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中国:人権弁護士が違法逮捕の犠牲に 法律活動家とその家族を釈放せよ

政府による超法規的拘束や自宅軟禁などの手法 拡大

(ニューヨーク)-「著名な弁護士3名が今月になって恣意的に拘束された。3名には強制失踪のおそれがある。中国政府は、この3名を直ちに釈放しなければならない。」と、本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。さらにノーベル平和賞受賞者・劉曉波(Liu Xiaobo)氏の妻の劉霞(Liu Xia)氏及び盲目の活動家である陳光誠(Chen Guangcheng)氏とその家族に対する恣意的な自宅軟禁も解除するよう、中国政府当局への要求を改めて表明した。

唐吉田(Tang Jitian)氏、滕彪(Teng Biao)氏、江天勇(Jiang Tianyong)氏の3氏は、それぞれ先週北京市内で公安当局員に連行されたまま消息を絶っている。当局は3氏の家族に対し理由告知はもちろん正式な通知もしておらず、3氏は虐待と拷問にさらされる危険性が高いと考えられる。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア・アドボカシー局長ソフィー・リチャードソンは「中国の民衆が、政府に対し自国の法律を遵守するよう希求する声は日に日に増している」と指摘。「しかし、それに対する中国政府の返答は、弁護士に対する恣意的逮捕、著名な活動家とその家族に対する法を破った無期限拘束。つまり、中国政府が、法手続を大幅に無視・逸脱する度合いが増している。」

2011年2月16日の早朝、警察は唐吉田(Tang Jitian)氏のアパートに押し入ると、間髪おかずに彼を連行。その後、家宅捜査のために戻って来た。江天勇(Jiang Tianyong)氏は2月19日午後北京市内で、兄弟のもとを訪れた際に逮捕された。数人の男が彼を車に押し込み、その後警察が、氏のコンピューターを押収した。中国政法大学の講師である滕彪(Teng Biao)氏も同日午後に逮捕された。警察は翌日に氏の自宅を家宅捜査し、2台のコンピューターと数冊の書籍・書類・DVDを押収した。

3名の活動家は皆、中国語で「維権(Weiquan)」運動という「人権保護」運動のリーダーの弁護士である。近年、政府は彼らの法曹資格を剥奪。権力乱用、誤審による有罪判決、違法な土地接収など、政府当局が政治的に敏感だと考えている事案から手を引こうとしない3氏に対する報復として、中国司法当局はこうした法曹資格剥奪処分を行なったと見られる。

国際法では、政府が個人を拘束している事実を認めず、あるいは、その者の消息や所在を知らせない場合、政府は「強制失踪」を犯していることになる。「失踪」は、拷問その他の虐待の危険性を高める、とヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。

ここ数日の間におきた3名の弁護士の拘束事件。うち少なくとも2名の拘束は、独学で法律を学び弁護活動を行なう盲目の活動家・陳光誠(Chen Guangcheng)氏を巡る最近の事件に起因しているとみられる。陳氏とその家族は、氏が2010年9月に刑務所から釈放されて以来、地方にある陳氏の自宅で、何の司法手続きもなしに厳重な自宅軟禁状態に置かれている。2011年2月10日、陳氏自身撮影した自らの拘束状態と迫害の状況の映像が初めて公表され、法律活動家たちは氏を救出する方策を模索し始めるとともに、陳氏に対する違法な拘束を非難し始めていた。

CNNやニューヨーク・タイムズの記者を含め、陳氏のもとを訪れようとした外国人ジャーナリストは、陳氏の居住する村への出入りを管理する暴漢によって襲撃された。滕氏や江氏などの活動家は2月19日、陳氏の事件について議論をするために北京で会合を持ったが、滕氏及び江氏はその会議の直後に拘束された。

陳氏に対するこうした迫害の実態は、ノーベル平和賞受賞者・劉曉波(Liu Xiaobo)氏の妻、劉霞(Liu Xia)氏への迫害を髣髴とさせる。2010年10月にノーベル賞受賞が発表された後、中国政府は劉霞(Liu Xia)氏を、厳重な自宅軟禁下に置き、外界と連絡をとる自由を段階的に彼女から奪った。2011年2月20日、ワシントン・ポスト紙は4ヶ月前の10月に自宅軟禁下に置かれて以来初めてとなる彼女の言葉を報じた。インターネット上の短い会話で、劉霞(Liu Xia)氏は、中国政府の手で家族とともに「人質」にされている「悲惨な状態」について語った。彼女は、2010年10月11日に警察の付き添いのもと刑務所を訪れて以来、服役中の劉曉波(Liu Xiaobo)氏への面会が許されていない、とも述べた。ノーベル賞受賞者の妻に対するこの恣意的な拘禁は、ノーベル賞の歴史上前代未聞の出来事である。

超法規的拘束や中国の警察用語で言う「軟禁(ruanjin)措置」(soft detention)が多用されるようになってきたのは、08年北京五輪前の時期だった。当時、中国政府当局は、反体制派を刑事裁判にかけて世界的な注目を浴びることを避けつつ、反体制派や政府批判者を鎮圧することに躍起になっていたと考えられる。以来、警察は、軟禁などの違法な恣意的措置の対象となる人びとの範囲を拡大し続けている。そして、いまや、中国政府は、犯罪手段にまで訴えることが増加しており、活動家を脅迫・強制失踪させたり、拉致・暴行したり、家族に報復すると脅したりしている。

恣意的逮捕・自由剥奪の禁止は、中国及び国際人権法の中心的原則である。中国法は、警察に対し、逮捕した者の家族に逮捕後2日以内に通知する義務を課している。無期限の自宅軟禁を認める法は存在しない。

「"軟禁"の何が"やわらか"なのか?-法の保護の埒外での不安な生活なのに?」と前出のリチャードソンは指摘する。「中国政府は、活動家とその家族を、直ちに自由の身にしなければならない。そうしないのならば、法の支配を無視して、活動家たちを圧殺するという中国政府の意思のあらわれといえよう。」

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