Secretary-General Ban Ki-moon (center) addresses the December 10, 2010 LGBT panel event at the UN in New York.

© 2010 UN Photo

国連総会で、とても稀な「再投票」が行なわれました。超法規的処刑から人びとを保護する決議に関する「再投票」の結果、我々の長年の活動の成果が実り、圧倒的多数の国々が、レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー(LGBT)の人びとにも、その他のあらゆる人と何ら変わることなく、超法規的処刑からの保護が必要だ、とする賛成票を投じたのです。

「同性愛嫌悪及び性的指向と、世界各地でおきている憎悪殺人の間には関連性がある」と国連の拷問問題の特別報告者が立証したのは10年以上前。その勧告に基づき、1999年、超法規的処刑に関する国連決議に、性的指向の条項が加えられました。しかし、人権に関する国連の委員会は、2010年11月の会合で、この決議の性的指向に関する条項を削除してしまったのです。LGBT条項削除に向けて、国連内のロビイングの陣頭指揮を執ったのは、イスラム諸国会議機構(Organization of the Islamic Conference)加盟国とウガンダ・南アフリカ・ルワンダなどの国連のアフリカグループ(United Nation's African Regional Group)に属する国々の一部でした。表向き、LGBT条項削除に向け諸国政府が掲げた理由は、宗教と文化でした。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのLGBTの権利プログラムのボリス・ディートリッヒは、ヒューマン・ライツ・ウォッチが共催する12月10日の国際人権デーの国連イベントを、この修正に反対する再投票に向けた機会にできる、とすぐに気がつきました。潘基文(パンギムン)国連事務総長とスーザン・ライス米国国連大使を招待したこの国連イベントで、潘事務総長もライス国連大使も、これに賛成。潘事務総長は、この国連人権デーのイベントの開催にあたり、「同意に基づく同性愛行為を犯罪とする法律の撤廃を求める」と呼びかける演説を行ないました。そして、基調演説を行なったライス米大使は、11日後の国連総会で問題となっている修正に関する討議開始を提起する、と表明したのです。

国連総会における討議再開までの限られた時間で、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、この「同性愛者敵視修正」を取り消すことに賛成の国を多数派にするため、あらゆる力を投入し、強力なキャンペーンを開始しました。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ南アフリカ代表シフォ・ムハティも、このキャンペーンで大きな役割を果たしました。彼女は、南アフリカ政府への働き掛けを強化。同時に、南アフリカの国内のLGBTの権利団体も巻き込んでいきました。前出のボリス・ディートリッヒは、南アフリカの著名なテレビ番組に出演し、この国連決議「修正」問題に対する南アフリカ政府の姿勢に疑問を投げかけました。LGBTの人びとの保護をしっかりと規定している南アフリカ憲法に反して、 南アフリカ政府は、LGBTの保護を削除する修正案に賛成票を投じていました。

一方、ヒューマン・ライツ・ウォッチの国連担当フィリップ・ボロピオンと前出のボリス・ディートリッヒは、討議再開に先立ち、出来る限り多くの外交官と接触しました。こうした接触が、カリブ共同体(カリコム:Caricom)の7ヶ国をはじめとする多くの国々からの新たな支持獲得に結びついたのです。コロンビアやスリナムの国連外交団との会談を行なった前出のディートリッヒは、それらの国々の国内のLGBTの権利活動家たちにも結集を要請。問題の国連決議「修正」への自国の賛成投票に異議を唱えてほしい、と提案しました。こうした活動が実り、南アフリカも、コロンビアもスリナムも、投票行動を変えたのです。

国連総会での最終投票の際、ルワンダの国連大使も、この問題の「修正」を取り消すよう強く求める演説を行ないました。アルゼンチン・ベルギー・ブラジル・フランス・オランダ・ノルウェー・ガボンなどの政府の力強い協力を得ながら、私たちヒューマン・ライツ・ウォッチは、賛成94ヶ国という圧倒的多数により、LGBTの人びとも保護され続けると確約する決議の復活を実現したのです。