(ベイルート) - イラン政府は女性の権利への侵害を停止し、完全なジェンダー平等を求めるイラン女性の声に応じて、直ちに施策を講じるべきだ。ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日このように述べた。イランの女性人権活動家は、3月8日の世界女性の日に合わせ、イラン国内での自由とジェンダー平等を求める声明を発表している。
キャンペーン団体「連帯を求める:イランの自由とジェンダー平等」は、男女に対する国家主導の暴力行為やその他の抑圧の停止を目指している。一例を挙げると、2010年1月10日には、テヘランで毎週行われる集会に参加した30人以上の女性が殴打された。この女性たちは、子どもたちが2009年6月の大統領選挙後の抗議運動の過程で逮捕されたため、その居所・消息に関する情報を求めていた。同キャンペーンは当局に対し、全政治囚の即時釈放を訴えている。イランでは女性の人権活動家も数多く拘束されている。
ヒューマン・ライツ・ウォッチで中東・北アフリカ女性の人権状況を調査するナディヤー・ハリーフェは「イランの女性人権活動家によるこの運動は、イラン民主化にむけた闘い全体にとってきわめて重要だ」と述べる。「また、きわめて困難な状況の中でも、自分たちの権利を要求し、同胞の市民を支援し続ける女性たちの強さに敬意を表す運動でもある。」
過去30年以上にわたり、女性人権運動は、イラン国内の人権とジェンダー平等を求める闘争の最前線に立ってきた、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べる。イラン女性は様々な差別的な法律や扱いの対象とされているが、そこではイスラーム法の施行を口実とするケースが多い。
例えば、議会司法委員会は、一夫多妻制の合法化条項を含む家族支援法の成立を迫っている。この法案によれば、妻が末期疾患と診断されたとき、家を6カ月空けたとき、あるいは小切手の不渡りを出したとして収監されたときですら、夫は新しい妻を迎えることができる。
「イラン女性たちは、ジェンダーに基づく差別の停止をこれまで何度となく勇敢に求めてきた。だが活動家が脅迫や逮捕、投獄の対象とされるだけだった」とハリーフェは述べる。「ヒューマン・ライツ・ウォッチはイラン政府に対し、女性人権団体が自由に、嫌がらせやそれよりひどい扱いを受けることなく活動することを許可するよう求める」。
2月にヒューマン・ライツ・ウォッチは、報告書『31年目のイラン・イスラーム共和国:選挙後の深刻な人権状況』を発表した。これは広範な人権侵害事例を記録したもので、その内容は、超法規的殺害、強かんと拷問、集会や表現の自由の権利への侵害などの人権侵害や、2009年6月12日の選挙後の9カ月間に行われた数千件に及ぶ恣意的逮捕などとなっている。