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ルワンダ:大統領選挙に向け、現政権に批判的なグループに対する弾圧 強まる

2010年8月9日に予定されるルワンダの大統領選挙を前に、政治的弾圧と言論の自由の制限が強まっている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、過去半年の間に、野党勢力やジャーナリスト、NGO活動家、反体制活動家などに対する脅迫や、嫌がらせなどの人権侵害を明らかにしてきた。これらの人権侵害は、行政処分から、逮捕や殺人にまで及ぶ。

今回の大統領選挙への立候補者は、現職のポール・カガメ大統領(ルワンダ愛国戦線、RPF)、ジョン-ダマスネ・ンタウクリヤヨ(Jean-Damascène Ntawukuriryayo:社会民主党)、プロスぺー・ヒギロ(Prosper Higiro:自由党)、アリベラ・ムカバランバ(Alivera Mukabaramba:進歩調和党)の4名。

カガメ現大統領に挑む3候補は、有力な対抗馬ではないとされている。これら3党(社会民主党、自由党、進歩調和党)は、カガメ現大統領のルワンダ愛国戦線(RPF)への大幅な支持を表明してきており、ルワンダ国民も「真の」反対勢力とはみなしていない。

これに対し、RPFの政策を公に批判してきた3党(PS-インベラクリ党、民主緑の党、FDU-インキンギ党)は立候補者の擁立を許されなかった。民主緑の党、FDU-インキンギ党は登録を阻止され、PS-インベラクリ党の党首は拘束中のためである。これらの党の党員は、脅迫や嫌がらせの被害に遭っている。

更に、独立したジャーナリストの多くは発言の自由を奪われ、主要2新聞は発刊停止となった。

大統領選挙直前20101月~7表現・結社・集会の自由への攻撃強まる

以下の記述は2010年8月9日の大統領選挙を前に、同年1月から7月末までのルワンダで起きた表現・結社・集会の自由の権利に対する侵害と関連する事件を時系列にまとめたものである。ヒューマン・ライツ・ウォッチが関係資料に掲げた文書は、これらの事件のいくつかに関する追加的情報を提供している。

この時系列の記録は特に野党党員・ジャーナリスト・NGOに影響を及ぼした事件に焦点を当てている。しかし、すべての事件を網羅しているわけでなく、ヒューマン・ライツ・ウォッチはこれ以外の事件についても発表してきた。

1月16日

FDU-インキンギ党(FDU-Inkingi)代表ビクトワール・インガビレ・ウムホザが16年間の亡命後、ルワンダに帰国。

1月から4月

インガビレは武装グループ、とりわけルワンダ解放民主軍(FDLR)への協力疑惑に関して警察で頻繁に尋問を受けた。FDLRはコンゴ民主共和国で活動している武装集団で、1994年のルワンダ大虐殺を実行した者の一部が所属している。同氏はまた虐殺を正当化するイデオロギー法と民族的対立を扇動している政府を公に批判したために、取調べを受けている。これらの非難は、キガリのルワンダ大虐殺追悼式における同氏の発言に一部関係している。その発言で彼女は、一般に認識されている大虐殺に加えて、フツ族に対する虐殺もあったことを認識し、それらの犯罪に対して法の正義が実現するよう求めた。

1月から5月まで

地方自治体は民主緑の党(もう一つの野党)とFDU-インキンギ党が、政党として登録するための条件の一つである議会内での会合を開くことを繰り返し認めていない。そのため、両政党とも未だに政党として登録されていない。

2月4日

FDU-インキンギ党の党員であるジョセフ・ンタワングンディ(Joseph Ntawangundi)がキガリのキニンニャ(Kinyinya)にある地方自治体の事務所の外で暴行を受ける。

