Otis Bantum Correctional Center, a New York City Department of Correction facility on Rikers Island that houses detained adult men.

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(ニューヨーク)-「ニューヨーク市では、毎年、数千人もの軽犯罪の容疑者が、少額の保釈金を支払えないだけで、未決拘禁されている」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日公表した報告書で述べた。ニューヨーク市では、保釈金を納められない被疑者は刑務所に送られ、未決拘禁囚として拘束される。

報告書「自由の対価:ニューヨーク市における貧困層の軽犯罪容疑者 保釈と未決拘禁の実態」(70ページ)は、問題の重要性を浮き彫りにしている。本報告書は、従来は非公開だった文書及び判事・被告人・検察官・弁護士への多数の聞き取り調査をもとに作成された。2008年中に軽犯罪容疑で逮捕された被疑者のうち、1,000ドル以下の保釈金と決定された人びとのうち実に87%が、罪状認否手続の際に保釈金の全額を納められなかったという理由で拘禁されていた。こうした人びとは、平均すると、軽犯罪容疑で約16日間未決拘禁されていた計算となる。その殆どは、万引き・無賃乗車・公共の場でのマリファナ吸引・麻薬所持・不法侵入・売春などの非暴力的な軽犯罪の容疑者たちだ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの米国プログラム上級弁護士であるジャミー・フェルナーは報告書で以下のように述べる。「毎月の家賃を支払うのにさえ汲々としている人びとにとって、保釈金1,000ドルは、通常にとっての100万ドルと同じ意味を持つ。とにかく、工面できないのだ。保釈金制度は、公判前の未決期間の自由を買う金がない貧困層を罰する制度となっている。」

ニューヨーク市の条例によると、保釈金の金額は、容疑者の資力を考慮して、容疑者の法廷への出頭を確保するために必要な合理的な計算により決定することになっている。しかし、故意、怠慢、はたまた過失なのかは不明だが、ニューヨーク市の判事は貧困層の容疑者にとっては多額すぎる保釈金額を決定するのが常である。昨年刑務所送りとなった者の内、約1/4(23%)が、保釈されなかった未決拘禁の軽犯罪容疑者だった。そのためのニューヨーク市の出費は相当な額に上る。例えば、ヒューマン・ライツ・ウォッチの試算によると、ニューヨーク市が2008年中に1,000ドル以下の保釈金を納められなかった軽犯罪容疑者16,649名を拘禁していなければ、同市は少なくとも4,200万ドルを節約できたことになる。

この事態を解決するための代替案が模索されている。その一つが、釈放された公判前の容疑者を地域で監視するプログラム(公判前監視:Pretrial supervision)で、これは釈放された人の法廷への出頭の確保するための、拘禁にかわる有効な代替案である。このシステムは推定無罪の原則に沿っているだけでなく、刑務所に日夜収監された囚人に住居・食事・保護・医療を提供するよりもはるかに安上がりなのだ。しかしながら、ニューヨーク市には、軽犯罪容疑者に対する公判前監視プログラムがなく、最近になって特定の重犯罪容疑者に対する試験プログラムが始まったばかりである。

「刑務所は人間性を喪失させる場所であるだけでなく、時に暴力に満ちている」とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べる。容疑者を刑務所へ収監することにより、家庭全体の収入減を招くだけでなく、容疑者の子どもも、両親や保護者の不在で大きな犠牲を強いられる。そのため、多くの容疑者は、未決拘禁を避けるため、若しくは終わらせるためだけの理由で、容疑を認めざるをえない立場に追い込まれている。事際に、ニューヨーク市で有罪判決が言渡された軽犯罪事件の99.6%が、有罪答弁に基づく。

判事は、容疑者が保釈されれば法廷に出頭しないと考え、保釈されないように被告人の資力を越える額の保釈金を意図的に決定しているのかもしれない。しかしながら、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、法廷への不出頭はニューヨーク市で深刻な問題ではないと明らかにした。裁判所の事件処理記録によれば、釈放された容疑者の84%が全ての裁判手続に出頭している。そして、予定された裁判に出廷しなかった者の殆どが30日以内に、法廷に出頭している。

ニューヨーク市の判事は、現金若しくは担保付保釈金を納める条件で、保釈の決定をする。しかし、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、「容疑者の資力の有無によって公判前の身体の自由が左右されないような、『担保不要の保釈』などの他の選択肢を考慮すべきだと指摘。例えば容疑者が法廷に出頭しなかった場合にのみ特定の金額を支払うことを約束するような、担保不要の条件での保釈である。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、貧困層の軽犯罪容疑者が保釈金を納められず未決拘禁されるという未決拘禁の不平等問題に対処するために、以下に掲げる2点を提言している。

  • ニューヨーク市の判事は、保釈決定に際して、担保不要の保釈金決定も選択肢とするなど、容疑者の資力にあわせて保釈金措置をより慎重に調整するべきである。そうすればより多くの容疑者の保釈が可能となる。
  • ニューヨーク市は、自身の誓約書では釈放されず保釈金を納める資力がない重犯罪者以外の容疑者を、公判前に釈放して監視するプログラムを導入するべきである。

「ニューヨーク市では、軽犯罪の容疑者に対する未決拘禁問題という不正義が毎日行なわれている」と前出のフェルナーは語る。「数百ドルの金がないために人びとを投獄するのは、公正・犯罪抑制・良識に反するのは勿論、金銭的な節約効果にさえ帰するところが全くない。」