Police arrest an activist near Independence Square in Minsk on December 20, 2010.

© AFP Photo / Ksenya Avimova

(モスクワ)ヒューマン・ライツ・ウォッチは、本日公表した報告書で、ベラルーシ政府は、現職のアレクサンドル・ルカシェンコ大統領が2010年12月19日の大統領選挙で再選したことに抗議する集会に集まった数百人もの市民を、恣意的に拘禁し虐待を加えたほか、以来、市民社会及び表現の自由を全国的に抑圧し続けている、と発表した。

本報告書「打ち砕かれた希望:ベラルーシ選挙後の弾圧」(全31ページ)は、選挙後の対立候補や活動家の起訴、被拘禁者の虐待、密室裁判、人権団体の襲撃などの多くの人権侵害に関する調査結果を取りまとめている。その他にも、本報告書は、拘禁中の劣悪な処遇や、弁護人へのアクセスの遮断、選挙後のデモ抗議に関して刑事告発の代理人を務める弁護士に対し政府が圧力をかけている実態を詳述している。本報告書は、首都ミンスクで2011年2月に実施した聞き取り調査に基づくものであり、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、これらに留まらない人権侵害により、すでに深刻な状況にあるベラルーシ国内の人権状況は悪化の一途を辿っている、と懸念している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのロシア代表アンナ・セボーティアンは、「ベラルーシ政府は、10年を優に超える長きにわたって市民社会を厳重に統制してきた」と指摘。「これ以上新たな迫害の波が迫れば危機的な状況となる。国連が強固な姿勢で対応することが求められる。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、他の百余の人権団体や活動家とともに、現在ジュネーブで会期を開催中の国連人権理事会に対し、12月19日の大統領選挙後の人権侵害を非難する決議を採択してベラルーシ政府に状況の改善を求めるよう強く求めた。

12月19日、3万人もの市民が首都ミンスクの街に繰り出し、平和的なデモ抗議を行ったのは、まやかしの選挙がまたも行われることを恐れたからである。ルカシェンコ現職大統領の圧勝が宣言された際、数十人の覆面の男たちが主要な政府の建物の窓を壊し始めた。そこへ警察と治安部隊がなだれ込んだ。そして、ほとんどが平和的なデモ参加者であったにもかかわらず、その場にいた人びとを手当たり次第に殴り、転んだ者は蹴り飛ばし、追いかけて捕まえるなどし、暴行は隣接する通りでただ様子を傍観していた人びとにまで及んだ。

当日の夜から数日間で、警察は数百人もの人びとを逮捕。続く2週間で、行政裁判所は、少なくとも725人に対し、刑罰対象に指定されていない集会参加を理由に10〜15日の「行政拘禁」を言い渡した。裁判は密室で行われたほか、通常どおり審問はたった10〜15分で終わってしまった。ほとんどの事件で、被告人が弁護士を依頼することも、証人を呼ぶことも許されなかった。

被拘禁者は、すし詰め状態の監房でその刑期を過ごすこととなった。床の上あるいはベッドを数人で分け合って寝るしかなく、交代で眠ることもあった。監房は凍りつくような寒さで、トイレすら備え付けていなかった、と多くの者が語った。

ベラルーシ政府当局は、12月19日の抗議デモに関連して、大統領候補7名、野党指導者、活動家、政治運動家を含む48人を暴動容疑で捜査中である。そのうち4人がすでに有罪判決を受け、最高で4年の刑が宣告された。元大統領候補2名を含む少なくとも30人が 2011年2月末の時点で依然として拘禁中である。被拘禁者の取調べ中に弁護士を同席させることがまれにあったものの、誰一人として当局の立会いなしに弁護士と秘密面会することはできなかった。また被拘禁者の弁護士らは、法務省や他の政府機関から、公の場でこの案件について口外しないよう警告を受けていたと語る。2011年3月の時点で、弁護士4人が資格を取り消され、1人は弁護士活動を禁止されている。

前出のセボーティアンは「弁護士へ圧力をかけるというような行為は未だ前例がない。法曹界全体に対する政治的に『敏感』な案件から手を遠ざけよ、というメッセージだ。ぞっとする」と語る。「すべての弁護士が嫌がらせや報復を恐れることなく、依頼者を弁護する自由が保たれなければならない。」

抗議デモが起こった夜、警察などの法執行機関はViasna人権センターとCharter97の2団体の事務所を捜索し、スタッフ10名を拘束するとともに、コンピュータや通信機器を押収した。さらに警察は有力な反体制派の活動家の拘束に伴い、Charter97の編集者も拘束した。その後数週間のうちに、これら以外の組織に対しても家宅捜索やスタッフの取り調べが繰り返された。ベラルーシでは、登録されていない組織に所属すると犯罪行為とみなされる一方、当局はほとんどの市民社会団体の登録を許可していないため、活動家たちは訴追の恐れに直面している。

警察及び治安部隊は、ベラルーシ政府から独立した4つのメディアの支局建物とジャーナリスト12名の自宅を捜索し機器を押収。ベラルーシ政府当局はさらに、少なくともラジオ局1局の放送資格を取り消した。インターネット上の情報発信についても、より強力な取締まり権限を政府に与える法律が昨年採択されている。

「ベラルーシ政府は、長年、出版業界や、放送メディア、ネット上のニュースを規制してきた。そのため、NGOのウェブサイトだけが独立した情報源となっている」と前出のセボーティアンは指摘。「今やこの情報源までもが存亡の危機に陥っている。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチはベラルーシ政府に対して次のように要求した。

  • 2010年12月19日の事件に対する透明性のある徹底的な捜査を実施すること。
  • 暴力行為に関与していない者を即時に解放すること。
  • すべての被拘禁者に対し、妨害がなく秘密が守られる形で弁護士にアクセスできるよう保障すること。
  • 弁護士及び市民社会に対する弾圧を止めること。

前出のセボーティアンは「ベラルーシ政府が人権弾圧を強めていることに対し、国連の人権理事会は沈黙を破るべきだ」と述べる。「国連人権理事会が非難決議を採択すれば、べラルーシ政府当局に対して、今なお続く弾圧を止めよ、という強いメッセージとなるはずだ。」