2月4日

民主緑の党代表のフランク・ハビネザ(Frank Habineza)は、キガリにあるレストランで何者かに脅迫される。

2月6日

ンタワンガンディが、虐殺関与容疑で逮捕される。

2月21日

野党PS-インベラクリの会合が、党内反対派により混乱状態に。

2月22日

裁判所は独立した新聞社ウムセソ(Umuseso)所属のジャーナリスト3名、編集長のディダス・ガサナ(Didas Gasana)、元編集長のチャールズ・カボネロ(Charles Kabonero)、記者のリチャード・カイガンバ(Richard Kayigamba)に対し、2009年に開始した裁判で、同新聞に載せた記事が名誉棄損であるとし、有罪の判決を言い渡す。カボネロは懲役1年、ガサナとガイガンバはそれぞれ懲役6か月の刑に処され、また3名にはともに100万ルワンダ・フラン(約1,755米ドル)の罰金も課せられた。

2月28日

元ルワンダ政府軍幹部である、フォスティン・カユンバ・ニャムワサ(Faustin Kayumba Nyamwasa)が南アフリカに亡命し、ルワンダ政府とポール・カガメ大統領を非難し始める。

3月3日

元ジャーナリストで亡命した反政府活動家、デオグラティアス・ムシャイディ(Deogratias Mushayidi)がブルンジで逮捕される。

3月5日

ブルンジ警察はムシャイディをルワンダ当局に引き渡す。

3月10日

出入国管理局がヒューマン・ライツ・ウオッチのルワンダ担当上級調査員、カリナ・テルツアキアン(Carina Tertsakian)の労働ビザを取り消す。

3月17日から24日

FDU‐インキンギ党のンタワンガンディが、虐殺事件の裁判のために設立したコミュニティベースの裁判所である、ガチャチャ法廷に出廷する。当初無罪陳述をしていたが、それを変えて虐殺に関与したことを自白。懲役17年を言い渡される。

3月17日

PS-インベラクリ党内の反対派が、同党の創設者であり党首でもあったベルナルド・ンタガンダ(Bernard Ntaganda)を失脚させようと活動した後、クリスティン・ムカブンナニ(Christine Mukabunani)を新しい党首に指名。

3月19日

ムシャイディが、とりわけ国家の安全を脅かし、テロリスト集団へ協力し、そして虐殺、虐殺イデオロギー、分割主義を軽視したとして、告訴される。

3月23日

インガビレがキガリ空港で警官に止められ出国を阻止される。

4月5日

上院の審理で上院政治委員会の委員たちが、ンタガンダに対する虐殺イデオロギー法への告発は十分な裏付けがあると主張している。上院はンタガンダが公に行った政府批判が虐殺イデオロギー法に反しているため、彼を2009年末に2度喚問している。

4月13日

メディア協議会(Media High Council)がウムセソ(Umuseso)とウムヴギジ(Umuvugizi)という独立した新聞を6ヶ月間発刊停止に。

4月21日

ウムヴギジ新聞の編集長、ジョン-ボスコ・ガサシラ(Jean-Bosco Gasasira)は繰り返し脅迫を受けた後、ルワンダから逃亡。

4月21日

インガビレが、虐殺イデオロギー法、分割主義、テロリスト集団との協力に対する罪で逮捕される。

4月22日

インガビレは釈放されたがキガリ外への外出は禁止される。

4月23日

控訴裁判所はガサシラに対し、2009年に始まった、名誉毀損とされた新聞記事に関する裁判で、有罪判決を下した。ガサシラは多額の罰金と損害賠償金を課せられた。

4月23日

テルツアキアンの二度目の労働ビザが、ルワンダでの合法的滞在が期限切れとなる前日に却下され、4月24日には同国から出国を余儀なくされた。

5月24日

ウムセソ新聞編集長ディダス・ガサナ(Didas Gasana)は繰り返し脅迫を受けた後、ルワンダを逃亡。

5月28日

米国人被告側弁護士、ピーター・アーリンダー(Peter Erlinder)は虐殺を軽視し、悪意的な風評を広め、国家の安全への脅威となったとして逮捕。

6月7日

アーリンダーが保釈を拒否される。

6月17日

アーリンダーが医療上の理由で保釈される。

6月19日

南アフリカに亡命中の元ルワンダ政府軍幹部、カユンバ・ニャムワサの暗殺未遂事件が起きる。

6月24日

ンタガンダが逮捕される。

6月24日

キガリにおいてPS-インベラクリ党員数名が米国大使館外で逮捕され、FDU-インキンギ党党員数名も司法省外で逮捕される。

6月24日

ウムヴギジ新聞のジャーナリスト、ジョン-レオナード・ルガンバゲ(Jean-Léonard Rugambage)が、夜キガリの自宅外で射殺される。その朝、ウムヴギジ新聞のオンライン版で、ルガンバゲが入手した情報に一部基づいた記事が公開されていた。記事では、南アフリカで起きたカユンバ・ニャムワサ暗殺未遂事件にルワンダ上級当局者が関与していると報道されていた。

