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日本:訪日するビルマ外相に人権問題 提起を

援助と貿易ではなく、政治囚問題こそが最優先課題

(東京) 日本政府はこの度来日するビルマ外相に対し、同国の人権状況改善に向けた実効的な改革を行うよう強く求めるべきだ、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日こう述べた。ビルマのウナマウンルウィン外相は2011年10月20日から22日の予定で日本を訪問する。

ウナマウンルウィン外相の訪日はビルマ外相公式訪問としては16年振りだ。日本側との会談では、開発援助の拡大についての議論のほか、今後の通商関係などについても議論が行われる可能性がある。

「今回のビルマ外相訪日は、日本政府にとって、ビルマ新政権と通商問題を議論するだけでなく、人権状況改善を求める重要な機会だ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの日本代表  土井香苗は述べた。「日本政府は、民族州での人権侵害が続き、多数の政治囚がいまだ獄中にある状況をしっかりと踏まえ、ビルマ政府による最近の一連の声明や態度で満足してはならない。」

日本政府はビルマ政府に対し「確固たる」民主化及び国民和解の促進をする、としている。ヒューマン・ライツ・ウォッチは日本政府に対し、ビルマ政府が全政治囚の即時無条件釈放を行い、言論、結社、集会の自由に関する諸権利の抑圧に用いられる法律を廃止し、少数民族グループへの戦争法違反行為を停止することを強く求めるよう要請する。

2011年3月30日に発足したビルマ新政権は、経済と政治、立法面での改革を公約している。人権や民主主義といった表現を交えて従来よりも穏やかな表現を用いており、民主化指導者アウンサンスーチー氏と会談したほか、メディアへの規制を一部緩和するなどした。元国軍大将のテインセイン大統領は在外反政府活動家に帰国を呼びかけ、先週には推計2,000人の政治囚のうち220人を釈放した。きわめて重要な補欠選挙が2011年末に実施予定だ。

ビルマ政府には、反政府勢力・国民民主連盟(NLD)に政党としての再登録と、今後の選挙での候補者の擁立を認めよとの圧力が高まっているが、今のところ何の決定もない。

今回のビルマ外相訪日は、今年6月の菊田真紀子外務大臣政務官(当時)のビルマ訪問を受けて行われる。菊田氏は基礎生活分野(ベーシック・ヒューマン・ニーズ)の案件を検討の上で実施すると約束し、人的交流、経済協力、経済関係、文化交流の4分野での協力に関する意見交換を行った。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは日本政府に対し、人道援助の実施にあたっては、現在の腐敗した権力構造ではなく、市民社会の力を強化する透明性とアカウンタビリティを備えた形で行われるべきであるとの要請を改めて行う。日本政府はまた、ビルマ政府に対し、援助の実施、なかでも民族的少数者が住む地域での実施について困難を抱えている人道機関について、ビルマ国内へのアクセスを改善することを確約させるべきだ。

人道分野以外への援助の再開は、基本的人権状況の真摯な改善に基づくべきだ。ビルマ国内の天然資源採掘への投資は、人権状況の著しい改善が伴わない限り、人権侵害を悪化させ、環境破壊を招き、汚職を悪化させるとヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。

「ビルマには、日本政府が取り組みを支援できる人道的ニーズが多く存在しているのだから、日本政府はビルマ政府に対し、人道機関の自由な活動を許すよう求めるべきだ」と前出の土井は述べた。「新興市場であるビルマへの日本の投資だが、なかでも利益が高いとみられる天然資源開発の分野については、人権状況の真摯な改善が条件となるべきだ。」

国内紛争地域でのビルマ軍による民間人攻撃は2011年に増加しており、ビルマ東部カレン州では人権侵害が継続する一方、北部カチン州では、長年続いた停戦合意が最近崩壊したことを受けて、戦闘行為が再開されている。こうした戦闘で約5万人が国内避難民となった。ヒューマン・ライツ・ウォッチは国軍による重大な人権侵害について、超法規的処刑、民間人への攻撃、強制労働の不法な使用、村落での略奪などを記録している。

「ビルマ政府の表向きの公約から一歩踏み込めば、懸念すべき現状が依然存在することが理解できるはずだ。それこそが同国外相へのメッセージでなければならない」と土井は述べた。「日本政府はビルマ政府に対し、援助拡大の要請は、人権侵害が停止し、責任者が処罰されることによってはじめて傾聴されることを伝えるべきだ。」

皆様のあたたかなご支援で、世界各地の人権を守る活動を続けることができます。

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