関は、現4次LANGO法案の協議期間を延長してあらゆる見解や意見を聴くよう、内務省に強く働きかけるべきだ」と述べる。

グローバル・ウィットネス代表のサイモン・テイラーは、「今、援助国・援助機関が過去17年間行なってきた開発援助の命運が懸かっている。傍観する国や機関は、カンボジアにおける数少ない説明責任のシステムが骨抜きにされるのを防ぐため行動を起こさなったと記憶されよう。このシステムの形成に大きな貢献をしたのは援助国・援助機関だったのに」と語る。 

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