(パリ) 国際社会と国連はイラン国内で次々と行われる死刑執行に反対の声を挙げるべきだ。ノーベル平和賞受賞者シーリーン・エバーディーと6つの人権団体は本日こう述べた。シーリーン・エバーディーと6団体は、イラン司法権と議会に対し死刑執行の即時全面的モラトリアムを求めた。

これら6団体が入手した情報によれば、2011年になってから少なくとも86人が処刑された。賛同団体となったのはアムネスティ・インターナショナル、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、国境なき記者団、イラン人権国際キャンペーン、国際人権連盟、同団体支部のイラン人権擁護連盟だ。1月に処刑された人のうち少なくとも8人は政治囚で、デモへの参加や反体制組織とのつながりがあるとされ「武力による体制破壊」(モハーレベ)の罪で有罪判決を下されていた。

「イラン当局は、マフムード・アフマディーネジャードの再選に反対する人びとを逮捕し、有罪とするだけでは気が済まないことが明らかになった。いまや死刑執行にも手を伸ばしていることが明らかになった」と、シーリーン・エバーディーは指摘する。

「当局のやり方は、有罪判決を受けた一般刑事囚を大量処刑する際に、同時に政治囚も処刑するといういつものやり方だ。こうした処刑は世界が沈黙し続ける限り続くだろう」とエバーディーは述べた。

死刑執行数が増えたのは2010年12月後半に改正麻薬対策法が施行されて以降のことだ。この改正案は最高評議会(公益判別評議会)が起草し、最高指導者アーヤットラー・アリー・ハーメネイーによって承認された。当局は薬物密輸の取締りを強化するとも言明しており、1月に処刑された人のうち67人が薬物密輸で有罪判決を受けていた。正確な執行数はこれより多い可能性があると6団体は指摘する。公式発表に含まれない死刑執行が刑務所内で行われているとの信頼できる報告があるためだ。

1月にはオランダとイランの二重国籍を持つ女性、ザフラー・バフラーミーも処刑された。氏は大統領戦後のデモに参加したとして逮捕された後、検察から薬物所持と密輸で起訴された。判決は検察庁が確定したため、ザフラー・バフラーミーに控訴する権利はなかった。オランダ当局が介入し、欧州連合(EU)が執行停止を求めたにもかかわらず、検察当局は同氏を事前通告なしに処刑した。弁護士への面会を許可せず、法に定められた執行48時間前の通知も行なわなかった。

「当局は長年にわたり反体制活動家を政治的動機に基づき、アルコールや薬物所持や武器の不法所持などの犯罪容疑で逮捕し、有罪判決を下してきた」とシーリーン・エバーディーは指摘する。「当局は弁護士やジャーナリストを収監しているが、中には私の同僚で、こうした虚偽の容疑で起訴された者もいる。死刑執行の急増、イランの司法制度の透明性の欠如、そして最近の麻薬対策法改正を踏まえると、当局が一般犯罪容疑を口実に反体制派を処刑する危険性は高い。」

最近の一連の死刑執行でサイード・マーレクプールとヴァヒード・アスガリーという男性2人にも処刑の危険性がある。2人は「地上に腐敗を広げた」罪で不公正な裁判を別々に受け、革命裁判所から有罪判決を下されたと見られる。

1月30日にアッバース・ジャアファリー=ドウラトアーバーディー・テヘラン検事長は、名前を示さずに「猥褻なウェブサイトの管理者」2人の死刑宣告を最高裁判所の審査に回したと発表した。イラン国内の人権活動家筋は同検事長がサイード・マーレクプールとヴァヒード・アスガリーに言及したと見ている。

サイード・マーレクプール(35)はウェブデザイナーでカナダの永住権を保持している。氏は2010年11月末にインターネット上に「猥雑」サイトを作成し、「イスラームの神聖性を侮辱」を理由に死刑判決を受けた。逮捕に先立つ2008年、イラン国内の家族を訪れた際、氏はユーザーが写真をアップロードできるプログラムを作成した。このプログラムがポルノ写真を投稿するのに用いられたが、氏は関知していなかった。氏はエヴィーン刑務所で1年以上にわたり独房監禁状態にあり、拷問を受けていると言われる。

ヴァヒード・アスガリー(24)はインドの大学で情報工学を学ぶ学生だが、2008年から現在まで身柄を拘束され、拷問を受けていると伝えられる。氏は2010年後半に裁判にかけられたと見られるが、判決の公式発表はない。

ユーセフ・ナダルハーニーの事件も懸念を呼んでいる。氏はイラン北部の400人の信徒がいる教会の牧師で、当局によって2009年10月に逮捕された。そして「イスラームの棄教」を理由に2010年9月に死刑判決を受けたが、そのような罪はイラン刑法に現存しない。氏は最高裁判所に上告中だ。

1月26日に当局は、サイード・アリー・ガラバードを「堕落教唆」と「背教」を理由にアフヴァーズ市のカールーン刑務所で処刑したと発表した。氏は、当局の発表によれば、シーア派第12代イマームと通じているとの虚偽の主張を行っていた。イランで多数を占めるイスラーム教シーア派の十二イマーム派では、第12代イマームは現在「お隠れ」の状態にあり、正義をなすために地上に戻ってくると考えられている。

信教の自由は国連の市民的及び政治的権利に関する国際規約(ICCPR)によって保証されており、イランも同規約を批准している。規約では改宗も権利として認められている。

イランは中国に次ぐ世界第2位の死刑執行数を数える。現在も数百人が確定死刑囚となっており、犯行を行ったとされる当時に18歳未満だった者が140人を越えている可能性がある。国際法は犯行時18歳未満だった人物への死刑執行を禁じている。

この大量殺人に終止符を打つため、各国はイランに対しこうした事例に関する死刑執行を直ちに停止し、国際法上の義務を尊重するよう求めるべきだと、シーリーン・エバーディーと6つの人権団体は述べた。

イランは過去5年にわたり、国際人権メカニズムに基づく調査を阻止するため一貫した努力を行ってきた。この事実を踏まえ、シーリーン・エバーディーと6団体は、各国が国連人権理事会の次回会期を利用し、イランの人権状況を調査・報告するマンデートを備えた国連事務総長特使を任命するよう求めた。

背景情報

イランでは現体制が確立した1979年以降、様々な容疑で男女数千人が処刑されている。

自由権規約第6条(2)は以下のように定めている。「死刑を廃止していない国においては、死刑は、犯罪が行われた時に効力を有しており、かつ、この規約の規定及び集団殺害犯罪の防止及び処罰に関する条約の規定に抵触しない法律により、最も重大な犯罪についてのみ科することができる。この刑罰は、権限のある裁判所が言い渡した確定判決によってのみ執行することができる。」

イランは、死刑廃止を目指す自由権規約第2選択議定書にいまだ調印しておらず、最近では12月に行われた、死刑執行のモラトリアムを呼びかける一連の国連総会決議にも反対票を投じてきた。

人権団体は、今回の声明に加わる6団体も含めて、逮捕から裁判に至る過程で生じた多数の人権侵害行為を記録してきた。具体的には、拷問に相当する精神的圧力や、起訴された罪状の「告白」の強要、長期の独房拘禁、弁護士へのアクセスの拒否などが挙げられる。

さらにイラン憲法第168条が「政治犯罪及び出版犯罪」は公開審理を定めているにも関わらず、革命裁判所は大半の審理を非公開で行っている。

多くの場合、ザフラー・バフラーミーの事例のように、死刑を宣告された被告の弁護士は、48時間前の通告が法で定められているにも関わらず、執行後にようやく依頼人の執行を知らされる。