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ジンバブエ:連立樹立から一年 改革は失敗

連立政権の下も、人権侵害と弾圧が蔓延のまま

(ヨハネスブルグ)-ジンバブエで連立政権が発足して一年。しかし、政治改革と人権侵害の防止のための真の進歩は全く実現できていない、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。ジンバブエ政府は、ジンバブエ市民たちの生活を改善する真の改革を実行する政治的意思も能力も、殆ど示していない。

連立政権を成立させたグローバル政治協定(Global Political Agreement)には、人権侵害の終結、自由・公正で信頼に足る選挙を確保するための憲法上枠組み及び選挙枠組みなどが構想されている。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ジンバブエ政府に対し、この実現に向けて、直ちに行動をとるよう強く求めた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアフリカ局長ジョージェット・ギャグノンは、「暫定連立政府は、まったく機能していない」と語る。「人権の観点では、良い方向の変化はない。ロバート・ムガベ大統領とジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線(ZANU-PF)はいまも全権を掌握している。」

グローバル政治協定(Global Political Agreement)は、ジンバブエの政治・経済危機を解決し、同国の新しい政治的な進路を決めるよう立案された。長期にわたり政権にあるムガベ大統領率いるジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線(ZANU-PF)と、民主改革運動(MDC)が、2008年9月に了解。2009年2月11日に発効した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチが最近ジンバブエで行なった調査では、意味ある政治的変化は全く見られなかった。ZANU-PF党は、今も、同党に敵対的とみるや暴力を加え続けている。また、過去、野党勢力を攻撃してきた退役軍人グループやZANU-PF青年部は無傷のままであり、ZANU-PF党はいまも、政府の治安部隊の一部を弾圧に利用している。軍に率先された農場への暴力的侵入も継続している。

2010年2月第一週、警察はMDC党が主催した憲法改正集会を複数中止させた上、参加者に暴行を加え、ビンガ(Binga)で43名、マスビンゴ(Masvingo)で48名、ダーウィン山(Mt. Darwin)で52名を恣意的に逮捕した。

グローバル政治協定(Global Political Agreement)は、表現と通信の自由に対する権利の重要性を認めたものの、ジンバブエのメディアは口を封じられたまま。民間の日刊紙や民間のラジオ放送局はなく、情報に対するZANU-PF党の強い支配は今も続いている。

連立政権が発足して以降、独立系メディアへの免許は一切発行されていない。ブラワヨ(Bulawayo)を根拠地とする地域ラジオ局ラジオ・ダイアログ(Radio Dialogue)は2月4日、すぐに放送を開始するのに必要な装置と人員を確保したと記者発表。しかし、政府はいまも放送免許を与えていない。

ZANU-PF党を批判したと見なされたジンバブエのジャーナリストは、脅迫や逮捕にさらされている。1月16日、フリーランスのジャーナリストであるスタンレイ・クウェンダ(Stanley Kwenda)氏は、警察幹部から「殺す」と脅迫されたとして、南アフリカに脱出。その2日後、別のフリーランス・ジャーナリスト、アンドゥリソン・マンイエレ(Andrison Manyere) 氏は、ウィメン・オブ・ジンバブエ・アライズ(WOZA)が主催した市民デモを撮影中に逮捕された。警察は、立件することもないまま氏を6時間以上拘束した。

ZANU-PF党は、国有の紙媒体メディアと電子メディアへの強い支配を利用して、MDC党への憎悪をあおるなどの攻撃的な言葉を投げつける一方、自分たちに有利なように世論を操作している。メディアが自由に活動できる環境がないままでは、ジンバブエ国民は、現在進行中の憲法改正プロセスや将来行なわれる選挙に十分に参加することは出来ない。

ZANU-PF党は、様々な局面で、法の支配に抵抗。2009年12月の党大会では、治安部隊への改革は許さないとまで宣言した。治安部隊関係者は、同国の政治家と深い関係をもっている。

ダイアモンドからの収入--とりわけ東部のマランゲ(Marange)ダイアモンド採掘場からの収益--は、ZANU-PF党はもちろん、弾圧を実行するその他の機関の資金源となっている、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。ZANU-PF党の関連企業が採掘を行なっているマランゲ鉱山は軍が支配しており、人権侵害が続いている。

新聞と電子メディアに対し自由な活動を認め、政府への信頼を高めるための改革を実行するよう、ヒューマン・ライツ・ウォッチはジンバブエ政府に求めた。いわゆる治安維持法(Public Order and Security Act:POSA)に代表される弾圧的な法律は、デモを厳しく制限し、ジンバブエ大統領を「侮辱」することや「不正確」な情報を公開することを犯罪化するなどしている。こうした規定は、ジャーナリストへの嫌がらせや逮捕・訴追に利用されているほか、警察は、POSAの特定規定を広義に解釈して恣意的逮捕を正当化している。弾圧の源となっているこうした法律を、ジンバブエ政府は撤廃するべきである。

新しい州知事の任命など、ZANU-PF党とMDC党との間ですでに合意に達している課題についてさえ、施行は滞っており、こうした遅れについて政党同士が言い争いを続けている。

連立与党は、経済安定化のための努力の必要性を過度に強調し、政治的不安定が続く現状や合意事項が履行されていない実態から目を逸らそうとしている。

変革を行なう政治的意思をもった正当性のある民主的政府を樹立するため、連立与党は、自由かつ公正で信頼に足る選挙を国際的監視の下で行なう準備を始めるべきである。

「現在の連立政権は機能していない。政治の安定と人権保障にむけた改革なしには、どんな経済復興も、長続きはしない」と前出のギャグノンは述べた。

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