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カンボジア:麻薬強制収容センターへの国連支援 見直しを

カンボジア政府による虐待調査、問題事業の中止、虐待の責任追及 必要

(ニューヨーク)-国連は、カンボジアの麻薬収容センターへの支援を根本的に見直すべきである、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、2010年1月25日に93ページの報告書「薬物使用者に対する虐待:カンボジアで横行する違法逮捕、恣意的拘禁、拷問の実態」を発表。その中で、薬物使用者を収容するセンター7箇所で、子どもや精神障がい者を含む被収容者に対する殴打、ムチ打ち、電気ショックなどが横行している実態を明らかにした。

本報告書の発表をうけて、国連エイズ合同計画(UNAIDS)や世界保健機構(WHO)などの国連機関が、こうした虐待に反対する意見を表明。しかし、収容センター及び麻薬対策に関してカンボジア政府と最も緊密に協力しあってきた国連児童基金(UNICEF)と国連薬物犯罪事務所(UNODC)は口を濁してきた。

ヒーマン・ライツ・ウォッチの保健と人権局長ジョー・エイモンは「国連スタッフたちも、これらの収容センターの違法性と虐待の存在を認めている。今こそUNICEFとUNODCも、収容センターを閉鎖すべきであるとカンボジア政府にはっきり伝える必要がある。」と語る。

UNODCの技術支援を受けたカンボジア政府は、麻薬取締関連の新しい法案をまとめ上げる局面にある。ヒューマン・ライツ・ウォッチはこの法案のコピーを入手。しかし、同法案には、薬物依存の治療であるとだまされた上で強制的に収容された人びと(子どもを含む)に対する適切な救済は規定されていない。

同法案でとりわけ問題なのは、「薬物依存を治療する権利に沿って、薬物治療やリハビリ療法を施した」公務員は、訴追されない(免責する)としている点だ。国際法上、職務遂行中に虐待や拷問などの重大な人権侵害を行った公務員への免責は認められない。

「麻薬取締関連の国連機関は、国際基準を満たさないすべての法律に、強く異議を唱えるべきである」とエイモンは語った。「この麻薬取締法案は、人権侵害を行なう者を守るもので、カンボジア政府の人権保護の義務に違反している。」

UNODCカンボジア事務所のウェブサイトによれば、「薬物濫用に対処する効果的アプローチと技術」及び「薬物濫用に対するしっかりコーディネートされた地域密着型カウンセリング・治療・リハビリケアプグラム」をカンボジア政府が開発することを、同事務所は2001年から支援してきた、という。その一部は技術支援で、地域密着型の治療法開発のために100万米ドル超が計上されている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書は、収容センターの被収容者たちに対し、厳しい肉体労働や「治療」の名の下の厳しい運動が強制的に課せられている実態も報告。これを受けて、内務省のキュウ・ソフィーク報道官は報道機関に、労働と「発汗」(による麻薬の体外排出)は「麻薬常習者を正常な人間にするための主要な措置の1つ」とコメント。本コメントは、カンボジア政府が国際基準を守っていないことを示すとともに、UNODCのカンボジア政府への協力が、十分な効果を挙げていないことも示している。本発言は、カンボジア政府が、未だに、効果的な治療についての十分な理解をしておらず、効果的治療に向けた実力も持ちあわせていないことを示しているからだ。

先週ヒューマン・ライツ・ウォッチが本報告書を公表して以来、UNICEFはチョアム・チャオ(Choam Chao)にある「青少年リハビリセンター」に支援を行なっていることについて、厳しい批判にさらされている。欧州連合のある代表は、UNICEFへ提供したEUの資金が、当センターでの人権侵害を助長する結果となったかを判断するため、調査を要求。UNICEF関係者は、政府による施設のモニタリングを支援してきたものの、人権侵害の存在については知らなかった、と説明している。この事業の資金提供は最終年度を迎えており、今後もこうした支援を継続するか、目下、再検討が行なわれている。

「ヒューマン・ライツ・ウォッチは、昨年9月の段階でカンボジアのUNICEF事務所と面会し、これらの人権侵害について報告した。そのとき、UNICEFは、調査すると言った」と前出のエイモンは述べた。「しかし、UNICEFは調査をしなかった。一方で、青少年リハビリセンターに入れられている子どもたちは、任意でセンターに入ったとの主張を続けている。」

UNICEFは、カンボジア政府と共同で行なった過去の評価報告をヒューマン・ライツ・ウォッチに公開することを拒否。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書公表以来、カンボジア政府関係者は、ヒューマン・ライツ・ウォッチとの面会を拒否し続けている。報告書作成時にも、情報提供を求める書簡をカンボジア政府に送付したが、その回答もなかった。国内外の報道機関は、カンボジア政府及び麻薬収容センタ-関係者が、被収容者への薬物投与と体罰は認めたもののそれ以上の人権侵害は否定した、と報じている。

ラジオ・オーストラリアとのインタビューで、プノンペンの強制収容センターのニャン・ソクヒム所長は、被収容者の逃亡を防ぐために薬を投与していると語った。バンテアイ・メンテイ(Banteay Meanchay)州の軍事警察収容センターの指揮官は、報道機関に対し、同センターからの逃亡を企てた者に対し、炎天下に長時間起立のまま放置したり、「サルのように歩かせる」などの罰を科した、と言明した。

「カンボジア政府は、麻薬強制収容センターに対する調査を開始すべきだ。そして、人権侵害を行なった関係者の責任を明白にする必要がある」と前出のエイモンは語った。「国連は沈黙すべきでない。国連は、事業を再検討するとともに、強制収容センター支援を見直すべきだ。そして、麻薬強制収容センター閉鎖に向けて、カンボジア政府に協力すべきだ。」

 

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