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アフガニスタン:タリバンによる女性の権利の侵害も、交渉の議題に

武装グループとの合意には、女性の権利保護を必ず含めるべき

(カブール)-ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表の報告書で、アフガニスタンで今も続くタリバンによる女性の迫害の実態を指摘、武装グループとのあらゆる政治合意の優先課題に、女性の権利保護を据えるべきであると述べた。アフガン政府及びその支援国はこれまで、武装グループ兵士の再統合プログラムのなかで、女性保護の必要性を議論していない。タリバンとの将来的な政治交渉で、女性の権利保護が俎上に載せられる保証もない。

報告書「金目的の"$10タリバン"と女性の権利:『再統合と和解』の下で危ぶまれるアフガン女性の権利」(全65ページ)は、アフガン政府が武装グループと将来合意を結ぶ結果、女性の権利の侵害に拍車がかかる可能性を指摘。また、タリバン支配地域において、女性が脅迫と暴力にさらされている現状について詳述している。少女たちの教育を受ける権利が侵害され、女性の政治指導者や活動家が攻撃・殺害されているにもかかわらず、犯罪者の不処罰が横行している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのワシントン・ディレクターであるトム・マリノフスキは、「アフガン政府がタリバンとの妥協を引き出すために、アフガン女性が自らの権利を放棄させられるなどということは、あってはならない」と述べた。「(そうすれば)アフガン女性や少女たちが過去9年間築き上げてきた進歩を奪い去るという悲劇的な結果となろう。それは、アフガン女性に対する背信行為だ。」

タリバンの支配地域では、公的な地位にある女性や、家庭の外で働く普通の女性が、攻撃の対象となっている。よくみられる手法は「ナイト・レター」とよばれる脅迫状で、家や学校にしばしば届く。

ある女性は、この手の脅迫状を2010年2月に受け取ったという。そのため、国家公務員としての仕事を辞めざるをえなくなった。手紙には、「われらタリバンは、政府の仕事を辞めるよう警告する。さもなくば殺す。殺し方は今までにどんな女も殺されたことがないような残虐極まりない方法を選ぶ。お前のような働く女たちのいい見せしめになるだろう」とあった。

米系の開発企業で働く22歳の女性ホサイも、電話で同様の脅迫をうけた。彼女は働き続ける選択をしたが、4月、オフィスを出たところで正体不明の男たちに射殺された。直後には、他の女性が「次はお前だ」という脅迫状を受け取った。「昨日、我々はブラックリストに載っているホサイを殺した。お前や他の女たちもリストに氏名が載っている」と書いてあった。

タリバン及びその他の反政府武装勢力は、常々、少女の女子教育を攻撃の標的としてきた。多くの女性教師や女子生徒が脅迫され、攻撃された。2月、北部のある州の女子校に、次のような「ナイト・レター」が届いた。

「我々は学校を閉鎖するよう警告した。純粋無垢な少女たちを非イスラム政府の邪道な支配に引き入れないように、と。しかし、お前たちはこれを無視した。これが最後の警告だ。直ちに学校を閉鎖せよ。この地域に居座るようならば、お前やその家族たちは消えうせることになるだろう。」

カルザイ政権は、反政府勢力の兵士の再統合プログラム、そしてタリバンとの戦闘を終わらせ、指導部と和解する道を探る諸提案を進めている。しかし、残念ながら、その過程でタリバンによる女性の暴力の問題にはほとんど対処してこなかった。

2001年のタリバン政権崩壊以来、アフガン女性たちがなんとか回復した自由についても、アフガン現政府はとても脆弱な保障しかしていない。近年カルザイ大統領は、政治的な便宜をはかるため、アフガン女性への裏切りを続けてきた。たとえば、2009年3月に大統領が署名した「シーア派個人身分法」が挙げられる。同法は、シーア派女性の移動の自由や子どもの親権、その他様々な権利を奪う内容。2008年には、女性を輪姦した2名の犯罪者に、政治的な動機から恩赦を与えた。

武装グループの兵士たちの再統合を推し進める外国人の中には、イデオロギーではなく金のために闘う「10ドルタリバン」集団を認定している。米国、NATO軍、並びにいくつかの主要支援国は、アフガンの再統合プログラムを強く推進。概ねこれらの諸国の資金で、このプログラムは動くこととなる。だが、これらの諸国政府も、タリバンとの和解に対する支援は限定的だ。

アフガン支援諸国が、同国における女性の権利促進を約束しているとはいえ、アフガンからの撤退を重視した結果、それを反故にする恐れは十分にある。たとえば、武装グループ兵士が再統合や和解を行なう際には、アフガン憲法(男女の平等が謳われている)の順守を約束することが条件だとアフガン政府は言う。しかし、適格審査手続き(Vetting)や憲法順守の確保のためのメカニズムは存在しない。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの調べで明らかになったのは、女性の権利に関してアフガン政府と国際社会との間に見解の相違があるということだ。女性の教育を受ける権利、働く権利、政治活動に参加する権利への明確な保護手段を打ち出せるか否かについて、温度差があるのだ。

前出のマリノフスキは、「当然のことながらアフガン支援国は、これらの再統合・和解プロセスがアフガン政府主導によるべきだと強調している」と述べる。「が、それはアフガン女性を危機に陥れる類の政策にまで、資金援助する意味ではない。」

アフガン政府は、武装グループが犯した戦争犯罪やその他の重大な国際法違反を不問に付すことで、武装グループの吸収を模索してきた。しかし、重大犯罪に対する法の裁きは、タリバンやその他武装勢力の再統合プロセスの要となるべきである。そのためには、現職政府高官が犯した重大犯罪を裁き、選挙の立候補者や政治任命された人物たちの適格審査(vetting)を強化することが求められる。

本報告書は、女性の権利保護を確保するために、再統合・交渉・和解プロセスすべてに含まれるべき条件についても列挙している。女性が働き、教育を受け、政治活動に携わる権利は、明確に保護されねばならない。女性や少女に対し残虐行為を行なった過去を持つ人物は、公職から追放されるべきだ。そして、再統合と和解に向けた意思決定過程に、女性リーダーたちが完全参加する必要がある。なぜなら、彼女たち自身こそが、女性の権利の最適の担い手であるからだ。

「アフガン女性はこの戦争で重い代償を払っている。そして、誰よりも平和を望んでいる」。前出のマリノフスキは続けて述べる。「しかし、彼女たちの権利が、軽率な政治取引と引き換えに奪われていいわけがない。正義と平和は共存しうるのだから。」

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