A general view of the opening session of Tunisia's constitutional assembly in Tunis on November 22, 2011.

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(チュニス)-チュニジアの制憲議会は、言論の自由と司法の独立を保証するよう早急に法改正すべきである、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表した報告書で述べた。これらの分野での法律改正は、チュニジア国民の人権を守る鍵となる。

報告書「チュニジアの弾圧法:改革アジェンダ」(全49ページ)は、言論の自由や裁判所の独立など、10の司法改革課題を挙げている。その他の課題としては、移動の自由、結社および集会の自由、結党の自由、被選挙権の行使および選挙権の行使に関する市民の権利、テロとの闘いおける諸権利の保護、インターネットの自由、大統領の免責特権があるが、そのすべての分野で、ベンアリ前大統領政権から引き継がれた過酷な法律が今も効力を有している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ中東・北アフリカ局長サラ・リー・ウィットソンは「独裁者は去ったかもしれないが、その弾圧法が残っている限り、後継者はこれを政治的に利用したいという誘惑にかられてしまう」と指摘。

2011年10月23日に選挙されたチュニジア制憲議会の優先課題は、新憲法を起草し総選挙の準備をすることである。しかし、同国の最も悪質な法律の一部を改正し、チュニジア国民の諸権利を守ることも必要である、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

ポスト・ベンアリの暫定政権は、政権を批判する文書を書いた警察幹部サミル・フェリアニ氏と農学者のナビル・ハジュラーイ氏を、それらの法律を使って投獄。テレビ局ネスマ(Nessma)のディレクター、ナビル・カルーイ氏は、「宗教侮辱」容疑での訴追に直面している。フェリアニ氏は、以前、チュニジア革命の際のデモ参加者殺害に関して、現在の内務省高官に責任があると批判する内務大臣宛の書簡を作成。その後、4カ月にわたり裁判前拘禁とされ、現在「公序に害を及ぼす可能性のある」情報流布の容疑で裁判中である。ハジュラーイ氏は、シディ・ブ-ジドでの選挙後暴動に対処したチュニジア武装軍を批判した記事をインターネットに掲載したために、スファックス軍事法廷で刑法第245条と第247条を適用され、チュニジア軍への「名誉毀損」容疑で有罪判決を言わたされ、1カ月間投獄された。

チュニジア法を国際的な人権保護基準に沿った内容に改正するため、ヒューマン・ライツ・ウォッチは具体的な提言を行なった。たとえば、司法の独立を高めるため、制憲議会は裁判官の昇進・異動あるいは懲罰の決定の際の現行制度(行政機関の多数決投票)を廃止するよう、現行の裁判官関連法を改正しなければならない。政権議会は12月10日、国際的基準に沿って司法を改革する必要性を規定した条項を、「暫定権力機構法(Law for the Provisional Organization of Powers)」に盛り込むなど、前向きな歩みをみせている。

報道と表現の自由を全体的に守るため、制憲議会は、「公序良俗に反する可能性がある」チラシの配布などの非暴力の言論に対し懲役刑を含む刑罰で対処できるとしている現行の刑事法や報道関係法の全規定を撤廃すべきである。

これまでの移行期に、暫定政府は前政権の報道法よりは著しく自由を認めた新たな報道法を制定、10月24日付けの官報で公表している。しかしながら、言論犯罪に関する弾圧的な刑法規定の多くは、まだ改定されていない。

報道法の改正にあたって、暫定政権は国家機関名誉毀損違反と「大統領名誉毀損」違反で懲役刑を科すよう定めていた規定など、多くの名誉毀損規定を撤廃した。しかしながら、新報道法は名誉棄損を刑法犯に規定し続けており、懲役は科さないものの同違反行為に対して1万ディナール(7,000米ドル)以下の罰金を規定している。制憲議会は、すべての名誉毀損規定を刑法から民事法に移行すると共に、宗教への名誉毀損という概念を法律からなくすべきである。

1月にベンアリ前大統領を追放してから11月に制憲議会が発足するまでの10カ月、チュニジア暫定政権は、結社の自由や結党の権利などを拡大する法律といった、人権保護の観点から好ましい数多くの法律を公布してきた。

9月24日に暫定政権が公布した結社に関する法律は、結社の法律上の要件を緩和し、結社および結社運営に関係した活動に対するすべての刑事罰を撤廃している。ベンアリ政府時代には、旧法の規定を使って、多くの独立系結社への認可を拒絶すると共に、何千人もの野党活動家を、「無認可」結社の構成員容疑や「サービス提供」容疑で投獄した。

同じく9月24日に公布された政党に関する法律は、「政党は特定の宗教・言語・人種・性・地域などをその主義・活動・プログラムの基礎としてはならない」と規定する条項を撤廃。以前この規定は、チュニジア国民が政党を作る際の基盤を制約するために利用されていた。

しかしながら、暫定政権は、集会の禁止や個人の移動制限に関して広い裁量を当局に与える法律など、多くの問題法を手つかずのまま残している。また2003年制定のテロ対策法も全く改正されていない。同法の過度に広義なテロの定義と公正な弁護を受ける権利を阻害する裁判手続を利用し、ベンアリ政権下では、千人以上のチュニジア国民が訴追された。

加えて、暫定政権は10カ月の任期の間に、人権保護にとって有害な法律も制定した。制憲議会はこれらの法律を撤廃すべきである。選挙前日の10月22日、暫定政権は、拷問に関して改善面と改悪面が両方存在する刑法改正を公布した。拷問という犯罪に対する刑罰を重くすると共に、拷問罪に対する個人の責任の範囲を拡大し、拷問行為を命令・扇動・黙認した個人を含むことにした一方で、拷問罪の時効を15年とする規定も導入。この規定は、重大な人権侵害は時効の対象とすべきでないと規定している国際慣習法に反している。

前出のウィットソンは、「自由選挙により選出されたチュニジア制憲機会は、反対意見の圧殺と司法の阻害に利用されてきた弾圧法を段階的に撤廃していくべきだ」と述べた。