サキーネ・モハンマディー・アーシュティヤーニー被告 

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(ベイルート) - サキーネ・モハンマディー・アーシュティヤーニー(43)被告がテレビで自白を行った。「イラン政府による同氏の処刑が近いのではないかとの深刻な懸念がいっそう強まった。」ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日このように述べた。

アーシュティヤーニー被告は2006年に姦罪で起訴され、投石刑による死刑判決を宣告された。氏が夫の殺害への関与を認める自白が2010年8月11日に国営テレビで放映された。イラン政府当局はここ数週間、投石刑に対する国際社会からの非難に対し、氏が実際に夫を殺害したと繰り返し主張してきていた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチで中東の女性の人権問題を調査するナディヤ・ハリフェは「イランで政権を担う男たちは本当に恥を知らないようだ。投石刑による死刑をまず宣告し、次にテレビでの自白などという手段にまで及んだ」と述べた。「一連の経緯を考えると、この『自白』が強制されたと疑う十分な理由がある。」

テレビに映ったアーシュティヤーニー被告の顔はぼやけており、音声は母語のアーゼリー語からペルシア語への吹き替えが流れた。氏は前の代理人モハンマド・モスタファーイー弁護士を非難。同弁護士は、イラン治安部隊から、本人と家族を逮捕するとの脅迫を受けノルウェーに亡命したが、これについてアーシュティヤーニー被告は、自分の裁判を外国に亡命するために利用したと批判した。

この4日前、アーシュティヤーニー被告は英ガーディアン紙に対し、2006年裁判所は夫の殺害に関わったという自分の容疑に対し「無罪」を言い渡したと、仲介者を通して述べていた。

アーシュティヤーニー被告は、「イラン当局は嘘をついている。私の事件が国際的な注目を集めていることに当惑し、どうにか注意をそらし、そして私を密かに殺そうとしている」とも英ガーディアン紙に訴えていた。

2006年5月15日、東アゼルバイジャン州の刑事裁判所はアーシュティヤーニー被告に対し、夫が2005年に死亡した後に2人の男性と「不義の関係」を持ったとして有罪判決を下した。この裁判で鞭打ち刑が宣告され、99回の鞭打ちが行われた。2006年9月、これとは別に、政府は「イサ・T」と呼ぶ人物をアーシュティヤーニーの夫の殺害容疑で起訴し、同氏も共犯として起訴した。

これと同時に、夫が亡くなる以前に起きたとされる事件に基づく姦通罪でも別途裁判が行われ、アーシュティヤーニー被告は「婚姻中の姦通」で有罪とされた。裁判で、氏は捜査段階での自白を撤回。自白は脅迫によるものだと主張し、現在まで容疑を否認している。

イラン刑法では、姦通罪などハッド刑(戒律に反する行動をとった個人への身体刑)に関して、直接的な証拠がない場合には裁判官が自らの「知識」を用いて被告が有罪かどうかを決定することができる。モスタファーイー弁護士は自身が運営するブログに投稿し、姦通罪について担当裁判官5人のうち2人がアーシュティヤーニー氏を無罪としたが、残りの3人が自らの「知識」に基づき有罪とした。つまり氏は3対2の多数決で有罪とされたと述べた。

モスタファーイー弁護士と、アーシュティヤーニー被告の現在の弁護人であるジャーヴィード・キヤーン弁護士は複数の公の発言のなかで、アーシュティヤーニー被告は殺人罪では起訴されておらず、2006年の公判では最終的に「公安を乱した」ことを理由に刑務所行きと宣告されたに過ぎないと指摘。殺害された夫の遺族は、アーシュティヤーニー被告及び共犯とされる人物とを共に最終的に赦しており、イラン刑法の規定に従って死刑は免除される。殺人の実行犯として起訴された男性の方は遺族に賠償金を払って釈放されたが、アーシュティヤーニー被告には「公安を乱した」として10年の刑が宣告された。さらに、これとは別に前述した姦通罪の裁判による死刑判決が現在も有効だ。

キヤーン弁護士はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、依頼人が今回国営テレビで行った自白は当局から強要されたものだと語った。そしてこれは一種の「パントマイム」であり「どう見ても彼女は[圧力を掛けられている]。そうでないとしたら驚くほかない」と述べた。同弁護士はまたヒューマン・ライツ・ウォッチに対して、アーシュティヤーニー被告の死刑執行に関する最高裁の判断を待っており、数日中に結論が出ると話した。また刑務所当局はここ数日面会を許可していないとも付け加えた。

この一件に国際的な注目が集まったため、司法権は7月12日に投石刑判決を一旦停止した。しかし当局筋は絞首刑の可能性を示唆している。8月1日に、ブラジルのルラ大統領はアーシュティヤーニー被告を難民として受け入れると表明したが、イラン政府側は提案を拒否した上で、ルラ大統領はこの件について十分な情報を持っていない、と述べた。

イラン政府当局は2006年からアーシュティヤーニー被告を東アゼルバイジャン州タブリーズ刑務所に収容している。ムスタファーイー弁護士は当局から逮捕状が出た後イランを出国したが、当局は氏が姿を消した段階で妻のフェレシュテフ・ハーリミと義理の兄弟ファルハッド・ハーリミを逮捕し、1週間以上拘束した。

モスタファーイー弁護士は8月2日にトルコで、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に第3国での庇護を求めた。そして8日にノルウェー政府から難民として認められ、同国に入国した。同弁護士は、死刑判決を下された複数の少年事件での弁護活動にも長い間関わっていたが、イラン政府は、同弁護士が、本人も設立に関わったこうした未成年者のための基金に関して、不適切な金銭の流れがあると非難している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの死刑に対する立場は、「残虐で非人道的で不可逆的な性質の刑罰であり、いかなる場合でも行われるべきでない」というものである。