6月25日

警察はPS-インベラクリ党とFDU-インキンギ党党員の一部を釈放したが、PS-インベラクリ党員3名とンタガンダを含むFDU-インキンギ党員6名は拘留されたまま。両党の党員の何人かは、警察による暴行を受けている。

6月27日

PS-インベラクリ党党員が、更に1名逮捕される。

6月27日

ディダス・ンドゥグヤング(Didace Nduguyangu)とアントワネ・カレメラ(Antoine Karemera)が、ルガンバゲ殺人事件関与のため逮捕。ルガンバゲが虐殺時に行った殺人に復讐するため、2人は殺害計画を立てたと自白したことを当局は発表。

7月2日

国家選挙管理委員会(NEC)への大統領選挙の立候補届締切日。PS-インベラクリ党、民主緑の党、FDU-インキンギ党はいずれも候補者届を届けられなかった。PS-インベラクリ党の党首は拘束され、他の2政党は登録できなかったためである。

7月6日

ンタガンダが、無許可でデモを組織し、国家の安全を脅かし、民族対立を駆り立てた罪で告訴される。この罪のうち後者2つは、政府の政策に関する非難を公に行ったことに関連している。

7月8日

ウムラビョ(Umurabyo)新聞編集長のアニェス・ンクシ・ウウィマナが、同新聞への掲載記事を理由に逮捕される。

7月9日から13日

拘束されていたPS-インベラクリ党とFDU-インキンギ党の党員が、ンタガンダを除いて釈放される。

7月10日から12日

ウムラビョ新聞記者のサイダティ・ムカキビビ(Saidati Mukakibibi)とパトリック・カンベル(Patrick Kambale)が逮捕される。カンベルは釈放されるが、ムカキビビは拘束されたまま。

7月13日

民主緑の党副党首のアンドレ・カグェ・ルウィセレカが行方不明になったと報道される。彼の車は南部の町ブタレ(Butare)近辺で発見された。

7月14日

民主緑の党、ルウィセレカ副党首の切断された遺体がブタレ近郊で発見される。

7月16日

ルウィセレカ副党首を最後に目撃した言われる、トーマス・ンティブグリズワ(Thomas Ntivugurizwa)を殺人の疑いで警察が逮捕。

7月20日

大統領選挙キャンペーンが正式に開始。立候補者は現職のポール・カガメ大統領(ルワンダ愛国戦線)、プロスぺー・ヒギロ(Prosper Higiro:自由党)、ジョン-ダマスネ・ンタウクリヤヨ(Jean-Damascène Ntawukuriryayo:社会民主党)、アリベラ・ムカバランバ(Alivera Mukabaramba:進歩調和党)。

7月21日

ンティブガリズワが釈放される。

7月21日

PS-インベラクリ党員5名が党事務所で逮捕される。

7月24日

FDU-インキンギ党員2名が、党代表インガビレの自宅外で逮捕される。

7月27日

反政府活動家、デオグラティアス・ムシャイーディの裁判がキガリで始まる。

7月28日

亡命中のウムセソ新聞記者が執筆した英字新聞ニュースライン(The Newsline)の第1版が、ウガンダとルワンダの国境で押収され、新聞を運んでいたバス運転手と乗務員がルワンダ警察により逮捕される。運転手は数時間後に釈放されたが、乗務員は2日間拘束されたのち、7月30日に釈放。しかし、翌日に再逮捕された模様。

7月29日

PS-インベラクリ党員3名が釈放される。

8月9日

大統領選挙投票日。

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