(ニューヨーク) - 今週行われる国連のビルマの人権状況審査は、軍政のうわべだけの約束ではなく現実を反映したものでなくてはならない、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日こう述べた。

1月27日、ジュネーブの国連人権理事会で、ビルマに対する第一回の普遍的・定期的レビュー (UPR。普遍的定期的審査とも)が行なわれる。UPRは、人権状況の改善度合を確認するために、すべての国連加盟国に4年毎の審査を義務づけるものだ。ビルマ現政権・国家平和発展評議会(SPDC)の審査日直後の1月31日には、2010年総選挙結果に基づく議会が首都ネピドーで初召集される。大統領が選出され、現役あるいは最近退役した将校がすでに大多数を占める新政権が誕生する。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ副アジア局長エレイン・ピアソンは「今回のUPRは、世界で最も残忍で非妥協的な権威主義的体制を取る国家に焦点をあてる好機だ」と述べる。「ビルマの人権状況は依然深刻だ。2010年の不正な選挙に基づく議会が開催されたところで、誰の目も偽ることはできない。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは国連加盟国に対し、ビルマ軍事政権に、国内の人権侵害の深刻さと規模、その組織性について、また現状打開に向けた有効な手段を講じる必要性について問いただすよう強く求めた。国連人権理事会はビルマ国民への人権侵害行為の組織的実態を強く非難する決議をこれまでも採択している。国連総会も同様だ。だがこれらの決議が行う勧告を、ビルマ政府はほぼすべて履行していない。これは深刻な懸念の対象であり、UPRで取り上げられるべきだ。

UPRに際してビルマ政府が提出した報告書には以下のような主張が並び立てられている。すなわち、司法制度改革の進展、2008年憲法の基本的権利と国民の義務に関する諸条項の国際条約との合致、軍隊や行政機構、教育機関での人権教育の増加、設置したての人権機構が国内人権機関の地位に関するパリ原則と合致した人権委員会として完全な形をまもなく取るという見通しなどだ。

軍事政権は子ども兵士の復員についての国連との協力、また国連カントリー・チームとの共同作業を改善の証拠としているが、2010年には軍主導の総選挙が行われたため、包括的な措置はほぼ中断していた。ビルマ政府は子ども兵士採用防止委員会を設置したが、子ども兵士の採用を削減する効果的措置をとっておらず、強引な採用に関わった軍当局者を十分に処罰することもできていない。子ども兵士採用停止に関する国連の行動計画は国際基準を満たすものだが、ビルマ政府との間で最終合意に至っていない。ビルマ政府はまた、非国家武装組織による子ども兵士の採用と使用に関する国連カントリー・チームのモニタリングの取り組みを厳しく制限した。

「国連加盟国はレトリックを改善と取り違えてはならない」と、前述のピアソンは指摘する。「ビルマ政府の協力姿勢は形ばかりで、国際的な批判をかわすためにぎりぎり最低限の措置を講じているだけ。自国民の権利擁護に向けたまともな取り組みはなされていない。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、新たな装いの裏にある、ビルマ国民にとっての相変わらず悲惨な現実こそが報告されるべきだと述べた。この数年でまったく改善されておらず、さらに悪化している場合も多いビルマの深刻な人権問題について、ヒューマン・ライツ・ウォッチはUPR に提出した資料で言及している。具体的には以下の通りだ。

表現・結社の自由

ビルマでは、表現と平和的な集会、ならびに結社の自由に関する権利などの基本的人権に対する組織的な制約がいまだ課せられている。例えば、ビルマは結社の自由に関する国際労働機関(ILO)第87号条約を批准しているにも関わらず、政府は国内で政府から独立した労働組合を登録することを拒否し続けている。 2010年総選挙は、立候補者と国民に対し、威圧的な雰囲気が存在し、表現、集会、結社の自由が厳しく統制される中で行われた。

恣意的拘禁と虐待

2010年11月中旬に民主化指導者アウンサンスーチー氏が釈放されたものの、ビルマ政府は現在も2,200人以上の政治囚を投獄している。かれらは政治活動家やジャーナリスト、労働組合員、労働運動家、アーティスト、仏教僧侶と尼僧、長年の反体制派の活動家などだ。多くに重刑が科せられており、最長で65年の刑を宣告された人もいる。非暴力による反体制活動や表現の自由を押さえ込もうとする不公正な裁判で刑事責任を問われた結果だ。ビルマの刑務所の状態は国際基準を下回る。囚人は十分な医療を受けることができず、日常的な虐待や時には拷問を受けるほか、家族や国連職員がなかなか訪問できないように遠隔地の刑務所に移送されることもある。ビルマ政府は赤十字国際委員会(ICRC)に対し、同委員会の標準手続に従った国内刑務所へのアクセスを2006年以降認めていない。

法の支配の尊重

深刻な人権侵害を行った政府職員と軍人の責任を問わない実態は、公平性と独立性が欠落した司法制度が支えている。ビルマ東部や西部の紛争地帯で政府の治安部隊が重大な犯罪(非戦闘員への攻撃、強制労働の日常的な使用、成人および未成年女性への性暴力、子ども兵士の採用と使用、非戦闘員の超法規的処刑などの国際法違反行為)を行っても、責任はほとんどと言っていいほど問われてこなかった。非国家武装勢力の一部も強制労働や子ども兵士の使用など深刻な人権侵害に関与している。

民間人の保護

紛争地域の民間人は政府軍と非国家武装勢力の人権侵害の被害に遭う。こうした地域の一部で、ビルマ国軍は民間人を標的にした「確認次第射殺」活動を続けている。また地域住民の強制移住や強制排除、安全確保や商業活動を目的とした土地の接収のほか、一部地域では、反ゲリラ戦略の一環として、駐屯地近くに特に設定した再定住地に住民を強制移住させている。ビルマ東部での戦闘は最近3ヵ月で激化しており、タイへの難民流出も増えている。

強制労働

数年にわたるILOとの協力関係、強制労働事件の調査に関してILOとビルマ政府が設置した機構の存在にも関わらず、強制労働は非ビルマ民族居住地域で依然活発に行われている。紛争地域の民間人が国軍部隊のための物資運搬役に徴用される事例が引き続き報告されている。また民間人の話によれば、道案内役を特に恐れているという。これは人間地雷探知機役を意味することもある。国軍が従来の作戦行動でも行ってきた活動だ。

マイノリティ

西部ビルマのロヒンギャ・ムスリムの状況は非常に深刻だ。ロヒンギャはビルマ国民として認められておらず、人びとは移動の自由や基本的な医療へのアクセス、生計手段、教育に対して厳しい制限を課せられており、国軍部隊や準軍事組織の国境警備隊(ナサカ)の虐待にも日常的にさらされている。ロヒンギャ数千人がビルマを逃れ、隣国バングラデシュに入国したり、海路を使ってマレーシアやタイに渡ったりしている。

「ビルマの人権侵害状況は国連の重要な関心事の一つだが、改善のためには楽観的観測ではなく原則に基づいた圧力が必要だ」と前述のピアソンは指摘。「UPRによって国連にかつを入れなければならない。そして不処罰の蔓延を終わらせること、また議会の内外での、国軍支配を確実にするための司法制度のゆがみを直すことを求める。」