(マナマ)バーレーン政府は2月14日のデモ開始以来、少なくとも18人が暴力的な弾圧の中で殺害された事件を緊急に捜査する必要がある、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。犠牲者のほとんどは、治安部隊が、民衆を制御するという大義の下、至近距離から実弾を撃つなど過剰な武力を使用した結果殺害された。内務省によれば、政府治安部隊関係者も4人も殺害された。

バーレーン政府は、失踪した4人が傷が原因で亡くなった事件について、彼らの死亡後、やっとバーレーン軍附属病院で拘束していた事実を認めた。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、失踪者に対する当局の処遇を憂慮するとともに、当局が家族に拘束の事実を通知しなかったことは重大な問題だと指摘した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの中東・北アフリカ局長代理ジョー・ストークは「バーレーンの政府治安部隊はデモ隊を弾圧する際、人命を虫けらのように軽視していた」と語る。「至近距離から散弾銃を撃ちこむのが民衆の制御のためであるはずがない。殺人そのものだ。」

3月15日に機動隊や軍が2回目のデモ隊への攻撃を始めて以来、少なくとも15人が死亡した、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べる。死者の中には、Ahmed Farhan(24歳)と、3月15日にシトラで死亡したバングラデッシュ国籍のMohammed Eklas(50歳)も含まれる。Farhanの遺体の写真では、彼の後頭部は吹き飛ばされ、頭蓋骨の中は空洞と化しており、至近距離から撃たれたことを示唆している。Eklasは、弾圧の最中に女性を救おうとし、車両に轢き殺されたという報道もあるが、ヒューマン・ライツ・ウォッチはその真偽を独自に検証できていない。

3番目のシトラ住民Isa al-Radhi(46歳)は、3月15日に失踪し、3月19日に死亡が宣告された。政府当局は19日に家族を呼び出し、遺体を引き取るよう伝えた。

治安部隊は3月16日の朝、デモが行われた首都マナマの真珠広場で少なくとも3人を殺害した。目撃者たちがヒューマン・ライツ・ウォッチに語ることによれば、治安部隊は最初のうちは催涙弾やゴム弾、鳥撃用散弾銃を使用していたが、後に、広場付近で地域の支配を奪還するため、実弾射撃に切り替えた。

Jaafar Abd al-Ali Salman(41歳)、Jaafar Mayoof(30歳)、Ahmad al-Arnoot(22歳)は、全員3月16日に受けた銃創がもとで死亡した。報道によればSalmanとMayoofは実弾で撃たれ、一方Al-Arnootは散弾銃で撃たれた、という。付近の建物で警備員をしていたインド国籍のStephan Abrahamは、午後8時頃任務についていたところ流れ弾が命中し、後に死亡した。

治安部隊は3月15日及び16日、そしてその後数日にわたって実弾による射撃を続けていた、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べる。

政府の弾圧による犠牲者の中で最近亡くなったのは71歳のIsa Mohammed Ali Abdullaである。3月25日Maameer村で行われたデモを鎮圧した際、催涙ガスにより窒息死した、とアル-ワサット紙が伝えた。政府の治安部隊が使用した催涙ガスがAbdullaの自宅に入り込み、Abdullaがガスを吸い込んだことが原因だったという。内務省は「自然死である」との見解を表明している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、怪我を負いながら拘禁されていた人びとについて(うち4名は後に病院で死亡)、当局が家族への通知を怠ったことに懸念を表明した。3月19日、機動隊から至近距離で撃たれ、血の海に横たわっていたHani Abd al-Aziz Jumah(32歳)を地元住民が発見し、現地の病院に搬送した。数時間後、覆面の警官が医師を同行させ、救急車に彼を連れ込むと、バーレーン軍附属病院へと移送した。3月20日と21日、Jumahの父親はバーレーン軍附属病院に息子の容体を聞こうと何度も電話をかけたが、答えは決まってJumahはいないというものだった。3月24日になって、Jumahの家族は警察からの電話で彼が死亡したこと、ゆえに翌日遺体をサルマニヤ総合病院に引き取りに来るよう伝えられた。

 他にも、最愛の親族が数日間失踪した後、不審な状況下で死亡した知らせを受け、遺体を引き取らされた家族が3家族ある。

  • Isa al-Radhi(45歳)は3月15日、治安部隊がシトラを攻撃した際に失踪した。3月19日、バーレーン軍附属病院は家族を呼び出し、彼の遺体を収容していることを伝えた。ヒューマン・ライツ・ウォッチの相談を受けた法医学者はal-Radhiの遺体の写真を見て、「デモ隊の乱闘で自然にできた」傷とも言えるが、「攻撃されたことによる傷の可能性も捨てきれない」と述べた。彼は散弾銃による銃創も負っていた。
  • Bahia al-Aradi(51歳)は3月16日に失踪。彼女は同日、車を運転しながら妹と電話をした。ある目撃者によれば、al-Aradiがアル-カダム(Al-Qadam)村付近まで来たと妹に話しかけた時、銃声が聞こえ地面に伏せようとした。それ以来消息を絶ったという。al-Aradiの家族はバーレーン軍附属病院を含め、数か所の病院に連絡を取ったが、彼女はいないとの返答だった。3月19日になって、当局は家族にal-Aradiがバーレーン軍附属病院で生命維持装置をつけていることを知らせ、数分間兄弟に面会を許した。そして3月20日、病院は彼女の死亡を告げた。少なくとも1発の銃弾がal-Aradiの後頭部に撃ちこまれており、今も頭の中に留まったままだ。
  • Abdul-Rasoul al-Hujairi(38歳)は、サルマニヤ(Salmaniyya)総合病院で医師として勤務していたが、3月19日、用事で出かけたのを最後に行方不明になった。al-Hujairiの家族は数か所の警察署を訪れたが、いずれも彼の行方を知らなかった。報道によれば、3月19日彼の遺体がアワリ(Awali)の外れで発見されたという。当局は3月20日彼の家族に連絡し、サルマニヤ(Salmaniyya)総合病院に遺体を引き取りに来るよう伝えた。直接の死因は不明だが、医師たちはヒューマン・ライツ・ウォッチに、al-Hujairiの遺体には打撲傷やあざが数か所あり、殴られ、車に轢かれた時にできる傷と一致する、と語った。

