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ビルマ外相の公式訪日(10月20日~)は実に16年ぶりとなる。日本政府はこの機を捉え、長年悩みの種となっている日緬関係をただすべきだ。関係省庁と経済界は今後政府に対し、新興国市場であるビルマへの対外援助と投資の増額を、とくに利益の見込める天然資源開発分野で訴えることになるだろう。そこでは、投資と貿易と一体となった静かな外交こそが、長年孤立し、抑圧的な政治を行っているビルマに改革を促すには最適なアプローチなのだとの主張が持ち出される。

だが、日本政府はこのアプローチを採用してはならない。このアプローチに基づいて行われた過去数十年間の対ビルマ政策は成果をあげていないのだ。

現在ビルマ政府は、軍事政権から開かれた社会へ移行していると世界に印象づけようと、手の込んだキャンペーンを行っている。日本政府は、実質的で真摯な人権状況の改善を求め、ビルマ政府の最近の公約をうまく利用しようと戦略的に立ち回るべきである。

ビルマの新政権は、今年3月30日に発足した。大半を元軍人が占めるこの新政権は、経済、政治、立法面での改革を公約している。人権や民主主義といった表現を交えて従来よりも穏やかな表現を用いており、民主化指導者アウンサンスーチー氏と会談したほか、メディアへの規制を一部緩和するなどした。

元国軍大将のテインセイン大統領は在外反政府活動家に帰国を呼びかけ、きわめて重要な補欠選挙が2011年末に実施される予定だ。ビルマ政府には、反政府勢力・国民民主連盟(NLD)に政党としての再登録と、今後の選挙での候補者の擁立を認めよとの圧力が高まっているが、今のところ何の決定もない。

中国が資金を提供するカチン州での巨大ダム建設が9月30日に中断されたことも、たしかに驚きだった。だが今回のダム建設に関する論争を日本は一つの警告として受け取るべきだ。ビルマ国内の天然資源採掘への投資は、人権状況の著しい改善が伴わない限り、人権侵害を悪化させ、環境破壊を招き、汚職を悪化させる。

先日、ビルマ政府は人道的措置として囚人約6000人への恩赦を行い、推計約2000人の政治囚のうち約220人を釈放した。しかし今回の釈放劇も過去10年間のビルマでの一連の傾向をなぞっている。実際、これまで数度の恩赦が行われて大きな話題になったが、毎回、反体制活動家の釈放はごくわずかだった。収監されていたビルマの有名コメディアンであるザーガナー氏は、釈放時のコメントで今回の恩赦への不満を表明し、こう述べた。

「政府は全政治囚を釈放することを心から望んでなどいない。〔中略〕政治囚全員を釈放したところで政府には一切コストはかからないはずだ」

アウンサンスーチー氏は、政府の行動の一部を注意深く歓迎しているが、今回の恩赦は不十分だとした。

日本政府はビルマ政府に対し「確固たる」民主化及び国民和解を促進する、としている。だがビルマ国軍が民族的少数者の居住地域で民間人を攻撃している現在、これは空理空論の類だ。国内紛争地域でのビルマ軍による民間人攻撃は2011年に増加しており、ビルマ東部カレン州では人権侵害が継続する一方、北部カチン州では、長年続いた停戦合意が最近崩壊したことを受けて、戦闘行為が再開されている。こうした戦闘で約5万人が国内避難民となった。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは国軍による重大な人権侵害について、超法規的処刑、民間人への攻撃、違法な強制労働、村落での略奪などを記録している。国際人道法と国際人権法の深刻な違反行為に関する国連調査委員会(Commission of Inquiry, CoI)の設置を求める声が国際的に高まる一方、日本政府はいまもCoI設置を支持しないという立場を変えていない。

日本政府当局者はビルマに見られる前向きな態度を、両国関係に新しい1ページを開くものだと賞賛してきた。だが日本には、ビルマ政府の一連の行動に中身を与えるための努力がまだまだ欠けている。

まず日本政府は、ビルマ政府が全政治囚の即時無条件釈放を行い、言論、結社、集会の自由に関する諸権利の抑圧に用いられる法律を廃止し、少数民族グループへの戦争法違反行為を停止することを強く求めるべきだ。真の意味での改革の進捗状況は、司法の独立と真の民主化の進み具合によって、またビルマ国内の少数者が抱える苦しみにどの程度現実的な対処がなされているかによって判断することができる。日本政府はビルマが良い方向に進むよう促すべきなのだ。

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