(ミュンヘン)- サウジアラビア政府当局は2011年2月以来、非暴力の平和的な反体制活動家160人以上を逮捕した。これは国際人権法に違反する、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。そして、内務大臣ナーイフ・ビン・アブドルアジーズ・アール・サウード王子(Nayef bin Abd al-‘Aziz Al Sa'ud)に対し、4月17日に逮捕された作家で教師のナディール・アルマジード(Nadhir al-Majid)氏などの非暴力の平和的な反体制活動家をただちに解放するよう強く求めた。

サウジアラビアの同盟国は、こうした深刻かつ組織的な人権侵害を公には批判していない。EU外務・安全保障上級代表(EU外相)キャサリン・アシュトン氏は4月18日、2日間のリヤド訪問の成果に「大変満足している」と述べたが、政治犯に関して公の場で発言していない。同様に、4月18日にリヤドを訪れた米国政府の国家安全保障顧問トム・ドニロン氏、及び4月6日に訪れたロバート・ゲーツ国防長官ともに、サウジアラビア王国の人権侵害について公の場で言及していない。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの中東上級調査員クリストフ・ヴィルケは「EUの外務安全保障上級代表の訪問のまさに初日に、非暴力の平和的な反体制活動家が逮捕されたことに対して、EUが平気で沈黙している。これでは、サウジアラビアの権威主義を支持したも同然ではないか」と述べる。「160人もの非暴力の平和的な反体制活動家が拘束されているときに沈黙するのは、EUや米国政府の選択肢であるべきではない。」

国内諜報機関である国家捜査局(al-mabahith al-‘amma)の高官らは、アルマジード氏を東部州コバール(Khobar) にある彼の勤務する学校で逮捕した。同時に捜査局担当官は、妻子の目の前で家宅捜索を行い、彼の所有物を押収した。アルマジード氏は「我抗するゆえに我あり」と題する記事を書いている。その中で彼は、「サウジアラビア政府がデモ停止を求めているが、これにより我々は歴史から取り残されてしまう。それは、政治的な視点、分析、問題意識に対する盲目を意味する」と述べている。

フェイスブック利用者のグループのいくつかが、3月11日をサウジアラビアの「怒りの日」としてデモを呼び掛けたが、東部州以外では治安機関の監視が厳しくデモを断念した。リヤドでは、サウジアラビア国籍のKhalid al-Juhani氏が、治安機関の存在にもかかわらず、集まったジャーナリストたちを前に話をする勇気があった唯一の人物だったと見られる。BBCのインタビューの中でAl-Juhani氏は恐れを克服した経緯を語り、逮捕されると知っていても言論の自由を経験したかった、と心の内を語った。Al-Juhani氏の兄弟であるAbdullah氏はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、捜査局が後日自宅でAl-Juhani氏を逮捕し、家族は内務省から彼がリヤドのウライシャ(Ulaisha)で隔離拘束されていること伝えられたという。

東部州にあるシーア派が多くを占める町カティーフ(Qatif) とアワミヤ(Awwamiyya)では、4月14日と15日の両日にわたりデモが続いた。デモ参加者の多くは女性で、ろうそくの灯を手に夜通し、1996年の爆発事件に関与したとの容疑で起訴も裁判もないまま12年間またはそれ以上刑務所に拘束され続けているシーア派の人びとの解放を求めた。加えて、デモ参加者たちは、Qatif とal-Ahsa県で、2月以来の平和的なデモゆえに現在も拘束されている120人以上の解放を求めた。

サウード家はサウジアラビアにおける絶対君主制支配を維持しており、国政選挙など国民が政治決定に参加する有効な手段は存在しない。内務大臣及び法解釈をつかさどる最高位の組織である最高聖職者会議は3月初旬、デモの禁止を改めて確認。2月には捜査局(mabahit)高官らが、サウジアラビア初の政党にすべくウンマ・イスラム(Islamic Nation Party)党を創設した8人を逮捕している。

3月には、女性数十名と男性数名がリヤドの内務省本省前で毎週1回、3週間にわたってデモを行った。何年間も裁判が行われないまま諜報刑務所に拘束されている家族の釈放、又は迅速で公平な裁判を求めたのである。捜査局(mabahith)は、平和的なデモを行っていたこの人びとのうちの一部を逮捕した。

サウジアラビア政府当局は、人権活動家Shaikh Mikhlif bin Dahham al-Shammari氏も2010年6月からダンマン中央刑務所に拘束している。拘束の理由は、宗教過激主義者や無能な政府高官を批判した記事を書き「他者を迷惑をかけた」こととされる。サウジアラビア政府は2009年に、アラブ人権憲章に加盟。同憲章は、32条において言論と表現の自由の権利を謳っている。サウジアラビア王国は、政治的及び市民的権利に関する国際規約(B規約)に署名していない数少ない国のうちの1つである。

「サウジアラビアで拘束中の政治犯の数が増えれば増えるほど、EUと米国の沈黙はさらに大きな問題となろう。」