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(ニューヨーク)首都トリポリのデモ隊に対し、2011年2月22日及び21日、リビア軍が『無差別』に銃撃を行った、と目撃者たちが証言している。ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日こう述べた。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、この証言を独自に検証できていない。しかし、トリポリの2箇所の病院からの情報によれば、2月20日、銃撃の犠牲となった62名の遺体を安置所に搬送したとのことである。さらに2月22日、ある男性がヒューマン・ライツ・ウォッチに対しスカイプ(skype)での聞き取りで語ったことによると、トリポリのベン・アショア地区周辺で、男たちが車を乗り回しながら通行人たちを銃撃していた、ということである。

トリポリの2箇所の病院の医師たちからメールでヒューマン・ライツ・ウォッチに寄せられた情報によると、2月20日以来少なくとも62人の殺害が確認された。但し、この数字は2箇所の病院に限って確認できた死者数にすぎない。他の目撃者たちがヒューマン・ライツ・ウォッチに語ったところによると、アブサリム病院の死体安置所には、少なくとも50体が安置されており、すべての犠牲者が週末にかけておきた衝突で死亡したとのことである。また、ある医師は、2月21日、トリポリ中央病院に、反政府デモの現場であるグリーン広場周辺からの救急車で12名の遺体が搬送されてきた、と語った。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの中東・北アフリカ局局長サラ・リー・ウィットソンは、「ムアンマル・カダフィ氏を含め、攻撃を命令・遂行しているすべての人が、デモ参加者を違法に殺害するという自ら犯した犯罪行為に対して、法的責任を問われるべきである」と述べる。 「我々は、カダフィ氏が、デモ隊の鎮圧に向けた血まみれの弾圧を停止しなければ、今後、死者数がうなぎ昇りに上昇することを懸念している。カダフィ氏は、ただちに、傭兵を含むすべての軍に対し、停止を呼びかけるべきである。」

2月21日には、世界各地のリビアの幹部層外交官たちが公式にリビア政府を辞任。暴力を終結させるため、強力な国際行動を要求した。リビア国連次席大使は、国際刑事裁判所(ICC)に対し、リビアにおいて重大な犯罪を犯した者たちを、捜査し裁判にかけるよう要求した。

ICC(国際刑事裁判所)は、戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイド(集団殺害)などを捜査・訴追する国際裁判所。当該犯罪に対し管轄権を持つ国の司法が、そうした犯罪を捜査・訴追する意思を持たず、あるいは、その能力がない場合に、管轄権を持つことになる。リビアはICCの加盟国ではないが、非加盟国も、自らの国内で起きたこうした犯罪について、ICCの管轄権を認める宣言を行なうことができる。

2月17日、トリポリでデモが最初に起きた地区のひとつであるファシュローム(Fashloum)地域。その住民たちは、2月21日、政府軍が「無差別」に銃撃した時の状況についてのヒューマン・ライツ・ウォッチによる聞き取りに応じた。1人の女性は、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、ファシュロームでは、2月21日は一晩中銃声が鳴り響き、「彼ら(政府系の軍人たち)は、銃を持って通りをうろついていて、私たちの家の近所を通過するときに無差別に銃撃していたの」と語った。2人目のデモ参加者は、タジョラTajouraでも2月21日の夜中ずっと銃声が聞こえていた、と語った。

首都トリポリの別のデモ参加者は「遺体を片付けに行こうものなら、みんな撃たれてしまう。緑の広場の近くに住む住民たちは、広場に遺体がたくさん横たわっているけれど、誰も手をつけられないで放置されているのを見たと話していた」と話した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは2月21日の夕方、あるデモ参加者にスカイプで聞き取りを行なった。彼は、自分が目撃したことを以下のように証言した。

「トリポリにある病院は、昨夜、輸血用の血液を使い切ってしまった。デモが始まった時、ランドクルーザーが通り過ぎ、前にいた人びとを無差別に銃撃したんです。銃声とそれに伴う大きな爆発音が聞こえました。また、私たちは、軍の制服を着て巨大なマシンガンを持った覆面の男たちが大勢乗り込んだ大型車が、繁華街の方へ向かっていくのを何台も見ました。また、広場では、平服姿の男たちが私たちを撃ってきました。後で聞けば、アブサリム病院にも押し入ったそうです。私は、若い男たちがシャツを脱ぎ捨て、狙撃兵たちにその胸を差し出す光景を見ました。こんな光景を見たのは初めてです。私は、あの時木の下に隠れていた自分をすごく恥じました。でも、私は人間です。そうするしかなかった。」

2月20日、リビア政府治安部隊は、トリポリの裁判所の前にいたデモ参加者の弁護士、裁判官、医師などの専門家たちを武力で追い散らし、その一部を逮捕。これは、父親が逮捕されたというあるデモ参加者が、ヒューマン・ライツ・ウォッチに語ったことである。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、すべての関係各国政府に対し、リビア政府に対する非難の声明をあげるだけでなく、これ以上の流血を防ぐため、具体的な行動をとるよう求めた。具体的には、関係各国政府は、すべての武器及び治安関係装備の禁輸措置、残虐行為が続く限りリビア高官に対する対象限定制裁、すべての犯罪に関する包括的で独立した迅速な捜査の確保、国連安全保障理事会の緊急特別会合の開催などの行動をとるべきである。

前出のウィットソンは、「暴力を非難することは無論重要である。しかし、リビアの指導者の行動を変えるためには、流血を終わらせるための具体的な措置こそが必要とされている」と指摘した。