著名な科学者や倫理学者のグループが、医学的な必要がなく、同意もなしに行われるインターセックスの子どもへの手術廃止を求める新たな論文2編を発表しました。
本論文2編が発表される直前には、国連人権理事会がインターセックスの人びとの権利に関する初めての決議を採択しました。この2編の論文は、性的特徴の多様性(「インターセックス特徴intersex traits」とも言われる)を持って生まれた人びとが経験する人権侵害に対処しようという国際社会の決意の高まりを象徴するものです。
1950年代以降、外科医らは、インターセックスの子どもに対して、傷跡や不妊、精神的外傷をもたらしうるクリトリスの縮小手術など不可逆的で医学的な必要性のない「正常化」手術を行っています。インターセックスのアドボカシー団体やさまざまな医療団体や人権団体は、こうした手術を止めるよう何十年にもわたり訴えてきました。廃止に向けたコンセンサスが強まり、世界が禁止の方向に動いているにもかかわらず、まだ幼すぎて意思決定に参加できない子どもに対してこうした手術を受けさせるべきだというプレッシャーを外科医からかけられる親たちも依然として存在します。
今回の論文の著者の1人は、10歳未満の子どもを対象とした選択的「正常化」手術のサンプル調査で、性器の外観について外科医が抱く主観的な審美的好みが、報告件数が最も多かった正当化理由の1つであることを明らかにしました。性器の外観の審美性を測定する有効な基準がないため、データには外科医の主観的な説明が使われていました。世界保健機関(WHO)職員5人を含む論文執筆チームは、「立法機関および医療規制機関は、本人による完全で自由なインフォームドコンセントなしに行われる、不可逆的で選択的「性の正常化」介入を終わらせることを目指すべきだ」と結論づけました。
もう1本の論文は、医師、倫理学者、心理学者など、世界数十名の専門家が共同執筆したもので、子どもの性器に対する「正常化」介入が及ぼす倫理的影響を検証する内容です。著者たちは、臨床医は「子どもの性的特徴や社会的に割り当てられた性別のいかんに拘わらず、子どもの身体的健康を保護するために緊急に実施する必要がある場合を除いて、いかなる非自発的な性器切除や手術も行ってはならない」との結論を示しています。
両論文は共に、完全に健康に生まれた―ほんの少し違うだけの―子どもたちが、成長して自分の体についての決定を自ら下せる自由を持つべきだと主張しているのです。