政府当局はal-Radhiとal-Hujairiの遺体を家族に公開する前に死体解剖を行なっていたが、その理由ははっきりわかっていない。家族がヒューマン・ライツ・ウォッチに語ったことによれば、al-Aradiとal-Hujairは警官、軍隊、武装勢力が設置した検問所、あるいはその付近で殺されたとみられている。

一方、内務省によれば、3月24日以後、政府の治安部隊員4人が反政府デモ隊との衝突で殺されているという。政府の記録では、Ahmad Rashid al-Moraysi(30歳)が3月15日、シトラで「未確認の」車両によって轢き殺され、 Mohammed Faruq Abdal-Samad al-Balooshiと Kashef Ahmad Munthur(21歳)もマナマで「未確認の」車両によって轢き殺された。また3月16日、マナマで治安部隊がデモ隊を鎮圧した際に、シーア派コミュニティオフィサーのJawad Ali Kadhem al-Shamlan(47歳)が死亡した、と内務省は発表した。しかしヒューマン・ライツ・ウォッチは、デモ隊が火器を保持あるいは使用した証拠を確認していないことから、Kadhemは治安部隊の流れ弾が命中して死亡した可能性がある。3月20日、彼の遺体は家族に渡された。

「失踪した人びとが軍附属病院で死亡したことが判明しているが、これは氷山の一角なのではないかと憂慮している。」前出のストークは述べる。「政府当局は、拘束された者の家族全てに拘束の実態の全容をただちに伝えるべきだ。拘束された人びとが死ぬのを待ってからでは遅い。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは2月14日から18日にかけて、デモ参加者への攻撃の最中に治安部隊が7人の殺害に関与したことを記録している。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、7人中6人が散弾銃で至近距離から撃たれ、残るAbd al-Ridha Buhameedは、2月18日に実弾で頭部を撃たれ3月21日に死亡したことを明らかにしている。

また、目撃者らがヒューマン・ライツ・ウォッチに語ったことによれば、治安部隊が3月16日、真珠広場でデモ隊を攻撃した際、催涙ガスにより別の2人が窒息死したという。ヒューマン・ライツ・ウォッチはその身元をまだ確認できていない。

2011214日以降の抗議デモ関連の死亡確認者 一覧表

(死亡日及び死因記載。*印は内務省又はコミュニティオフィサー)

1. Ali Abd al-Hadi al-Mushaima, 23歳(2月14日、散弾)
2. Fadel Salman Matrook, 32歳(2月15日; 散弾銃)
3. Mahmood Makki Ali Butaaki, 23歳(2月17日; 散弾)
4. Ali Mansoor Ahmed Khudair, 52歳(2月17日; 散弾)
5. Isa Abd al-Hussein Abu-Nidal, 60歳(2月17日; 散弾)
6. Ali Ahmed Abdulla al-Momen, 23歳(2月17日; 散弾)
7. Abd al-Redha Mohammed Hasan Buhamid, 33歳(2月21日; 実弾)
8. Ahmed Farhan Ali Farhan, 24歳(3月15日; 散弾銃又はその他の暴動鎮圧機器)
9. Mohammed Eklas (バングラデシュ国籍) (3月15日; 車と歩行者の衝突の可能性)
10. Ahmed Rashid al-Moraysi, 30歳(3月15日; 車と歩行者の衝突)*
11. Jaafar Mohammed Abdul-Ali Salman, 41歳(3月16日; 実弾)
12. Jaafar Abdulla Mayoof, 30歳(3月16日; 実弾と散弾の可能性)
13. Ahmed Abdulla Hasan al-Arnoot, 22歳(3月16日, 散弾)
14. Stephan Abraham (インド国籍) (3月16日; 実弾)
15. Mohammed Faruq Abd al-Samad al-Balooshi(Pakistani) (3月16日; 車と歩行者の衝突)*
16. Kashef Munther, 21歳(3月16日; 車と歩行者の衝突)*
17. Isa Abd al-Radhi, 45歳(3月19日; 日実弾)
18. Jawad Mohammad-Ali Kadhem al-Shamlan, 47歳(3月20日; 実弾)*
19. Abd al-Rasoul Hasan Ali al-Hujairi, 38歳(3月20日; 車と歩行者の衝突、殴打)
20. Bahia Rasoul al-Aradi, 51歳(3月20日, 実弾)
21. Hani Abd al-Aziz Jumah, 32歳(3月24日, 散弾)
22. Isa Mohammed Ali Abdulla, 71歳(3月25日, 催涙ガス吸入)